トヨタですらモノにできない4輪操舵は必要なのか?
カレンXSツーリングセレクション[ST207] 対 カリーナED Gリミテッド4WS[ST183]
「一時はブームだった4WSを改めて検証!?」誰もやらない奇天烈メカニズムを再考する!【ManiaxCars】
1980年代半ばから90年代後半に、スズキ以外の全国産車メーカーがなんらかの形で市販車に搭載したメカニズムが4輪操舵システム。メーカーによって呼び方は色々だったが、ここでは最も一般的な呼称だと思われる“4WS”で話を進めよう。
この機構、要はステアリング操作に合わせて後輪にも適度な舵角を与え、より小回りを利かせたり高速レーンチェンジ時の安定感を高めたりと、目指すところは一緒だった。
ただし、4WSにはひとつ問題が。理論としては素晴らしいのだが、ステアリングを操作するドライバーの感覚と実際のクルマの挙動に、どうしてもズレが生じてしまうことだ。そこをどうやって埋め合わせるかが、4WS開発の歴史だったと言ってもいい。
そんな4WSのイメージが強いメーカーはホンダ、日産、マツダあたりだが、もちろんトヨタも黙ってはいなかった。とりわけ力を入れていた車種が2世代に渡って4WSを採用したST18/20系。トヨタのそれは車速やステアリング舵角に応じて、後輪の切れ角や方向をECUで制御する。
今回、取材車両として用意したのはST207カレンXSツーリングセレクションと、ST183カリーナED Gリミテッド4WSの2台だ。
まずはセリカのノッチバッククーペ版といえるST207カレンXSツーリングセレクションから。
搭載エンジンはハイメカツインカムの3S-FE型。吸気系に縦型細径インテークポートを、排気系にはデュアルエキゾーストマニホールドを採用することで、実用的な回転域で最大トルクが得られるようにセッティングされている。
運転席を取り囲むようなデザインがスポーティなインテリア。XSツーリングセレクションは本革巻きステアリングホイールが標準装備となる。
スピードメーターを中心として左側にタコメーター、右側に水温計と燃料計を配置。タコメーター内にはデュアルモード4WSのインジケーターも確認できる。
スポーティな走りにも対応するため、ショルダーサポートを採用したファブリック地のスポーツシート。座面は高さ調整に合わせて前後に最大10mm移動する。
続いて、初代と同じくスタイリッシュなセンターピラーレスハードトップボディを持つST183カリーナED Gリミテッド4WS。
エンジンはスポーツツインカム3S-GE型を搭載。最高出力165psを6800rpmで発生する高回転志向のエンジンで、4速ATとの組み合わせでも痛快な走りを楽しませてくれる。もちろん、速さも申し分なしだ。
エアコン吹き出し口まで含めた横長メーターパネルと、エアコン操作部が手前に突き出たデザインが特徴のダッシュボード。
スピードメーターとタコメーターが並び、右側に油圧/水温計、左側に電圧/燃料計のコンビメーターが配置される。こちらもタコメーター内にデュアルモード4WSのインジケーターが。
スポーツグレードらしく、大きく張り出したショルダー&ニーサポートを持つシート。ホールド性が高く、長時間座っていても疲労は最小限に抑えられる。
この2台に限らず、低速域では後輪を逆位相、高速域では同位相というのが4WSにおける基本中の基本だけど、スイッチ操作で通常走行とスポーツ走行それぞれに適した制御を切り替えられる世界初のデュアルモード4WSとされ、バック時にはキャンセルも可能というのが新しかった。
これがデュアルモード4WSのスイッチ。写真はST183カリーナEDだけど、ST207カレンにも同様のモノが装備される。まず左が、後輪操舵を通常時に適した制御、あるいはスポーツ走行時に適した制御に切り替えるスイッチ。右はバック時に違和感がないよう4WSをキャンセルするスイッチだ。
試乗した2台は世代こそ違うけれど4WSのフィーリングは同じ。少なくとも通常モードで街乗りしただけでは、テールが不可解な動きを見せる4WS特有の挙動は感じられなかった。
同じ4WSでも、交差点を曲がるたびにお尻がムズムズするプレリュードの機械式やセンティア/MS-9の電子制御式よりはマトモな仕上がりだと思う。それと、試乗した2台はバック時に4WSをキャンセルできるのが画期的。実は車庫入れで思った以上に巻き込んでしまうのも4WSの難点だったから、それを解消できるだけでも気が楽になる。
すっかり過去の遺物だと思ってた4WSだが、調べてみたらレクサスの一部車種に搭載されているらしい。どうやらトヨタはまだ諦めてないようだ(笑)。
■カレンXSツーリングセレクション
車両型式:ST207
全長×全幅×全高:4490×1750×1310mm
ホイールベース:2535mm
トレッド(F/R):1510/1480mm
車両重量:1190kg
エンジン型式:3S-FE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ86.0×86.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:9.5:1
最高出力:140ps/6000rpm
最大トルク:19.0kgm/4400rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR195/65R14
■カリーナED Gリミテッド4WS
車両型式:ST183
全長×全幅×全高:4500×1690×1315mm
ホイールベース:2525mm
トレッド(F/R):1465/1430mm
車両重量:1320kg
エンジン型式:3S-GE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ86.0×86.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:10.1:1
最高出力:165ps/6800rpm
最大トルク:19.5kgm/4800rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR195/60R14
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:アンティーク 愛知県安城市池浦町小山西72-4 TEL:0566-77-8500
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この文章で記者の能力がたかが知れてると思った。