【川名賢のフランスラリー参戦記 07】フランスならでは？ まさかのレジェンドたちとの遭遇に、興奮と緊張の連続！

■赤いランサーに乗っていたのは!?
サヴァ？

ラリードライバーの川名です。今回は7回目の連載になりますが、ラッキー7にちなんでフランスで起こったとてもラッキーなお話をしようと思います！

前回の連載ではレキのお話をしましたが、今回はレキの日に起きた思い出深い話です。レキの最中にコース内で一般車が立ち往生したため、ほかのレキ車と一緒に待機していると、何やら後ろから赤いランサーがやってきて僕の後ろに止まりました。

ほかのドライバーがみな寄ってたかって話しかけているなと思ったら、なんとフランスの英雄『セバスチャン・ローブ様／ダニエル・エレナ様』のコンビではありませんかぁ！！！

WRC勝利数79回、ワールドタイトル9回（2021年4月での記録）という前人未到を成し遂げたラリーの世界的スーパースターですよ！

僕がソワソワしているのを察知した（コ・ドライバーの）キャシーが、「写真撮りたいんでしょー!?（ニヤリ）」と僕に微笑みかけてきました。「撮る撮る！」と言ったものの、セブ様は写真とか嫌いって聞いたことあるような？（汗）と勝手にオロオロ（笑）。そんなことは構わずキャシーがペラペラとセブ様に僕を紹介してくれて、「写真？ いいよ！」と快く写真に応じてくれました！

もうね、ラリー始まってないのに感無量です（涙涙涙）。緊張して写真の顔が笑えてませんね（笑）。

さっと写真だけお願いしてそそくさと退散したら、その後すぐに人だかりができていました（汗）。スーパースターはスゴい！ 日本でもラリーのスーパースターが生まれる日が来るといいなと思った瞬間でした。

そしてさらにこの夜はもう1つのサプライズが！

■あの、ジル・パニッツィ登場！
キャシーの旦那様のブノワから、「ジル（※）と夕食食べるからスグルもどう？」と連絡が……。「ジル？？？ジルって……。レジェンドのジルパヌゥイッツゥイ様じゃねーかー！」（もはや滑舌もおかしくなる始末）。

ということで即答で「行く！」と返事してみなで夕食を楽しみました！

見てください、ジル・パニッツィ様とワインでルネサンス！（乾杯）です！

ラリー前にアルコールは飲まない主義なのですが、ジル様に「速く走りたければ飲みなさい！」と言われ「いただきます！」と即答（笑）。2杯目も勧められ「さらに速くなったぞ！」と言われ、またもや感無量（涙涙涙）。

ジル様はとてもおしゃべり上手で、フランス語でずーっとおしゃべりを楽しんでおられました。僕が分かったのは「酒飲むと速く走れるぞ」くらいでしたが、それだけでもう十分でした。

ジル様といえばこのステージ中のエンターテイメントでしょう！！


もう伝説ですよね！

しかし、こんな機会を作ってくれたキャシー様には頭が上がりません！

※ジル・パニッツィ
1990年代後半から2000年代にかけて、プジョーや三菱ワークスで活躍した、フランス人ドライバー。世界をアッと言わせたのは1997年のWRC第5戦カタルニアで、インプレッサやランサーなどの4WDターボ勢を相手に、FFのプジョー306マキシで何度もステージベストをマーク。WRカー勢に割って入りポディウムを獲得した、伝説のドライバーだ。


■まだまだ奇跡は終わりません
そんな興奮冷めやらぬ1日でしたが、翌日のシェイクダウンでも奇跡が続きます。

ラリーカーでシェイクダウンのスタート地点に着いたら、なんとセブ様が前にいらっしゃるではありませんか！ もうねこれは運命ですね！ と勝手に都合のいい解釈（惚）。

そしたらなんと、こちらに気づいて話しかけてくれました！！！！！

セブ様「調子どう？！」
ボク『シドロモドロ（汗）』

テレビやDVDでしか見たことないセブ様が僕に話しかけてくれたんですよ！！！その後しばしぼーぜんとしたことは言うまでもありません・・・。

もうラリードライバーというより、ただのラリーファンですみません（笑）

しかしセブ様の周りはつねにスゴい人だかりでした。ヨーロッパでどれだけラリーが認知されていて、ドライバーが評価されているのかが一目でわかる瞬間でした。日本のラリーもこんな日が来るように盛り上げていきたいですね！

「そう、そのために僕はフランスに来たんだ。」と再認識。

そういえば僕にもフランス人のファンができたんですよー！

『子供に夢を与えなさい』。これはメインスポンサーをしてくださっている斉藤社長の教えです。僕もいつしかプチスーパースターになってやるぜ！

ということで、7回目はラッキーなお話でした。運を味方につけられるか、ドライバーの真価が問われる瞬間ですね。

次回はいよいよラリースタートです！

【川名 賢（かわな・すぐる）】
2019年にFIA アジア・パシフィックラリー選手権（APRC）のAPRC3クラスでチャンピオンを獲得した、国際ラリー経験豊かな若手ラリースト。全日本ラリー選手権の王座や、優勝、チャイナ・ラリー選手権での優勝などタイトルは数知れず。ヨーロッパでのラリー参戦は2015年以来となる。プジョーの最新ラリーカーでどこまで欧州勢と戦えるのか、注目だ！