現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「ミスタースカイラインの素顔」天才ドライバー『長谷見昌弘』の生き様

ここから本文です

「ミスタースカイラインの素顔」天才ドライバー『長谷見昌弘』の生き様

掲載 更新 46
「ミスタースカイラインの素顔」天才ドライバー『長谷見昌弘』の生き様

74歳になった現在もモータースポーツ現役!

長谷見昌弘は一度も「練習」をしたことがない!?

「ミスタースカイラインの素顔」天才ドライバー『長谷見昌弘』の生き様

2輪から4輪に転向し、フォーミュラ、スーパーシルエット、Cカー等あらゆるカテゴリーで輝かしい戦績を残してきた、国内屈指の天才ドライバー“長谷見昌弘”。日産モータースポーツ界のレジェンドと呼ばれる男の生き様に迫る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―どんな少年でしたか?

あまり大きな声じゃ言えないけど、勉強しないでバイクばっかり乗っていましたよ(笑)。

僕の実家は、青梅の織物業だったんです。商売の都合もあって、家には自動車とバイクが必ず何台かあったんですよ。自動車は、ずいぶん小さい時から乗せてくれました。子供なんで脚が届かないから、親父がペダルを踏んで僕がハンドルを持ってね。

今じゃ信じられないでしょうが、中学校の時には自動車部があったんですよ。

ある人がクルマを寄付してくれて「自動車部を作ったら?」ってね。それで校庭に白線引いて、先生が教えてくれました。クルマはダットサンの小さいトラックだったかな。今じゃ、クルマで校庭走ったら大騒ぎになりますよ。良い時代でしたね。

―モータースポーツとの出会いは?

僕の地元に、青梅ファントムクラブという2輪のツーリング+レースをやろうというクラブができました。まだ鈴鹿も富士も無い時代、僕の兄貴がそこに入ってね。兄貴はレースはやらなかったけど、その仲間がレースに出る時にはついて行って見ていたんですよ。

当時はサーキットなんか無いから、米軍基地とかでやってましたね。横田基地とか所沢のジョンソン基地(現・入間基地)、青森の三沢、九州の雁ノ巣とかね。あと、宇都宮に旧日本軍の飛行場跡があった。凄い荒れた路面だったけど、そこでもレースやったなぁ。

まだ日本にモータースポーツって言葉すらなかった時代。とにかく、みんなで集まってやろうとね。僕は中学生だったから自分は乗らなかった。でも、眺めているうちに「アレだったら俺の方が速く走れるわ」って。で、はじめてみたわけ(笑)。

それで、やってみたら勝ちまくった。最初は自分のバイクだったけど、半年後には東京発動機からワークスマシンを借りて全日本選手権に出場。いきなり出て勝てたから、それからお金は一切かからなかったですね。

僕のモータースポーツの入り方は、とにかく見て、「あれだったらできるわ」っていうのがあります。2輪も4輪もそう。鈴鹿の第1回ロードレースも見て、「あれならできる」と思った。「あっ、あれなら俺の方が速いな」って、意外と簡単にモータースポーツの世界に入ったんですよね。

―日産レーシングとの出会いとは?

僕は16歳からバイクのレースをやっていたんですが、日産が第3回日本グランプリに向けてレースドライバーを探していた。そのオーディションが、鈴鹿サーキットであったんです。それこそ、ロードレースからモトクロスから4輪の人たちも大勢受けにきていた。

オーディションは2回あったけど、僕だけ1回で受かっちゃって。他の人はみんな2回やったのに。その時に受かったのは僕と黒澤(元治)さん、津々見(友彦)さん、九州の髙武富久美(こうたけふくみ)、それと都平健二が同期。それで、19歳の時に日産と契約しました。鈴木誠一さんがリーダー的存在の大森ワークスでしたね。

あの当時、日産には追浜ワークスもあって、同じ時期に田中健次郎さん、北野元さん、高橋国光さんが追浜ワークスのドライバーとして契約していたんです。追浜と大森のふたつのワークスがあって、大森は通称:二軍。次代のドライバーを集めて育てるという感じだった。僕は大森と契約したんです。

―オーディションの時の話をもう少し詳しく教えて下さい

先ほどもお話したように日産のドライバーオーディションに1発合格したわけですが、それにはちょっとした秘密があるんです。実を言うと僕はオーディションの前からフェアレディで鈴鹿サーキットをガンガン走っていたんですよ。

というのも、僕はホンダの2輪チームにいたので、あの頃は勝手に鈴鹿サーキットをいくらでも走れた。加えて、田中健次郎さんがホンダの2輪チームのリーダーで先に追浜ワークスと契約していたでしょ、それで日産からレース仕様のフェアレディを田中さんが借りてきて、鈴鹿サーキットを随分と走り込んでいたんです(笑)。

とはいえ、実際に走った感想も「まぁ、4輪っていうのは簡単なもんなんだな」ってところ。タイヤがふたつ増えただけだし、なんたって当時の4輪のレベルは凄い低かったですから。それに比べて、2輪は高橋国光さんが世界選手権に出るなど、凄くレベルは高かったんですよ。

―何か特別な練習とかしたのか?

当時は、4輪のドライビングテクニックなんて無の状態。ヒール&トゥなんてみんな知らなかった。パワステも無かったし、タイヤも違うし、ハンドルの回し方も今とは違う。勇気のあるヤツが速い時代だったのかな。ハコスカのドリフトだって自然発生的に生まれたテクニックだったしね。スカイラインにしてもフェアレディにしてもオーバーステアだから。

僕ね、今の人が聞いたらバカにされちゃうかもしれないけど、これまで40~50年ほどモータースポーツをやってきて、練習とかトレーニングは1回もしたことないんです。日産ワークス時代もそうだった。練習とかトレーニングは嫌いなんです。だって順位がつかないもん(キッパリ)。

今でもバイクのレースに出てるけど、練習ナシで即本番。モータースポーツって楽しいですよ。練習とかトレーニングって苦じゃないですか。そういうのが無いから。でも、ドライバーに聞かれるとマズイよね(笑)。だから最近はあまり言わないけど。

モータースポーツといえば、福島県の二本松にあるエビスサーキットを使ってラリー車の開発を15年くらいやって、本当に楽しかった。できればサファリラリーとかRACに出たかったけど、国内のレースがあったから行けなかった。あっ、パリダカやモンゴルのラリーレイドには出ましたよ。

パリダカだと5~6時間、全く知らないコースを全開できるじゃないですか。こんな楽しいことはない。しかも15日間も走れるんだけど、ゴールの3日前ぐらいになると「あー、あと3日か」って残念な気持ちになっちゃう。後もう1週間、走れないかなって思うんです。

―疲れないんですか?

僕はね。走っている時はほとんど力を入れない。ラリーのテストでも1週間、それも1日中走っても手にマメを作ったことがないんです。バイクでもクルマでも、とにかく柔らかくハンドル持って、柔らかく走るんです。だからトレーニングもいらない。

世の中には、そういう人間もいるということを知っておいて欲しいな。でもさ、星野も高橋国光さんもトレーニングをやったことないんじゃないかな。

昔のF1とかフォーミュラって、シートベルトが無いんですよ。だから自分に合ったシートを造るんです。自分なりに1時間でも2時間でも走って疲れないシートを工夫して造る。疲れない姿勢と、それを維持するシートを造るんです。トレーニングセンター行ってどうのこうのじゃないんですよ。それを見出せば年を取ってもやれるんです。

―思い出のマシンは?

やっぱり、2ドアハードトップのハコスカGT-Rかな。クルマとしてのバランスが良かったですよ。

その前の4ドアセダンのGT-Rはフレーム剛性悪いし、超オーバーステアだった。横にばっかり流れて前に進まないんですよ。それがハードトップになってショートホイールベース化されてフレーム剛性も良くなって。だから、横になっても楽しかったですね。あれは傑作ですよ。

―伝説のスーパーシルエットについて

スーパーシルエット(グループ5)は最初、僕がレースやろうということで計画したんですよ。最初は、追浜でバイオレットなどに使っていた570psのエンジンを借り受けてやる予定だったんです。

日産プリンスの宣伝部も乗り気で、スポンサーしてくれることになっていた。でも、それだけでは資金が足りなかったのでNPDC(ニッサン・プリンス・ディーラーズ・クラブ)というクラブを作って、全国のお店でカンパを募ったんです。

それで、体制もできていよいよ正式に日産自動車の広報に許可を取りに行った。そうしたら、スカイラインだけでなく、シルビアやブルーバードもやらなくてはダメだという話になりましてね。それで3台体制になったってわけ。

クルマはねぇ、アンダーは出る、オーバーは出るで、あんなエアロになった。ストレートは凄く速かった。

それとお客さんはスカイラインがサーキットに帰ってくるのを待ってたんですよね。筑波でお披露目して、次に富士で走った。スタートして1周目でトップになって最終コーナーからストレートに帰ってきたら、スタンドのお客さんが総立ちになってました。

僕はコクピットからそれを見て本当に感動しました。お客さんが総立ちになるなんてレースはこれまで無かった。それだけスカイラインを待ってたんですね。

―駆動方式について

僕は世界で1番FFが嫌いなドライバー。アンダーステアで意思通りに動かない。昔のチェリーもLSDは入っていたけど、効かせ具合が難しかった。強いとアンダーだし、弱いと空転しちゃうしね。

4WDも基本的にアンダーだから嫌でした。やっぱり、クルマはFRかミドシップに限ります。だってF1はミッドシップでしょ。あれが最高ですよ。

グループAは4WD。GTはFR。JTCC(グループAの後に行なわれたツーリングカーレースで、プリメーラやサニーなどFFセダンで行なわれたレースシリーズ)はFF。

プリメーラも最後の頃は改造がエスカレートして、一番前にミッションがあって、そしてエンジン、ドライバーの順番。そんなレイアウトのFFは世の中には存在しないでしょ。けれど、あそこまでやると乗りやすくなるし、速かったですよ。でも世の中にないものでやってもねぇ…。操るという意味ではやっぱりFRが楽しいですよ。今でもね。

●取材協力:ハセミモータースポーツ 神奈川県愛甲郡愛川町中津6758 2F TEL:046-286-3801

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

マツダ新型「CX-5」まもなく登場!? 独自「ハイブリッド」&ダイナミックデザイン採用か? デビュー7年目の大進化予想CGがスゴイ
マツダ新型「CX-5」まもなく登場!? 独自「ハイブリッド」&ダイナミックデザイン採用か? デビュー7年目の大進化予想CGがスゴイ
くるまのニュース
ロゴを刷新した新生ジャガー、デザインビジョンコンセプト発表へ…12月2日
ロゴを刷新した新生ジャガー、デザインビジョンコンセプト発表へ…12月2日
レスポンス
【遂に価格決定】フォルクスワーゲン新型ティグアン 3世代目は7年ぶりのモデルチェンジ
【遂に価格決定】フォルクスワーゲン新型ティグアン 3世代目は7年ぶりのモデルチェンジ
AUTOCAR JAPAN
もうこんな[クルマ]作れないかも?? 買うなら今よ初代[コペン]!!
もうこんな[クルマ]作れないかも?? 買うなら今よ初代[コペン]!!
ベストカーWeb
レクサス「UX300h」に特別仕様車/「LBX」にエントリーグレードを設定! 511万円と420万円からというお値段以上の中身を紹介します
レクサス「UX300h」に特別仕様車/「LBX」にエントリーグレードを設定! 511万円と420万円からというお値段以上の中身を紹介します
Auto Messe Web
はみ出した看板! 酔って道路に座り込み! ヘタしたら打ち水も! そこかしこで見かける道路交通法違反
はみ出した看板! 酔って道路に座り込み! ヘタしたら打ち水も! そこかしこで見かける道路交通法違反
WEB CARTOP
欧州フォード、2027年末までにさらに4000人削減 EV工場も生産調整
欧州フォード、2027年末までにさらに4000人削減 EV工場も生産調整
日刊自動車新聞
【ヨーロッパ以外で初】本日から開催! アルピーヌA110RGTが「フォーラムエイト・ラリージャパン2024」参戦
【ヨーロッパ以外で初】本日から開催! アルピーヌA110RGTが「フォーラムエイト・ラリージャパン2024」参戦
AUTOCAR JAPAN
今年は飛びませんように……ラスベガスGP、マンホール/水道管の蓋を舗装&補強。昨年とばっちりのサインツも「安全が何よりの願い」
今年は飛びませんように……ラスベガスGP、マンホール/水道管の蓋を舗装&補強。昨年とばっちりのサインツも「安全が何よりの願い」
motorsport.com 日本版
EV好調のシトロエン『C3』新型、欧州カーオブザイヤー2025最終選考に
EV好調のシトロエン『C3』新型、欧州カーオブザイヤー2025最終選考に
レスポンス
ルノー新型「5 Eテック」は約450万円から 英国仕様が発表、春に納車開始へ レトロな最新EV
ルノー新型「5 Eテック」は約450万円から 英国仕様が発表、春に納車開始へ レトロな最新EV
AUTOCAR JAPAN
レクサス新型「“和製”スーパーカー」に反響多数! V8×超美麗ボディに「いつ登場する!?」「憧れる」の声も! 噂の「LF“R”!?」に期待高まる
レクサス新型「“和製”スーパーカー」に反響多数! V8×超美麗ボディに「いつ登場する!?」「憧れる」の声も! 噂の「LF“R”!?」に期待高まる
くるまのニュース
通学向けに特化した専用設計 ヤマハ新型「PAS ULU」登場 バイクメーカーならではの設計が
通学向けに特化した専用設計 ヤマハ新型「PAS ULU」登場 バイクメーカーならではの設計が
バイクのニュース
いまさら聞けない「水素自動車」って何? メリット/デメリット、課題とは 普及は実現可能か
いまさら聞けない「水素自動車」って何? メリット/デメリット、課題とは 普及は実現可能か
AUTOCAR JAPAN
10年の休眠を経てシングルナンバーで路上復帰! 激レアいすゞ「ベレットGT」のファストバックに34年…2年がかりでリフレッシュ!!
10年の休眠を経てシングルナンバーで路上復帰! 激レアいすゞ「ベレットGT」のファストバックに34年…2年がかりでリフレッシュ!!
Auto Messe Web
ペダル踏み間違い時加速抑制装置、国連基準化 2025年6月義務化へ 日本発の技術が世界標準に
ペダル踏み間違い時加速抑制装置、国連基準化 2025年6月義務化へ 日本発の技術が世界標準に
日刊自動車新聞
メルセデスベンツ、新型EVバス『eIntouro』発表…欧州初の無線更新可能なバスに
メルセデスベンツ、新型EVバス『eIntouro』発表…欧州初の無線更新可能なバスに
レスポンス
ホンダ新型「N-BOX」登場! 史上初「映える」凄い“オシャ内装”採用! めちゃ便利な「画期的な機能」も搭載! リラックスできて“テラス気分”な「軽バン」とは?
ホンダ新型「N-BOX」登場! 史上初「映える」凄い“オシャ内装”採用! めちゃ便利な「画期的な機能」も搭載! リラックスできて“テラス気分”な「軽バン」とは?
くるまのニュース

みんなのコメント

46件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

456.9948.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.02050.0万円

中古車を検索
スカイラインの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

456.9948.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.02050.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村