この記事をまとめると
■まるも亜希子さんは現在カーライフ・ジャーナリストとして活躍している
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■今までさまざまなクルマ乗り継いできた
■今回は自身の愛車遍歴について語っていただいた
初めての愛車はフォルクスワーゲン・ビートル
両親ともとくにクルマ好きというわけでなく、男の兄弟がいなかったこともあり、生まれてからまったくクルマに興味のない生活をしてきた私でしたが、地方の大学に入って一人暮らしをしたところ、「クルマがないと通学も遊びも不便で仕方ない」と気づき、猛烈にバイトをして貯めたお金で20歳で遅めの免許取得。初めてのマイカーを買う予算は、わずか30万円でした。
「最初はやっぱり日本車のほうがいいかな」と漠然と考えたものの、カーセンサーを見ても30万円で買える日本車にはまったく魅力を感じず、相談したのは当時よく一緒に遊んでいた先輩たち。そこで勧められたのが、その先輩たちがハマりはじめていたフォルクスワーゲン・ビートルでした。予算内で買える個体を探してもらったら、年式不明でおそらく1974年式とのこと。でも、カブトムシと呼ばれたデザインはもちろん、ソファみたいなシートや小さなハンドル、床からビヨ~ンと生えたペダルやシフトレバーもすごく気に入って、ちょっとヘンな私のカーライフがスタートしたのでした。じつはこれが、のちの私の人生まで変えることになるとは、まだ知るよしもありません。
カブトムシとのカーライフは、当時全国的に流行っていたフォルクスワーゲン車のイベントやツーリング、スワップミートと呼ばれる西海岸のクルマ文化を感じさせる集まりまで、毎週のようにあちこちに出かけてクルマの楽しさを満喫させてくれるものでした。同じ車種でも、思い思いに自分の好きなカスタムをして乗っている人ばかりのビートル。私もスイッチをサイコロの形に変えたり、アイボリー色のボディのフェンダーだけをブラックに交換したりして、着せ替え人形みたいに楽しんでいたのを思い出します。ツーリングに出かければ、必ず誰かのクルマが壊れたり調子が悪くなり、仲間たちでその場で直したり、牽引して帰ったり。当時はまだ、走っている時に同じビートル同士ですれ違うと、パッシングをし合って合図したりするのも、知らない人と同じクルマでつながっているような、不思議な感覚があって楽しかったものでした。
そんな感じでドップリとクルマ漬けになってしばらくすると、フォルクスワーゲンのイベントでよく見かける、カルマンギアというクルマに憧れるように。カブリオレとクーペがあり、狙うはもちろんカブリオレ。でも、当時はとても人気車種で、安くても300万円くらいの値がついていたのです。貧乏学生にはとても手が届かず、いつもヨダレを垂らして眺めていたのですが……。
※写真は広報画像
そんな私を見て不憫に思ったのか、お世話になっていたショップのメカニックさんが、「カルマンギアに似てるクルマが70万円であるよ」と教えてくれたのです。車名を聞いてもよくわからず、当時はまだパソコンもスマホもなかったので調べることもできず。でも直感で「買います!」と即答。後日、そのクルマと対面して、それがフィアット124スパイダーというイタリアのオープンスポーツカーだということを初めて知りました。ボディカラーがちょっとイケてなかったので、なけなしの10万円でイエローにオールペンしてもらうと、そもそもピニンファリーナがデザインした流麗なスタイルだったボディは、見違えるようにステキに! こうして2台目の愛車は、1978年式のフィアット124スパイダーとなりました。
フィアット124スパイダーに導かれて自動車業界へ!
そしてコレが、私の人生を決定づける運命の愛車にもなったのです。就職活動で雑誌の編集者を目指し、出版社の試験を受けまくり、片っ端から落ちまくっていた私。そんな時にショップの人が、「イタ車に乗るならこの本読んでおかないと」と手渡してくれたのが、エンスー雑誌の『Tipo』でした。ふ~んと思いつつパラパラをめくり、最後の編集後記のページを見ると、そこに「編集者募集」の小さな告知を見つけたのです。とりあえず応募してみるか、と書類を出したら、あれよあれよと最終面接まで進み、最後の社長面談で「フィアット124スパイダーに乗っている元気な女の子」という印象が強く残ったとのことで、見事、わずか採用2人という難関を突破したのでした。完全に、愛車に助けられた瞬間でした。
124スパイダーはエンジンの調子はよく、まったくトラブルが出なかったのは超ラッキーでしたが、幌が経年変化で硬くなっていて、とくにビニールの窓の部分がもう白く濁っていたため、幌を閉めると後方がまったく見えなくなって危ないので、真冬でもなんでもずっとオープンで走るしかありませんでした。鼻水は出るし耳は凍りそうになるし、もう必死。夏もエアコンなんてなく、ちょっと乗るだけで汗ダクになるので着替えは必須。パワステなしの4速MTで、車庫入れなんて筋トレみたいな感じでしたね。それでも、1カ月のうち3日間くらいは、ものすごく気持ちよくて爽快なドライブができる。それだけで、普段の辛さなんて吹き飛ぶようなカーライフでした。
そして124スパイダーが私に残したもう1つの影響は、2+2シーターが大好きになったこと。2シーターだと、荷物や上着をちょっと置いておくようなスペースがないけど、小さいながらも後席がちょこっとあるというだけで、こんなにも使い勝手がよくなり、気持ちにも余裕ができるんだと感じたのです。ただ、あまりに壮絶なオープンカーライフだったので、オープンカーを日常的に乗るのはいまだに苦手意識があります。
なのでその後の私は、2+2シータークーペを愛するように。一時期、ダートラにハマって三菱の”エボ0”と呼ばれたランサーGSRや、ギャランVR4を乗り継いだあと、いつか乗ってみたいと思っていたフォード・マスタングのクーペを購入。V8は手が届かずV6でしたが、おおらかなアメ車との暮らしを満喫しました。そして、やっぱりいつかは乗ってみたかった、ポルシェ968に乗り換えます。このクルマはもう、箱根の山道が最高に楽しい、ベストハンドリングクーペでしたね。「ポルシェなのにエンジンが前にあるの?」なんてバカにされたこともありますが、いやいやこの楽しさは経験しておいて損はなかったと、今でも満足しています。
※写真は広報画像
そして、2007年の東京モーターショーで再び運命の出逢いをしたのが、世界初の量産ハイブリッドスポーツカーだったホンダCR-Zです。コンセプトカーに一目惚れし、量産化したと同時に購入。もう大好きで大好きで、どこへ行くにも一緒がよくて、子供が生まれてからもしばらくは手放せずにそばに置いてあったのですが、さすがに乗る機会が減ってしまい、ポツンと駐車場に取り残されることが多くなったCR-Z。その姿を見るのが辛くて、ついに昨年、第二の人生に送り出したのでした。
嬉しかったのは、10年前にまだ10歳だった甥っ子をCR-Zに乗せたらすごく気に入って、「僕、大きくなったらこれに乗るから、僕が免許取るまで持っててね」と言われたのです。そして18歳で無事に免許を取った甥っ子は、宣言通り、CR-Zに乗りにきました。長野の方までドライブしてきたと、「楽しかった~!」と言って帰ってきた時は、もう感無量。CR-Zは立派に、次世代のクルマ好きを育てるアシストをしてくれたのかなと思っています。
そんなわけで、現在は6歳になって口が達者になり、後席が狭いとかいろいろと文句を言うようになった娘も納得している、スバル・レヴォーグのSTI Sportで、先進の運転支援機能がついたスポーツワゴン生活を楽しんでいます。でも娘がもう少し大きくなったら、また2+2クーペに戻りたいかな。それか、クーペのようなクロスオーバーSUVも良さそう、などと妄想して過ごす日々です。
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