日本の輸入車ラインアップに加わったBMW のトップパフォーマンスモデル、M8グランクーペ コンペティション。その実力のほどをこもだきよし氏がさっそく確認した。(Motor Magazine 2020年6月号より)
後輪駆動から始まる4WDシステム
BMW史上最高にカッコいいクルマは8シリーズグランクーペ(GC)だろう。そのトップパフォーマンスを誇るのが、この8GCコンペティションである。
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最高出力625ps/6000rpm、最大トルク750Nm/1800-5860rpmは量産車用に開発されたBMWの最強エンジンで、M8クーペコンペティションにも採用されている。クロスバンク内に配置された2基のターボチャージャーを介し、バルブトロニック、高精度直噴システムを使う。S63B44B型というエンジン型式こそ同じだが、M8GCの600ps/6000rpm、750Nm/1800-5600rpmに比べると高回転域でパワーアップしているのがわかる。
M8GCコンペティションに乗り込むと、そのインテリアはスポーティさとラグジュアリーさが競演していることに気づくだろう。スポーティさの証はハンドル内側左右に付く赤いボタンだ。左側はM1、右側はM2と表示があるが、これはMDM(ドライブモード)のプリセット用である。エンジン、シャシ、ステアリング、ブレーキ、M xドライブの5項目のセッティングが事前にできる。エフィシェント、スポーツ、スポーツプラス、あるいはコンフォートとスポーツなどから選択できる。そしてM xドライブでは通常の4WDからDSCオフにすることで4WDスポーツ、さらに後輪だけの2WDも可能になる。
4WDといってもBMWだからそもそもが後輪駆動から始まる。極端に言えば前0%、後100%なのである。後輪が滑りだしたら(回転が前輪より大きくなったら)電子制御の湿式多板クラッチをつなげて前輪にも駆動力を伝えていく。4WDDスポーツではクラッチの介入を遅くすることができるから、アンダーステアを弱いままで走らせることもできるわけだ。
それでも750Nmというトルクは強烈だし、アクセルレスポンスに対して遅れなく反応するからちょっと湿った路面だと4WDを過信して不用意にアクセルペダルを踏み込むとカウンターステアが必要なほどリアが滑る。このM8GCコンペティションは、DSCの助けが追いつかないほどのエンジンパフォーマンスを持っているのである。そうした意味では、やはりMモデルだけあって、ドライバーを選ぶのかもしれない。
魅了される官能的なエンジンサウンド
これまでのモデルでは、Dレンジのまま走っているときにパドルシフトを使うと、レンジに切り替わり自動シフトアップが効かないが、M8GCコンペティションは自動シフトアップが可能となり、さらにスピード変化がなくなると自動的にレンジに戻るようになった。これは新しいタイプのATだからなのか、使いやすい。もちろんセレクターを動かしてマニュアルモードにした場合には、インパネのシフト表示も数字だけになりレンジには戻らない。
アクセルペダルを床まで踏み込んで加速していくと、淀みなく回転が上がっていく感触は絶品だ。これは単にエンジン回転数やレスポンスだけの要素ではなく、エキゾーストノートも大きな影響を与えている。実際に走って官能的なサウンドを作り込んでいるそうだが、確かにエンジンレスポンスにフィットしたサウンドである。実際の加速力も0→100km/hは3.2秒、200km/hまでは10.6秒というから、きっとアウトバーンでも敵なしだ。
ハンドリング性能もM8クーペと比べてホイールベースが若干長いから少しは重さを感じるようになるかと心配したが、それは杞憂だった。重量もホイールベースもまったく関係なく、ものすごくスポーティな味付けだった。これはひとえにボデイ高い剛性の賜物だろう。
エンジンルーム内もフロアの下にもたくさんのレインフォースメントが張り巡らされているおかげで、4ドアになって開口部が増えてもまったくびくともしないシャシによって、ハンドリング性能を確保している。M8GCコンペティションも他のMモデル同様、サーキットで走らせたいと思わせるクルマだ。(文:こもだきよし)
■BMW M8グランクーペ コンペティション主要諸元
●全長×全幅×全高=5105×1945×1420mm
●ホイールベース=3025mm
●車両重量=2000kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=4394cc
●最高出力=625ps/6000rpm
●最大トルク=750Nm/1800-5860rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=2408万円
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