ポルシェ初のピュアEV、「タイカン」がついに正式に発表された。その性能を一部紹介すると、最高出力は761ps、最大トルクは1050Nmを発揮(ターボS。ローンチコントロール作動時)。これは、ポルシェでもっともパワフルな「パナメーラ ターボSEハイブリッド」の最高出力680psに迫り、その最大トルク850Nmを上まわるもので、タイカンの高性能バージョンである“ターボS”の場合、0-100km/h加速は2.8秒、0-200km/h加速は9.8秒でクリアする。航続距離はタイカン・ターボが最大で450km、タイカン・ターボSは412kmとなる(いずれもWLTPモード)。
モーターは前輪駆動用に1基、後輪駆動用に1基の計2基を搭載。前後モーターの出力を個別に制御し、トラクション性能やハンドリング性能を最適化したフルタイム4WDである。興味深いのは、ほとんどのEVが変速機を搭載していないのに対し、タイカンは後輪駆動用モーターのみ2段変速機を組み合わせているのだ。これにより、鋭い加速性能と優れた効率を実現したという。
フロントとリアに1基ずつモーターを搭載する。全長は4963mmなので、「カイエン」(4918mm)とほぼ同等。ただし、スタイリッシュな4ドア・サルーンのタイカンは全高が1378mmと低い。これはパナメーラの1427mmを50mmほど下まわる。
なお、ポルシェではボディ・タイプにあわせてクーペ、カブリオレ、ロードスター、サルーン、トゥーリズモ(スポーツワゴン)、SUVとジャンル分けしているが、タイカンはこのなかでパナメーラとおなじサルーンに分類され、サイズ的にはパナメーラのひとつ下にあたるCセグメント(VWグループ内の定義で、一般的なEセグメントに相当)と位置づけられている。同じCセグメントにはカイエンが含まれる。
車両横で説明するのはプロダクト&コンセプト担当バイスプレジデントのゲルノート・ドエルナー氏。タイカンはEV専用モデル。EV界を見渡したとき、タイカンはテスラと似たハイパフォーマンスモデルで、SUV系のジャガー「Iペイス」、アウディ「e-tron」、メルセデスベンツ「EQC」とはいささか性格が異なる。サイズ的にはテスラの「モデルS」よりは小さく、「モデル3」よりは大きい。いわば、いままでになかったジャンルのEVといえる。
ポルシェらしさ満載そうした全体的な位置づけよりも重要なのは、タイカンが徹頭徹尾、ポルシェとして作られている点にある。
ヘッドライトこそ「911」のような丸形ではないものの、その内部に4点式デイタイムランニングライトが埋め込まれているのは、ポルシェの最新デザイン言語に従ったもの。フラットで低いボンネットや、それに続くフロントウィンドウの曲面もポルシェそのものだ。
4点式デイタイムランニングライトが埋め込まれたヘッドライト。なだらかな曲線を描きながらスムーズに下降するルーフからテールエンドにかけてのラインやCピラーの造形も911を思い起こさせる。そしてボディ全幅に薄く長く伸びたテールライトは最新の“タイプ992”の911と共通のデザインだ。
同様のことはインテリアについてもいえる。水平に長く伸びたダッシュボードより一段高い位置に、丸形ダイヤルのアナログメーターで構成されたメーターパネルを設けるデザインは911の伝統に従ったもの。
メーターパネルのほか、操作系スウィッチも大型液晶パネルに集約された。ただし、メーターパネルはポルシェの歴史で初めて、全面デジタルディスプレイになり、設定次第ではナビゲーション・マップを大きく映し出したり、反対に速度表示だけのシンプルなデザインにしたり、と切り替えられる。このあたりは時代の変化に従ったものといえそうだ。
93.4kWhの大容量バッテリーを床下に積んでいる関係で、着座“位置”は911に比べ微妙に高いものの、着座“姿勢”は911と酷似するという。私が参加したワークショップでは、助手席ではあるもののタイカンに試乗する機会があったが、そのとき腰掛けた印象でいえば、911とほとんど変わらないスポーツカー的なドライビングポジションだった。なお、助手席から見た走りの印象については後述することしよう。
今回のワークショップは、助手席同乗のみだった。パフォーマンスを証明する方法も、いかにもポルシェらしいものだ。たとえば、タイカンは0-200km/h加速を連続で26回行えるほどの耐久性というか強靱さを持ち合わせている。ちなみに、26回の加速タイムはいずれも10秒以下で、最初と最後のタイム差は1秒以下だったという。
24時間連続走行テストも、いかにもポルシェらしい。これはイタリアの有名なテストコースである「ナルド」を舞台に実施されたもので、24時間を平均143km/hで走破し、走行距離は3425kmに達した。しかも、これはバッテリーの充電を含んだ時間だというのだから驚かざるをえない。
最後の“証明方法”は、お馴染みのニュルブルクリンクでのラップタイム。ここで記録した7分42秒は、スポーツセダンのピュアEVとして最速のタイムだ。
駆動方式は電子制御式4WD。驚くべき走行性能と充電性能では、ワークショップで同乗試乗したタイカンの印象はどうだったのか? 走行したのはショートサーキットのようなハンドリングコース、定常円旋回、ストレート区間を使った全開加速などだったが、ハンドリングコースでは機敏なコーナリングを披露。3チャンバー・エアサスペンションがもたらす乗り心地も上々だった。
定常円旋回でのドリフト走行も圧巻。驚くべきはそのドリフトアングルの大きさで、ほとんど90度近い角度を保ったまま延々と走り続けたのである。テストドライバー氏に訊いたところ、彼はタイカンでドリフトアングル91度の最高記録をマークしたという。91度といえばごくわずかながら前輪よりも後輪のほうが先行している状態。それでもスピンせずに済むのは、タイカンが4WDであることと、前後のトルク配分を電気モーターにより正確に、そして迅速に制御できるからだろう。
最後に、タイカン最大の特徴を紹介しよう。それは800Vシステムを使った高速充電システムである。通常のEVで使われる400Vシステムに比べ、電圧が2倍になるため、電流がおなじでも電力は2倍になり、結果として充電スピードも2倍になるというメリットをもたらす。
また、おなじ電流を流すのであれば電線をより細くできるため、軽量化に役立つのも800Vシステムの利点とされる。タイカンの場合、800Vシステムを使った結果、およそ50kgも車重を軽減できたという。
急速充電用の給電口は、右フロントタイヤちかくにある。ただし、日本では電力を取り扱う規制の関係もあり、800Vの急速充電が実際に使えるかどうかは微妙な状況。これとは別に、現在ポルシェ・ジャパンはタイカン用の特別な急速充電施設を全国のポルシェ・ジャパンや公共施設などに設置する準備を進めている。規格としては次世代CHAdeMOに即しており、充電出力は一般的なCHAdeMO規格の3倍にあたる150kW。これはテスラが提供する充電器「スーパーチャージャー」の120kWを上まわるもので、実用されるものとしては国内最速となる。この充電施設を使うと、30分以内でタイカンのバッテリーを80%まで充電できるようだ。
これもまたポルシェらしい性能の追求といえる。
文・大谷達也
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