どっしりと重厚なイメージのハーレーが、ついに空を飛んだ! 多角化の一途を辿るハーレーが次に目を付けたのは空……ではなく、オフロードだ。
2021年、ハーレーは世界的に人気のアドベンチャーカテゴリーにニューモデルを投入する模様。さらに完全電動のEVも日本上陸が開始される。悪路へ、そして電気へ。いったいどこに行くんだハーレー!
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文/市本行平(イチバリキ)、写真/HARLEY-DAVIDSON、BMW Motorrad
オフロードをジャンプするハーレー! これは本当にハーレー?
例年なら夏に実施されるハーレーダビッドソンのニューモデル発表が、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で見送られた。
現在でも各社が続々と新型を公開している中、ハーレーの2021年モデルはベールに包まれたままだ。だが、ようやく動きが見えてきた。2021年1月にはついに新たなラインナップが公開されるはずだ。
その中に驚きの情報が! なんと、オフロードのハーレーがスタンバイしているというのだ。「パンアメリカ」と名付けられたこのニューモデルは、クルーザーモデル中心のハーレーとしては超異色の存在だ。
実は2019年11月のミラノショーでも発表済みなのだが、思いっ切りジャンプする写真も公開され、業界に衝撃が走った。ジャンプできるということは、オフロード性能が相当高いレベルにあるということの証だからだ。
かなり本気の造り込みが感じられるが、これまでのハーレーのイメージとはかけ離れているのも確か。リリースされた時に聞こえてくるのは、喝采か、それとも戸惑いの声か……。
Vツインエンジンにハーレーの伝統が感じられる以外は、全くの新機軸であるパンアメリカ。1250ccの排気量で145馬力以上を発揮する高出力ぶりも、らしくない
新生ハーレーのラインナップには、実はもうひとつ「ブロンクス」と名付けられたロードスポーツモデルも用意されていた。パンアメリカと同系のVツインエンジンをスポーティな車体に搭載し、「街中からワインディングロードを軽快に走る」ことがコンセプトだ。
欧州では「ストリートファイター」、日本では「ネイキッド」と言われるジャンルにあてはまるが、日欧各メーカーの意欲作がしのぎを削る激戦区だ。ハーレーも過去に傘下のビューエルで経験のあるジャンルではあるが、ここは慎重になったか、2021年モデルではブロンクスの新規投入は見送られるようだ。
2019年後半の発売がアナウンスされていたブロンクスは、2021年の投入も見送られる模様。こちらの排気量は975ccで117馬力以上と発表されていた
ハーレーブランドのスポーツモデルでは、1994年のVR1000が存在。スーパーバイクレースのホモロゲ―ション獲得のために公道仕様も発売されたが成功には至らず。これも踏まえての見送りか?
電動ハーレーが日本でも発売決定。これぞ多角化計画の急先鋒だ!
ブロンクスの投入見送りによって、ハーレー唯一のスポーツモデルになりそうなのが電動バイク「ライブワイヤー」だ。このモデル、0-100km/h加速が約3秒と怒濤の加速力! 電動ならではのパフォーマンスとクラッチ操作不要のイージーさは、いかにも次世代バイクといった仕上がりだ。
航続距離は235km(シティモード)と決して長くはないが、間違いなくクリーンなイメージを訴求できる。バイク電動化の先手を打つことで、ブランドの魅力を高められるとハーレーは見ているのだ。
2014年のプロトタイプ発表から5年の歳月を経て2019年にアメリカと欧州で発売された世界初の量産電動スポーツバイク「ライブワイヤー」。日本でも349万3600円で予約販売される
2018年にハーレーが発表した「More Roads to Harley-Davidson」は、2022年までを見据えた経営計画だ。その中に盛り込まれた将来モデルの中でもっとも早くリリースされるのがライブワイヤーということになる。
新機軸の第1弾だからこそ社会的インパクトや独自性が必要との考えから、電動モデルが選ばれた。バイクのメジャーブランドでは、オンロードスポーツのEVはまだ発売されていない。ここで1番乗りを果たすことで、ハーレーのイメージアップに結び付ける狙いがあるだろう。
それだけでなく、ライダー歴が浅い人ほどライブワイヤーに関心が高いという調査結果もあり、新規顧客開拓にも期待をかけたモデルとなっている。
日本仕様は国内で普及している急速充電規格・CHAdeMOチャデモに対応しており、街中やSA/PA、道の駅など充電が可能。約40分で80%までチャージできる
ライバルはBMW? 米欧2大ブランドの競争が激しさを増す
オフロードモデル、そして電動オンロードモデルと、新たな2機種が出揃いそうな2021年のハーレー。ほぼ同時に新しい領域にチャレンジする背景には、販売台数減少という厳しい現実がある。
2008年から2018年にかけて、世界での販売台数3割減という苦境に立たされているのだ。日本でも2019年度の販売台数は8747台と、最盛期の6割弱まで落ち込んでおいる。グローバル市場全体を見据えながら、回復に向けた起爆剤が必要な状況だ。
2021年に新規投入するパンアメリカは、大排気量オフロードモデル。世界的に販売好調なジャンルである一方で、BMWのGSシリーズが圧倒的な人気を誇っている。近年、BMWはGSシリーズの成功を足がかりに販売台数を伸ばし続けており、ハーレーとしてはこれを牽制したいのだろう。
世界規模で見ればハーレーの販売台数は約21万台、BMWは約17万台とまだ開きはあるものの、勢いはBMWにある。うかうかしていられないハーレーとしては、BMWが強いジャンルにくさびを打ち込んでおきたいのだ。
BMWのR1250GS。大排気量オフロードモデルで最も支持されており、セールスでも圧倒的な人気誇る。パンアメリカはほぼ同じ排気量としており、ライバル視しているのが分かる
かつてBMWは大排気量ツーリングモデルが主要ラインナップを占め、“おじさんバイク”というイメージが強かった。それがこの10年ですっかり様変わりしたのは、積極的な多角化の成果だ。
2009年、日本メーカーにぶつけるように1000ccスーパースポーツモデルS1000RRをリリースすると、以後も並列6気筒エンジン搭載の高級モデルや、逆に身近な310cc中型モデルなど、貪欲に拡大路線を突き進んできた。2020年にはR18というクルーザーをデビューさせ、巨人ハーレーにガチンコ勝負を挑んでいる。
2020年にBMWがリリースしたクルーザーモデルのR18。ハーレーのビッグツインモデルと同等の1802ccの排気量でエンジン型式も同じ空冷OHV方式を採用している
ハーレーは長らくクルーザーといういちジャンルに依存したことで、おじさん指数を高め販売台数の停滞を招いてしまった。同じような状況にあったBMWは、多角化によって伸び悩みを打破した。
ハーレーも2匹目のドジョウを狙うがごとく、オフロード、そして電動化へのジャンル拡大に活路を見出そうとしている。濃厚なファンを多いハーレーのこの戦略が吉と出るか、凶と出るか、注目したい。
ハーレーオーナーズクラブのツーリングイメージ。写真は欧州のものだが日本でもよく見る風景だ。伝統を守りつつ新たなハーレー像も構築し、浸透させれられるか
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みんなのコメント
ハーレーは結構壊れるから、街乗りはOKだけど人里離れた場所へ行くのは覚悟がいる。
そんなメーカーのアドベンチャーだから、熟成されるまでは様子見が必要かと。
オフロードバイクなら軽さが命。
現行ハーレーのエンジン流用ならオンロードアドベンチャーバイク。