仕事もカスタムも、その両立も可能な素材
軽トラは働くクルマの代表格。農作業をはじめ、建築系、運送、移動販売等々、全国各地、さまざまな分野で活躍している。
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その一方で、カスタマイズを楽しんでいる人も沢山いるのはご存じだろうか。ドレスアップしてイベントやミーティングに参加したり、荷台を活用したキャンピング仕様を作ってみたり、エンジンチューンを施してサーキット走行をこなすユーザーまでいる。
意外に思われるかも知れないが、軽トラはアフターパーツが非常に多い。足まわり関係をはじめ、エアロ、タイヤ&ホイール、マフラー、インテリア、チューニング系、荷台のカスタムパーツまで、大抵のものは揃っている。乗用の軽自動車より豊富なくらいだ。
何よりも質実剛健さが求められる軽トラに、そもそも飾り気はない。しかし、だからこそカスタマイズの余地も大きいといえる。そしてパーツもクルマ自体も比較的低価格だから、イジろうと思ったら気軽にやれる。ビジネスで使っている場合はいろいろと制限もあるだろうが、その辺にうまく折り合いを付けられるなら、お手頃な「仕事クルマ兼遊びクルマ」に仕立てられるだろう。
今回は仕事用として軽トラをガンガン使い倒しながら、同時に自分なりのカスタマイズを楽しんでいるオーナーたちを紹介したい。
実は新鮮な魚介をいっぱい載せて走ってます
基本的に車外エアロは純正バンパーよりもサイズが大きい。つまり段差などで擦ったり割ったりするリスクも高まるため、あまり仕事クルマには向いているとはいえないのだが、それは百も承知で装着している。しかも、210系クラウンアスリートのような稲妻グリルを備えた個性派デザイン。ルックスは完全にドレスアップカーだ。 この軽トラが、いつも豊洲直送の新鮮な魚を積んで走っているとは誰も予想できないだろう。よく見るとドアに「Luxury Fishmonger(=高級鮮魚店?)」というヒントが描かれているが、アメリカンなカスタムペイントだからまったくソレっぽく見えない。
オーナーはかつて左ハンドルのDA63TキャリイでKスタイル(弊社発行の軽自動車カスタムマガジン)の表紙を飾った男。他にもド派手なファイヤーパターンをあしらったアルファード顔のヴェルファイアや、1978年製コルベットC3なども所有する根っからのクルマ好き。このS500Pハイゼットは彼のコレクションからすると地味(?)な部類に入る。
「それでも普通の感覚からするとやっぱり派手なのか、仕事仲間からは『大丈夫なの?』みたいに聞かれることもありますね(笑)。自分としては1/1チョロQみたいなコンセプトでマイペースに楽しんでいます」。
職業は鮮魚バイヤー。飲食店などからのオーダーを元に豊洲市場で買い付けを行い、それをこのドレスアップハイゼットで配送するのが主な仕事だ。以前は築地で買い付けをしていたが、市場移転と共に豊洲に移り、同じ業務を続けているという。
「市場は朝が早いので、自宅を出発するのは夜中の午前1時。大変ですが、毎日イジったクルマで出掛けられるのはやっぱり楽しいです。会社は自分で経営しているので、改造車でもコンプライアンス的には問題ありません(笑)。お客様にご迷惑が掛からない限りは、今後もこのスタイルでやっていきたいです」。
トマトを積んで農道を行く超絶車高短仕様
田んぼに囲まれた農道を颯爽と駆ける1台の軽トラ。実家の農園の後継ぎとして、トマトやナス、キュウリ、水稲も栽培するオーナー。収穫した野菜をこのS200Pハイゼットに積み、地元のスーパーや直売所に卸すのも彼の仕事だ。
エアロもそうだが、低い車高も農業向きではない。ただでさえ少ないストローク量をさらに減らすことになるし、畦道や舗装状態の悪い道も走りにくくなる。リフトアップならともかく、ローダウンはしない方がきっといい。それを一体どうしてこんなにもベッタベタにしているのだろうか。
「単純に農家の軽トラが車高短だったら面白いと思ったから(笑)。それに自分はどんなクルマでも、乗るならイジらずにはいられない人間。以前は祖父に借りたミニキャブも落としていましたからね。ベタベタでもけっこう普通に乗れちゃいますし、慣れたら特に不便さは感じませんよ」とオーナー。
とはいうものの、やはり尋常な低さではない。一般的に軽トラはFRベースで、リアのサスペンションにはリーフスプリングが使われている。その構造上、特にリアはフェンダー(というか荷台)がタイヤに被るレベルまでは落とせないハズ。フロントだってもともとのストローク量が少ないから、大して車高は下げられないのだが…。
「フロントはインナーを座席のすぐ下まで切り上げ。車高調はワンオフして、ストラットの頭を15ミリほど室内側に飛び出させています。またアッパーマウントにはスライド機構を付け、キャンバーも倒せるようにしました」。
リアのリーフスプリングは本来デフホーシングの上にあるが、それを下に移設するという荒業でローダウン。さらにホーシング自体も短く詰めてリア7.5Jのホイールをねじ込む。また社外ショックに交換&そのロアブラケットを貫通型に作り変えて落ちた車高に対応させ、荷台も一部カットしてタイヤとの干渉を防ぐ。
「足をガチガチに固めると荷台の野菜を傷める。特にトマトなんかはデリケートですからね。こう見えて最低限のストローク量はキープしています」。
シートはレカロSR-3に換装し、キャビン後部のフレームを加工して20ミリほどクリアランスを確保。少しだがシートを倒せるようになったので、純正の直角シートに比べると随分座り心地が良くなったそう。
「農作業用の軽トラなのに低すぎでしょ、と笑ってもらえたら自分的には満足です」。
トレーラーで積載倍増 アイデア賞の運送軽トラ
荷台にFRPトップのシェルを積み、コンテナを載せたトレーラーを引くキャンピングカーっぽいS201Pハイゼットジャンボ。フロントはMH23Sスティングレー用のバンパーをハイゼット用とニコイチして装着。ホイールは前後17インチ×6.5Jと、軽トラとしては規格外のサイズを履きこなす。
キャビン内は各部ゴールドのコスモス生地で張り替え。シートも同じ色味のカバーで合わせており、ちょっと詳しい人なら「内装はデコトラみたいだな」と思うに違いない。いずれにせよ、このS201Pハイゼットジャンボもガチの仕事クルマには見えないが、普段は黒ナンバーを付けて軽貨物運送事業で活躍中だ。
「オイルパンやクラッチプレートなど、自動車関連の鉄部品を運んでいます。定期便ではなく、緊急便・チャーター便で、たとえば製造ラインに遅れが出て、出荷が定期便に間に合わない、といった時などにピンチヒッターとして呼ばれるわけです。あとはバイクの輸送や単身の引っ越しなんかもやってますよ」とオーナー。
軽貨物運送事業というと赤帽などのフランチャイズが思い浮かぶが、彼は個人経営。「T-TRANS」という屋号で、滋賀県を拠点に全国を駆ける。緊急便ゆえに24時間体制でスタンバイしており、「今から九州までひとっ走り頼む」といったオーダーも飛び込んでくるという。
「丸1日掛けて運んで戻って来たと思ったら、またすぐに出発して欲しいなんてことも…。さすがに身体がもたないので(笑)帰りはフェリーを使ったり、無理なものは無理と断るなどして体調管理に気を配っています」。
ところで重たい自動車部品を運ぶ仕事なら、最大積載量が350kgしかない軽トラより、もっと大きなトラックの方がたくさん運べて有利に違いない。なぜあえて軽トラなのだろうか。
「1台から運送事業ができるからです。小型トラック以上を使う場合だと、最低5台を揃えないと事業許可が降りません。また複数のドライバーの確保や社会保険の加入、運行管理者の資格なども必要になる。かなりハードルが高いんですよ。その点、軽トラなら1人×1台から始められますからね。ボクは運行管理者の資格を持ってますが、軽事務職より現場派!走ることが営業になると思うので(笑)」。
だけど軽トラはそんなに沢山は積めない…ということで思いついたのがトレーラー。積載量は車体側と同じく最大350kgなので、1台で軽トラ2台分、合計700kgの荷物を運ぶことができる。ちなみにトレーラーにも車検が義務付けられているため、ナンバープレートが付いているが、こちらも事業用なので色は黒。トレーラーの黒ナンバーは全国的にもかなり珍しいだろう。
「積載MAXだと走りが相当ツライけど…(泣)。実は以前、別のハイゼットをアトレーワゴン用のターボエンジンに載せ替えて使っていて、それがまさかの運送中にエンジンブロー。代わりの便に振り替えてなんとか納品は間に合わせましたが、それに懲りて以後はエンジン系統は触らないようにしているんです。足まわりも利便性を考えるとエアサスがいいのですが、車高調にしているのはトラブルのリスクを下げるためです」。
なお現在は得意先の路面環境に合わせるため、バンパーはノーマルに戻し、ホイールも15インチ(L350SタントカスタムVS純正品)を履かせているそう。
「仕事クルマですから、思い通りにイジれないジレンマはあります。それでもこのハイゼットで仕事に行くと、一発で覚えてもらえるんですよ。それが次の仕事に繋がったりもするので、やっぱりカスタムしていて良かったなと思います」。
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みんなのコメント
軽トラって一台は所有したいね。色々と便利だし、カスタムも楽しそう。
ただしその改造が他者(他車)に迷惑を掛けたり、保安基準に適合しないのなら公道走行はすべきではない。