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新型スープラは“予想通り”だったのか!? スクープと歴代車にみる新型の素顔

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新型スープラは“予想通り”だったのか!? スクープと歴代車にみる新型の素顔

 2019年5月17日、ついに新型スープラが正式に発表された。同モデルは1978年登場の日本名「セリカXX(ダブルエックス)」から数えて、通算5代目のモデルとなる。

 そこで、リアルタイムでスープラを見続け、この新型のスクープ情報も掴んできた「ベストカー」元編集局長の筆者が、歴代モデルとの対比も含めて、新型スープラに乗り、その素顔を追った。

【スポーツカーの象徴!!】派手で巨大なリアウイングが激減した理由

 果たして、新型は登場までの経緯も含めて“予想通りの車”だったのか。

文:宇井弘明(『ベストカー』元編集局長)
写真:茂呂幸正、ベストカー編集部

デビュー前にスクープ!? 歴代スープラとの強烈な思い出

A70型スープラのスクープ写真を捉えた『ベストカー』1985年10月10日号誌面

 今回の試乗会で新しいスープラを見た時、ようやく出会えたと思った。思えば「スープラ」とは因縁と言っていいほど深いつながりがあるように感じている。私が「ベストカー」に入る一つのきっかけになったと言っていいかもしれない。

 今だから言えるが、忘れもしない1985年3月。私はドイツのケルンにいた。ケルン大学に留学していた友人を訪ね、その友人とアウトバーンを走っていた。

 120km/hあたりで流していると後方からシルバーの見慣れないスポーツカーが追い抜いていった。それが70スープラだった。

 当時、マツダRX−7の新型が近かったこともあり、日本車であることは間違いないものの、撮影した写真を現像して浮かび上がった画像が新型RX−7なのか、スープラ(当時はセリカXXだと思っていた)なのかは当然わからなかった。

 4月に日本に帰り、ベストカーの当時の局長から、強く入社を勧められたのを機に訪問し、この一件を報告したところ、強引とも言えるほどの勢いで、入社が決まったという経緯があった。入社後に、それが新型XX(=70スープラ)だと判明し、誌面を飾ったのはご想像のとおりだ。

(編集部注:日本市場において「XX」がセリカから独立し、それまで海外市場で使われていた「スープラ」という車名で統一されたのは1986年2月)

 それから9年後の1993年、スープラは80系に進化した。バブル末期に登場した80スープラは米国ロサンゼルスで試乗会が行われ、ベストカー編集長になった私は、徳大寺有恒さんと参加した。

 これも強烈な思い出で、70、80と2代にわたってスープラは私の脳裏に深く刻み込まれることになった。

“予想通り”だった新型スープラの登場と“意外な”素顔

ついに正式発表を迎えた通算5代目となる新型スープラ。伝統の直列6気筒エンジンに加え、直列4気筒ターボエンジン車もラインナップしている

 そして、新型の90スープラ。正式名GRスープラとなるが、おそらくこのモデルもトヨタ関係者以外では、けっこう早くからその存在を含め、デザイン、成り立ちまで知っていただけに、冒頭の「ようやく」という表現になるのだ。

 すでに新型スープラに関しては2年以上前に正確なデザインを始め、1年前にはエンジンスペックなど基本的な情報は掴んでいた。

 例えば、全グレードBMWのエンジンを使いMTの設定がないこと、次期Z4とプラットフォームを共用することなどもわかっていた。

 長い間ベストカーの使命として追いかけていただけに、こうして出てきた新型スープラに期待もしてきたし、実際にこれまで頭に描いてきた予想とがどこまで正確だったのかをぜひ知りたいと願っていた。

【写真】新型スープラの全写真はこちら

 試乗開始直後に、86で名を馳せ、このスープラの開発責任者で、よく知っているチーフエンジニアの多田哲哉氏と話したのだけれど、イメージとしては、BMWが開発した新型Z4用のシャシーの上に、トヨタがデザインしたボディをポン付けした感じでしょ、と言ったところ多田さんが怒った。

「それをみんな誤解しているんですよ。車の基本性能を決めるホイールベースとトレッド比から始まって、BMWと喧々諤々やりあっていろいろ決めていった。基本骨格が決まってからは2つのチームで別々に開発していったんです。

 向こうはオープン、こっちはクーペという棲み分けもでき、協業により本当にお互い勉強させてもらってようやくできたということです」

そもそも歴代スープラは“良いクルマ”だったのか?

『ベストカー』2016年6月10日号に掲載されたスープラの予想CG。市販モデルは全長4380×全幅1865×全高1290mmだが、当時予想したサイズもこれに近かった

 2012年にBMWとの提携が正式に発表され、そのなかに「スポーツカーの開発」という項目があり、スープラ復活の情報に接した時、BMWが作るなら、相当期待できるということがあった。

 70スープラにしても80スープラにしても、トヨタファンには叱られるかもしれないが、正直いって、世界のFRスポーツという分野ではレベルは高くなかった。

 直列6気筒のパフォーマンスやフィーリングも“1G”の2Lターボは軽快だけれど、パンチが欠けていたし、“2JZ”はチューニングの素材にはよかったものの、トータルとして世界の直6と比べると、まだまだという感じだった。

 そのトヨタがFRスポーツに長けたBMWのパワートレーンを使うとなれば、この復活は世界のトヨタファンを喜ばせるばかりではなく、車好きも納得させる魅力があると期待するのも当然だろう。

 なぜ自前のトヨタユニットを使わなかったのかと、思うかもしれないが、この点に関して、多田さんは、

「うちにはV6しかないし、このために直6を作るわけにもいかないし、あちらにはいい直6があるわけで、これからの時代、いいものはどんどん使わないと、自動車産業だけ遅れていく」

 と、トヨタの考えを語る。これはある意味トヨタの未来図でもある。

 今回はスープラだが、今後、「いいクルマ」を作るためには、いろいろな手段があることを示しているとも言える。

各100万円差!! 三者三様の新型スープラは高い? 安い?

2L直4ターボを搭載する最廉価の「SZ」。グレードによる外観の差異はほとんどないが、タイヤサイズはSZが17インチ、SZ-Rが18インチ、RZが19インチで異なるのがポイントだ

 そのGRスープラだが、外装に関しては、ほぼ同じで3L直6ターボエンジンを積む「RZ」のホイールサイズが19インチであるほか、2Lターボの「SZ-R」が18インチ、「SZ」が17インチとパワーというか、価格にあった序列でホイールサイズが決まり、わかりやすい。

 実際に乗ってみると、最もスープラらしい、3L直6ターボ、330psを積む「RZ」は、予想していた走りより相当良かった。

 タイトターンの続くワインディング、一般道路での走りなので、中速以上のコーナリングパフォーマンスは不明ながら、低回転域でのフレキシビリティ、アクセルを踏み込んだ時のトルク感、息の長い加速感とエンジンの軽快さ、どれを取ってもそう不満はない。

 まさに、BMWのエンジンの良さを味わえるし、サスペンションのチューニングレベルもこれまでのトヨタ車にはない格段の進歩がうかがえる。

 そして2Lターボ、250psの「SZ-R」は装備類がRZに準じた仕様ながら、その走りはフロントの回頭性の軽さもあって、RZ以上に楽しさが味わえる。

 ベーシックモデルとなる「SZ」は、190psというパワーの割には、すこぶる元気に走るし、スープラの入門用としてはいいと思うし、少しずつカスタマイズしていくユーザーに向いているかもしれない。

 この価格体系の100万円ずつ開いているのは絶妙で、「SZ」の490万円は決して安くはないのだけれど、あと100万円出せるのなら「SZ-R」の方が断然いいし、もう100万円出せるのなら「RZ」の方がさらにいい。

 どうにも悩ましい価格ながら、世界のライバル車から考えれば、それでも相当安くできている。BMW Z4はもちろん、ポルシェケイマン、ボクスターよりも当然安い。オーストリアのシュタイアープフ社で生産し、輸入ながらこの価格だ。

新型は“スープラらしさ”を単純に受け継いだ車ではない

ボリュームのあるリアフェンダーまわりの膨らみが印象的な新型スープラのデザイン。賛否両論ありながらも、BMW Z4と協業しながらデザイン面でも差別化を果たした

 スープラのデザインに関しては、過去のトヨタのヘリテージを活かし、ファンを喜ばせる部分もあるが、個人的にもっと未来的で、新しい時代のスポーツカーを目指していって欲しかった。

 ただ、今の時代生まれることが困難なスポーツカーが、難題を克服して生まれてきたことを素直に喜びたいと思った。

 スープラはセリカXXの時代から数えて5世代目となる。先代80から17年ぶりに復活した今回の90スープラから新しい次元に入った。

 それは過去のスープラらしさを単純に受け継いだということではなく、一旦断ち切り外部の血を入れることで大きく生まれ変わったということだ。このスープラの誕生はトヨタのイメージを大きく変えていく力がある。

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