現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「F1の規定に合わせた幻の国産3.5L V12エンジン」HKSが開発した『300E』を知っているか?【ManiaxCars】

ここから本文です

「F1の規定に合わせた幻の国産3.5L V12エンジン」HKSが開発した『300E』を知っているか?【ManiaxCars】

掲載 更新 16
「F1の規定に合わせた幻の国産3.5L V12エンジン」HKSが開発した『300E』を知っているか?【ManiaxCars】

故・長谷川社長以下、従業員の夢を乗せ、富士スピードウェイで実走テストも実施!

実戦には投入されなかった幻のエンジン

「F1の規定に合わせた幻の国産3.5L V12エンジン」HKSが開発した『300E』を知っているか?【ManiaxCars】

日本を代表するチューニングメーカーのHKSは、市販車用チューニングパーツの開発、販売と並行してモータースポーツ用エンジンにも深く携わってきた。

よく知られるのは1992年、全日本ツーリングカー選手権グループAに参戦したBNR32のRB26DETT型だが、それ以前にアメリカのスタジアムトラックレース用に開発したミツビシG54B型ベースの2.3L直4DOHC4バルブ『134E』(1984年)や、5バルブエンジンの特性を確認するため、GC(グラチャン)レースに投入されたF2用2L直4DOHCのBMW M12型をベースとした『186E』(1986年)なども存在した。

そんなHKSは「世の中がNA化に進む」と早くから予測して1984年にNAの専門技術と開発への取り組みをスタート。その集大成として開発、実走テストまで行われたのが、当時のF1マシンへの搭載を想定した3.5LV12のオリジナルエンジン『300E』だったのだ。

同プロジェクトが動き出したのは1990年1月。当初はF1用エンジンとしてホンダやルノーがすでに実戦投入してたV10も検討したけど、究極を求めたHKSはV12を選んだ。開発に際しては「5バルブ採用による高回転&高出力化」「回転部以外には高価な材料を使用しない」「レース参戦はまず考えずに開発する(第一次開発)」などを謳い、「700ps/42.5kgm以上、1万3500rpm以上、単体重量150kg」が目標に掲げられた。

『300E』はプロジェクト開始から約1年半で完成し、1991年6月25日、ついにエンジンに火が入った。その後、ベンチテストを重ねて同年12月末に650psを達成し、翌1992年1月の東京オートサロンで発表。F3000マシンのローラT91/50改に搭載され、富士スピードウェイを舞台に報道陣を集めてのテスト走行が実施されたのは同年12月7日のことだった。

本来載るはずの3L・V8に代えて3.5L・V12エンジンの『300E』を搭載するにあたり、リヤセクションが200mmほど延長されたローラT91/50。装着タイヤは、F1用タイヤのレギュレーションにならってヨコハマが開発したワンオフ品だ。

この時、配布されたプレスリリースによると、テストランの目的は1:潤滑系、冷却系の問題点チェック、2:エンジンの実力チェック(レスポンス、トルク感、高回転の伸び)、3:エンジン制御システムの確認と実車での改良、4:エアダクトによるラム圧チェックという4点にあったようだ。

参考までにベストタイムは1分20秒9。F3000のコースレコードに対して約5秒落ちだったが、F1の規定に合致したエンジンを作り上げ、シェイクダウンまでこぎつけたことは、HKSの高い技術力と開発に携わった者たちの熱い思いの結晶に他ならない。

国産の、それもチューニングメーカーが手がけたF1用V12エンジンの登場に期待は大きく膨らんだ。すでにホンダやヤマハ、スバル(モトーリモデルニ)がF1コンストラクターにエンジンを供給し、いすゞも独自開発のV12をロータスに載せてテストを実施。1990年代前半のF1GPは、スポンサーとしてジャパンマネーが飛び交っただけでなく、日本のメーカーが持つ高い技術力を世界に示した時代でもあったのだ。

しかし、『300E』がその姿を見せたのはシェイクダウンの一度きり。HKS社内では引き続き、エンジンベンチでのテストや性能チェックが行われたようだが、再び公衆の面前でテスト走行が実施されることはなく、F1GPに実戦投入されることもなかった“幻のエンジン”として、クルマ好きの記憶に刻まれたのである。

■SPECIFICATIONS

エンジン形式:75度V型12気筒5バルブ
排気量:3491cc
乾燥重量:165kg
全長×全高×全幅:720×490×600mm
制御:HKSマネジメントシステム
スロットルバルブ:バタフライ方式
シリンダーブロック:高靱性アルミ鋳物
シリンダーヘッド:高靱性アルミ鋳物
シリンダースリーブ:アルミニカシルメッキ
カムキャリア:高靱性アルミ鋳物
クランクシャフト:特殊窒化鋼
カムシャフト:特殊窒化鋼
バルブ:チタン合金
ヘッドガスケット:SUS多層品
出力:650ps以上
トルク:42kgm以上
使用ガソリン:市販無鉛ガソリン
最高回転数:1万3500rpm

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

アリババで「フェラーリのボディ」が“丸ごと”買える! だからクラッシュしても安心!? ランボやベントレーのパーツも充実した「ワケあり業者の正体」とは
アリババで「フェラーリのボディ」が“丸ごと”買える! だからクラッシュしても安心!? ランボやベントレーのパーツも充実した「ワケあり業者の正体」とは
VAGUE
三菱「デリカD:5」にポップアップルーフ装備車があった!? 西尾張三菱自動車販売から購入した「D:POP」で日本全国を走って楽しんでます
三菱「デリカD:5」にポップアップルーフ装備車があった!? 西尾張三菱自動車販売から購入した「D:POP」で日本全国を走って楽しんでます
Auto Messe Web
出口まだ…? 世界最長の道路トンネル 10選 巨大な地下建設プロジェクト
出口まだ…? 世界最長の道路トンネル 10選 巨大な地下建設プロジェクト
AUTOCAR JAPAN
最新ミニの安全性は? ユーロNCAPで新型「ミニ・カントリーマン」をテスト!
最新ミニの安全性は? ユーロNCAPで新型「ミニ・カントリーマン」をテスト!
VAGUE
【第4回】浜先秀彰の絶対的カーグッズ!:ディスプレイオーディオのススメ
【第4回】浜先秀彰の絶対的カーグッズ!:ディスプレイオーディオのススメ
AUTOCAR JAPAN
綺麗なオイルを入れたのに秒で真っ黒! 乗用車と違いトラックのエンジンオイルがすぐに汚れるワケ
綺麗なオイルを入れたのに秒で真っ黒! 乗用車と違いトラックのエンジンオイルがすぐに汚れるワケ
WEB CARTOP
高速道路に「激レアの“青い”通行券」が存在するって本当ですか? どうすれば貰えるのでしょうか。
高速道路に「激レアの“青い”通行券」が存在するって本当ですか? どうすれば貰えるのでしょうか。
乗りものニュース
2024年に「消えたクルマ」何があった? 「超人気車」&異例の「ロングセラーモデル」にも幕… 惜しまれつつ「生産終了したクルマ」とは
2024年に「消えたクルマ」何があった? 「超人気車」&異例の「ロングセラーモデル」にも幕… 惜しまれつつ「生産終了したクルマ」とは
くるまのニュース
クラウン クロスオーバーRSはクラウンを名乗らなきゃよかったってガンさんなぜ!? 黒沢元治×石田貴臣【動画】
クラウン クロスオーバーRSはクラウンを名乗らなきゃよかったってガンさんなぜ!? 黒沢元治×石田貴臣【動画】
WEB CARTOP
スバルの斬新モデル「“丸目”のカサブランカ」が凄かった! 伝統の「水平対向エンジン×四輪駆動」採用! 高級感あふれる“走り”実現する「超レトロ風モデル」に反響あり!
スバルの斬新モデル「“丸目”のカサブランカ」が凄かった! 伝統の「水平対向エンジン×四輪駆動」採用! 高級感あふれる“走り”実現する「超レトロ風モデル」に反響あり!
くるまのニュース
2025年箱根駅伝で交通規制…迂回路や渋滞回避について下調べ必要 1月2-3日
2025年箱根駅伝で交通規制…迂回路や渋滞回避について下調べ必要 1月2-3日
レスポンス
2025年はランボルギーニ・ポロストリコの10周年! 2024年の活動報告…ファイティングブルのクラシックカー事業の重要性とは?
2025年はランボルギーニ・ポロストリコの10周年! 2024年の活動報告…ファイティングブルのクラシックカー事業の重要性とは?
Auto Messe Web
10年前に一目ぼれしたディーゼルコンパクトを今さら愛車にしてみたら、ただ懐かしいだけじゃなかった【旧車系新企画「ちょいふるジョイフル」はじめます(2) スタッフブログ特別編】
10年前に一目ぼれしたディーゼルコンパクトを今さら愛車にしてみたら、ただ懐かしいだけじゃなかった【旧車系新企画「ちょいふるジョイフル」はじめます(2) スタッフブログ特別編】
Webモーターマガジン
【ニュージーランド】トヨタ新「GR86“箱根エディション”」発表! 上品グリーン&豪華“茶”内装採用! 6速MTのみ「新モデル」登場
【ニュージーランド】トヨタ新「GR86“箱根エディション”」発表! 上品グリーン&豪華“茶”内装採用! 6速MTのみ「新モデル」登場
くるまのニュース
F1ドライバーを2名排出! 国内カテゴリーのチャンピオンも多数育成! ホンダのレーシングスクール「HRS鈴鹿」の実力はワールドクラスだった
F1ドライバーを2名排出! 国内カテゴリーのチャンピオンも多数育成! ホンダのレーシングスクール「HRS鈴鹿」の実力はワールドクラスだった
WEB CARTOP
Max Racingが2025年に向けて“再始動”へ。SROジャパンカップ参戦を目指し準備を進める
Max Racingが2025年に向けて“再始動”へ。SROジャパンカップ参戦を目指し準備を進める
AUTOSPORT web
「長距離移動最強=GT性能最高」なクルマはどれ? 速くて快適でラグジュアリーな世界最高といっても過言じゃない5台を選出
「長距離移動最強=GT性能最高」なクルマはどれ? 速くて快適でラグジュアリーな世界最高といっても過言じゃない5台を選出
WEB CARTOP
助手席で「絶対やっちゃダメーっ!」 意外に「やりがち&無意識」の行動もある? ドライバーが“メチャ嫌がる行為”5選
助手席で「絶対やっちゃダメーっ!」 意外に「やりがち&無意識」の行動もある? ドライバーが“メチャ嫌がる行為”5選
くるまのニュース

みんなのコメント

16件
  • 長年F1見ているがこれは知らなかった。このぐらい安易な情熱だけで参戦できるF1は夢があっていい。このままレギュ変えずに究極のNAを追い求めてたら、今の複雑怪奇なPUより社会へ還元できるテクノロジーが磨かれてたのかもね。
  • 時代背景やレギュレーションとかもあるだろうけど当時のHKSはそんなに情熱のある会社だったのか…知らなかった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村