前期型ショートボディと後期型ロングボディを乗り比べる!
進化の度合いに、いすゞのホンキを見た!!
さすがは自由の国! おかしなカスタムバギーが大量発生【2010ボンネビルSPLレポート-後編-】
この手の国産クロカン4駆なら普通はランクルかパジェロを選ぶところ。けれど、自分を含むマイナー志向の人なら「気になるのはビッグホーン」という意見に同意してくれるはずだし、そう思っちゃう人は世間一般の感覚からズレてることを自覚するべきだ(笑)。
そんなビッグホーンの初代が2台、それも前期型ショートとなる1982年式ロデオビッグホーンソフトトップLTと、後期型ロングの1990年式ビッグホーンスペシャルエディションbyロータスが揃った。
丸型2灯ヘッドライトの前期型は、見た目がレンジローバーに酷似してるってことでランドローバー社からヨコヤリが入ったとかなんとか。なもんで、後期型へのマイチェンで角目に変更した…なんてヨタ話はさておき、早速2台を乗り比べてみる。
まずは前期型ショートボディから。2.2L直4ターボのC223型はディーゼル特有のガラガラ音が盛大で振動もかなり大きい。前後も左右もストロークが大きいシフトレバーで1速を選び、クラッチペダルをゆっくりリリースすると、スルリと動き出した。1速は2トントラック並みのローギヤードだから、タイヤがひと転がりしたらすぐ2速へ。2000rpm手前で3速、4速とチェンジしていく。低回転域で粘るエンジン特性だから、早めのシフトアップでルーズな走りも許容してくれる。
乗り心地は想像以上にハード。というかギャップを越えるたびにボディが大きく揺すられ、トラックに乗ってるようだ。でもってパワーステアリングのアシストが強く、手のひらに伝わってくるインフォメーションが希薄だから、舗装路を走っててもちょっと不安になる。
そう、不安といえばブレーキもだ。今どきのSUVを思い描いて乗ると、理想と現実のギャップの大きさに愕然とすることウケアイ。これは生半可じゃ乗れない、“男のクルマ”と呼ぶにふさわしい。
続いて後期型ロングだけど、取材車両はモデル末期に追加された特別仕様車のスペシャルエディションbyロータス。そう、ハンドリングbyロータスの前身とも言うべきモデルだ。
運転席に収まると、まずダッシュボードの細かい造形やドアトリムなどが、かなり乗用車的な仕上がりとなってることに気付く。キーをひねり、グローランプが消えたのを確認してエンジン始動。30年近く前のクルマだけにガラガラ音も振動もハッキリ伝わってくるけど、前期型から大幅に改善されていることを実感。こっちは4速ATなんで、Dレンジに放り込んで走り出す。
2.8L直4の4JB1型は、同じディーゼルターボでもひと世代新しく排気量も大きいから、ゼロ発進からしてトルクフル。ちなみに、ディーゼルにATが組み合わされたのは後期型から。イージードライブを実現したという事実も、より乗用車的になった証だ。
1500rpmくらいでダラダラ流しててもトルク感はたっぷり。そこからアクセルペダルを踏み込んだ時のレスポンスも格段に向上していて、前期型を上回る加速を見せてくれる。
なにより、ロングホイールベースであることを差し引いても、不快に思わないレベルにまで乗り心地が改善されてることに感心。ブレーキだって絶対的な制動性能の向上はもちろん、ペダルタッチもリニアになってるから、前期型とは安心感がまるで違う。
基本的なデザインは変わらないけど、細部の造形に違いが見られるインパネ周り。スピード&タコメーター以外はダッシュパネル中央部に配置される。5速MTで、センターコンソールがないためスパルタンな印象を受ける前期型に対して、4速ATの後期型ははるかに乗用車的に見える。ちなみに、スペシャルエディションbyロータスはホーンパッドにいすゞマークが入ったモモ製ステアリングホイールを標準装備。
はたして初代ビッグホーン、前期型から後期型への進化の度合いを実感した今、いすゞの本気をヒシヒシと感じずにはいられないのだ。
●PHOTO:小林克好(Katsuyoshi KOBAYASHI)/TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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