近年、クルマの技術でオートパイロット(自動操縦装置)という言葉をよく聞く。オートパイロットとは乗り物を自動で操縦する装置やシステムのことだ。人間に代って操縦を行うことで、ミスをなくしたり、作業負担を軽減して事故を減らしたりと、正確・安全な運転が期待されている。また移動にかかる時間や燃料を減らすこともできる。
そして自動車に限らず、オートパイロットは今や飛行機、船、鉄道など、いろいろな乗り物に使われているが、それぞれの乗り物によって機能や制御の方法は異なっている。今回はクルマよりもずっと歴史の古い、航空機と船舶のオートパイロットについて取り上げる。
無人艦隊の登場も見えてきた!? クルマよりも歴史が古い航空機や船舶の自動操縦とは
文・イラスト/坂本 明、写真/U.S. Air Force、U.S. NAVY、航空自衛隊
■オートパイロットは飛行機から始まった
オートパイロットが導入されたのは航空機がもっとも古く、最初の航空機用オートパイロットは1912年にアメリカのスペリー社によって開発されている。長時間の飛行でパイロットの疲労を軽減するために開発された装置が始まりだ。さらに1930年代初めに飛行家のウイリー・ポストがスペリー社のA-12オートパイロットを装備したロッキード・ベガ5Cで世界一周を8日間で成功し、オートパイロットの実用性を証明してみせたのだった。ちなみにA-12は空気・油圧ジャイロを使用して高度や針路保持の機能を持っていた。
この成功によってオートパイロットの開発に拍車がかかり、第二次大戦中にはアメリカでパイロットからの操縦指令を実行できる能力を持つオートパイロット(電気式)が開発され、C-1型オートパイロットとしてB-17やB-29に搭載されている。このオートパイロットはノルデン照準器と連動して爆撃機がより正確な爆撃を行うのに貢献した。
第二次大戦後は、オートパイロットは単に飛行を制御する機能だけでなく、航法装置としての機能も求められるようになっていく。
そしてジェットエンジン機の普及にともない登場したのがSP-30型自動操縦装置だ。
SP-30型は後退翼を持つ高速機につきまとうダッチロールを制御するために開発されたオートパイロットで、ダグラスDC-8に装備された。このオートパイロットは一種のINS(Internal Navigation System:慣性航法装置)のような回路を持っており、それが1970年代後半の飛行機(大型民間機や軍用機)へのINSの標準装備化に繋がっていく。
■オートパイロットから飛行管理システムへ
INSとは、地上の航法援助施設からの電波や地磁気等に頼らず、飛行機の位置、速度や移動距離を算出することが可能な装置だ。またその精度もかなり高い。
飛行機が地上からの航法支援を受けれない空域を飛行する時に、自機の位置などの航法情報を把握するために開発されたもので、潜水艦やミサイルなどにも、自律航法装置として搭載されている。
そのINS(慣性航法装置)をオートパイロットや推力制御装置と組み合わせることで飛行を管理し、出発前に入力した現在位置と通過予定点の座標に沿って目的地まで自動操縦で飛行できるようになった。
オートパイロットが単なる自動操縦装置から飛行を管理するシステムへの進化の始まりといえる。この方式は初期のボーイング747などで使用されている。
さらにオートパイロットとINS 、コンピュータを組み合わせたPMS(Performance Management System:性能管理システム)が開発され、ボーイング747-200などに搭載された。燃料を節約するために開発された性能管理システムで、操縦装置はケーブル式で、INSが機械式ジャイロ、それにデジタル式コンピュータを組み合わせたものだった。この方式はボーイング727などの飛行機に導入された。
そしてエアバスA300やボーイング757などの飛行機に最初に装備され、1980年代以降に開発された飛行機にはほとんど装備されているのがFMS(Flight Management System:飛行管理装置)である。
これは飛行などを統括管理するアビオニクス、オートパイロット、各種航法計器、INS(慣性航法装置)、GPS(全地球位置把握システム)の技術を一体化させたものだ。
目的地に到達するために最適な飛行コースを計算し、飛行中は機体の姿勢、飛行高度、針路(機首方位)、速度を管理・制御し、コースを外れたら外れた量を計算して元に戻す操作を行い、最適な飛行が行えるようにエンジンの出力制御を行う。
航法装置として発展してきたオートパイロット
目的地に到達したら天候によっては飛行機を自動着陸させる。それがFMSである。パイロットは機体を離陸させたら、乱気流などの緊急事態でFMSが対処できない場合を除いて、ほとんどの作業をFMSにまかせ、監視しているだけで良い。
■自律飛行ができる無人機
飛行機ではオートパイロット技術はFMSまで進化したが、離陸はパイロットが行い緊急時にはいつでも操縦を代われるようにパイロットが待機しているので、これは自律飛行ではない。自律飛行はUAV(Unmanned Aircraft Vehicle:無人航空機)やドローンで使用されている技術である。
自律飛行というのは機体に搭載されたコンピュータに予め入力されたプログラミング等により自動で飛行するということだ。障害物を回避したり、飛行コースを変更したりといった行動をドローン自体が判断してするわけではない。
現在、アメリカを始めとする各国で開発を進めている自律戦闘型ドローンのようにAIが判断して飛行や攻撃を行う機体もあるが、実用化にはまだかなりの時間がかかると見られている。
自律飛行の技術の発達にはオートパイロットも大きく貢献しており、飛行機においてもパイロットが操縦に関与しない自律飛行が最終目標といえよう。
ちなみにドローンは無人航空機のことをいうので、UAVとドローンは基本的に同じものといえる。あえて分類する場合はUAVやドローンは無線による遠隔操縦で飛行するが、さらに自律飛行の機能を持っているものをドローンという。
■しのぎを削るマルチコプター型
いずれにしても無人機は有人機(人が乗る航空機)に比べて安全性を考慮する必要がないので、発達が早く、性能の高さや生産および運用コストが重視される。
ドローンは標的機などとして1950年代から軍で使用されているが、大きく発達したのは画像装置やコンピュータなどの電子装置や通信機材発達し小型化された1990年代後半からのこと。
進化のスピードが早いドローン
軍用のドローンといえばイラクやアフガニスタンで使用されたアメリカ軍のRQ-1/MQ-1リーパーやRQ-4グローバルホーク、昨今ではロシア・ウクライナ戦争でウクライナ軍が使用したTB-2などが有名だ。いずれの機体も翼を持った飛行機型で、大きさは様々だが比較的大きい機体だ。
飛行機型は長時間滞空したり長距離を飛行するのに向いており、ペイロードも大きい。一方、機体の大きさによっても異なるが、大型になると運用するためにはある程度広い場所や人手がかかる。
より小型な機体では3つ以上のローターを持つマルチコプター型が軍、民間ともに多用されている。垂直離着陸が行え、構造が単純、操縦も簡単で、運用するのに場所を選ばず大勢の人手を必要としない。こうした理由から今後も様々な分野で使用される可能性があり、今各国で開発にしのぎを削っている空飛ぶ自動車もマルチコプター型である。
■船のオートパイロットとは
オートパイロットといえば、飛行機以外に、船舶(軍用・民間用)でも使用されている。船舶のオートパイロットは自動操舵装置のことで、舵操作の負荷削減、針路保持、航程の短縮および燃料の節約などを目的として開発されたものだ。
基本的に船舶のオートパイロットは船の進む方位を制御する(ヘッディング・コントロール)。船舶が所定の針路から外れたときに、磁気コンパスやジャイロコンパスなどによりその角変位(コンパスの回転前後の角度位置の変化)と角速度(単位時間あたりの角変位)検出し、自動的にこれに対応する舵角を舵に与えて設定した針路に戻るように船舶の方位を変針させる。
船舶のオートパイロットは飛行機のそれのように地図上の指定したポイント点(指定した座標のポイント点)を通過するような航法上の制御機能はないので、オートパイロットによって船首が針路の方向を向いていても、風や潮流の影響で想定していた航路から外れる(横滑りしながら進んでいく)ことがある。
そのため船首の方位に加えて、船の航路を制御する(トラック・コントロール)の機能を持つオートパイロットもある。近年では電子海図装置やGPSのような測位システム、コンピュータなどと組み合わせることで、自動的に設定された航路上を航行できるようになっている。
船舶におけるオートパイロットの長所は見張りに集中でき、視野が広がることだ。一方、短所は操船操作が遅れる、潮流に影響されやすい、外乱による変位が修正できない、などが上げられている。
ちなみに船にオートパイロットが搭載されたのは1922年のことで、アメリカのスペリー社が開発したジャイロパイロット(商品名)を装備したムンソン汽船会社のムナーブ号が実用化第1号といわれている。
今日、大型船ではオートパイロットは欠かせない装置になっており、小型船舶やセーリングボートでも多用されている(ちなみにセーリングボートでは風に対して船の向きを一定に保つウインドベーンも自動操舵装置の一種である)。
■待望の自動運行船。その登場は?
オートパイロットをより進化させていくと、最終的には人間が船の航行に介在しない自動運航船ということになる。
自動運航船とは「桟橋や岩壁から自動操船で離れることができ」、「速度の過減速を行い」、「沖合で揚錨し停泊状態から航行状態に移行し」、「設定された航路上を障害物を避けながら航行でき」、「沖合で投錨して航行状態から停泊状態に移行」、「桟橋や岸壁に接岸、停泊できる」という運航業務全体が行える船舶のことだ。
また桟橋や岸壁に接岸した後、貨物や客などの積み下ろし作業を行えることも自動運航船の定義に加えている場合もある。
ちなみに自動運航船は、自動航行船、自律運航船、無人航行船などと呼ばれており、それぞれは明確に区別されていないのが現状。強いて区別するとすれば、以下のとおりとなる。
(自動航行船)
トラック・コントロールシステムやヘディング・コントロールシステムのような自動航行機能を持ち、人間が直接航行に関係する機器を操作することなく運航できる船舶。また人間が遠隔地から通信によって操船指令を出し、その指令に基づいて運航する船舶も含まれる。船に船員が乗っているかどうかは関係ない。
(自律運航船)
各種センサーにより自船の周囲を監視し、AIにより周囲の状況や物体を識別、衝突の危険の有無を判断し、危険がある場合には回避行動を行う。回避後は目的地へ向かうための航路に戻ることができる船舶。監視から識別、判断、回避行動、航路への復帰までを人間の判断を介すことなく行える機能を持つことが特徴。船に船員が乗っているかどうかは関係ない。
(無人航行船)
船に船員が乗っておらず、自律運航船の機能を持つ船舶。自律運航機能を持っていれば、人間が遠隔地から通信によって操船指令を出し、その指令に基づいて運航する船舶も含まれる。船に乗客が乗っていても良い。
現在の段階で自律運航機能を持つ船舶の実用化はまだ難しいが、遠隔操作で航行する自動運航船の実用化の可能性は高い。2016年に行われた自律船舶技術シンポジウムではロールス・ロイス社が遠隔操作で動く商用船の実用化を示唆している。その商用船は2020年代の早い時期に登場し、地上の管制施設から同時に複数の船が操作され、乗員をのせないことでコストを抑えることができ、貨物を積むスペースが広くなるという。
■海戦が変わる? 無人水上艦艇の今後
最後に無人水上艦艇にふれておこう。航空機にドローンがあるように船舶にもドローンがある。水上ドローン(USV:Unmanned Sea Vehicle)と呼ばれている無人船舶だ。
水上ドローンといえば、2022年10月末にクリミアのセバストポリ沖合でウクライナ軍がドローンと水上ドローンでロシア黒海艦隊を攻撃したことを覚えている方も多いだろう。水上ドローンを自爆船のように使用した史上初の例で、海戦が新時代に入ったといわれている。
ところで世界一の海軍力を誇るアメリカ海軍では無人船舶の開発に抜かりがない。たとえば、2008年からテキストロン社のフリート級無人水上艇CUSV(Common Unmanned Surface Vehicle)を導入し、試験運用を行ってきた。当初の目的はインディペンデンス級沿岸戦闘艦を母艦として機雷および対潜水艦戦任務を遂行するためだった。
遠征高速輸送艦USNSミリノケットの艦橋。オートパイロットなど操船用のほとんどの装置をこのパネルで操作できるようになっている。手前の人物が握っているのが操舵装置(写真/US NAVY)
CUSVは全長12m、最大速度35ノット、遠隔操作やプログラミングによる自律航行で航行し、最大20時間以上運用することが可能だ。ミッションモジュールを交換することで、情報収集、監視・偵察任務、掃海任務、対地上戦、UAVやUUV(自律無人潜水艇)の発射・回収など様々なミッションに使用できるようになっていた。
最終的にCUSVは機雷の捜索・無力化するための掃海任務用のUISS(Unmanned Influence Sweep System)として2022年7月に初期運用能力(IOC)を獲得、艦隊での運用開始が正式に承認されている。
またシー・ハンターと呼ばれる自律型無人水上艇の実験運用も行われており、この船は将来的には実用化されて対潜水艦戦や対機雷戦に使用される予定だ。
現在、アメリカ海軍ではLUSV(Large Unmanned Surface Vehicle)、MUSVs(Medium Unmanned Surface Vehicles)、XLUUVs(Extra-Large Unmanned Undersea Vehicles)と呼ばれる3種類の無人水上艦艇の開発と調達を計画している。将来的にはこれらの無人水上艦艇により艦隊が構成されることになる。その足がかりとして2022年5月、アメリカ海軍では無人水上艦艇を運用するためのUSVDIV(Unmanned Surface Vessel Division:無人水上師団)-1を設立した。
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