見た目の美しさが購入の決め手
2022年に今回の2台を並べると、先行したランチア・フルビア・スポルトが、アルファ・ロメオ・ジュニア Zのスタイリングに少なからず影響を与えていることが観察できる。特に緩やかに弧を描くルーフラインは、一致するように見える。
【画像】フルビア・スポルトとジュニア Z ザガートのSZとDB4 ベータ・クーペとジュリアGTAも 全98枚
フルビア・スポルトのフロントノーズはずんぐりしており、リアは鋭角でスピード感がある。ジュニア Zの場合は逆転し、フロントノーズが鋭角で、リアはカムテール状に短い。
ボディサイドは、フルビア・スポルトでは控えめにフロントフェンダーが広げられ、リア側は上部がフラット。清楚で、視覚的に幅が狭く感じられる。一方のジュニア Zはボンネットもフェンダーラインも筋肉質に膨らんでいる。スポーティな雰囲気が強い。
フロントエンドは両車ともに強い個性を放つが、ジュニア Zはディティールまで気が配られている。ヘッドライトはプレキシガラスで覆われ、それを仕切るようにアルファ・ロメオの盾形グリルが切られている。左側には通気用のスリットが並ぶ。
フロントワイパーを隠すように、ボンネット後端が立ち上がっている。フロントバンパーのカタチも凝っている。オーナーのチャールズ・クック氏は、見た目の美しさが購入の決め手だったと話すが、納得できる理由だ。
滑らかなボディのおかげで空力特性には優れ、アルファ・ロメオ・スパイダーやジュリアより僅かに走行性能は優れていた。とはいえ差は小さく、当時からスタイリングを買うようなモデルといえた。
インテリアはランチアの方がワンランク上
他方、ティム・ヒース氏はフルビア・スポルト 1600を8年間維持してきた。「妻はスタイリングが好きだと話します。別に所有するフルビア・ラリー1.6 HFを補完する、重要な1台でもあります。メカニズムは同じなので慣れていますしね」
ヒースは地金まで露出させた本格的なレストアを、2007年に職人へ頼んでいる。ホイールアーチのインナー側とアウター側を溶接し、デイトナ風のプレキシガラス・カバーをヘットライトに被せるなど、各部へ手も加えたという。
「速くて静かで、スムーズに走ります。欧州大陸を巡る長距離旅行では、燃費も伸びますよ」。ヒースが満足気に話す。
クックがジュニア Zのオーナーになったのは4年前。「美しいコーチビルド・ボディの限定生産モデルですが、維持や走らせるのに大金は必要ありません」。と説明する。
オリジナルは1600 ジュニア Zだったが、以前のイタリア人オーナーが1750エンジンへ載せ替えていたそうだ。「1.6Lより少しパワフルです。別に所有している、クーペのスプリント・スペチアーレとの違いは大きいですね」
クックは身長が180cm以上ある。ドライビング・ポジションには不満を持っている。
インテリアは、一見すると似た雰囲気で装備も充実している。丁寧に見比べると、フルビア・スポルト 1600の方が仕立てはワンランク上にある。
内側のドアノブは動きが滑らかで、ウッドパネルにヴェリア社のメーターがふんだんに並ぶ。サポート性に優れたスポーツシートが2脚据えられ、長距離ドライブを最後まで楽しめそうだ。
精巧な時計のように回るV型4気筒
ダッシュボードには、電動で浮くリアハッチのボタンがある。夏場には風を流せるが、知らない隣のドライバーが半開きだと教えてくれる時もあるらしい。
ジュニア Zの内装は、フルビア・スポルト 1600に似ている。基本的な構造やドアハンドルなどを共有するためだ。上品に仕立てられているが、ベーシックでもある。
サイドウインドウは手動。ダッシュボードのカウルはフロントグリルに呼応したカタチだが、全体的に作りが甘い。着座位置は低く、足を伸ばす格好になる。シフトレバーがほぼ水平に突き出ている。ランチアの方が居心地はいい。
エンジンを目覚めさせると、フルビア・スポルト 1600のV型4気筒が精巧な時計のように滑らかに回る。4000rpmから5000rpmという高回転域の常用もいとわない。1速が横に出た、ドッグレッグパターンのシフトレバーも軽快だ。
防音処理が効いていて、余計なノイズは聞こえてこない。心地良い吸気ノイズも消してしまう。リアハッチを浮かせれば、ザラついた排気音がガラスに反射して響く。
リア・サスペンションは、リジットアクスルにリーフスプリングという簡素な仕様。スポルトという名とは裏腹に、減衰力特性は快適志向にある。フルビア・ラリー1.6 HFと同じエンジンでも、ダイナミックさは程々。グランドツアラー寄りにある。
カーブを攻めても、ボディロールは抑えられている。ロードホールディング性は素晴らしい。フロントに4ポッド、リアに2ポッドのキャリパーを備えるブレーキが、強力に速度を熱へ変換する。パッケージングの完成度は高い。
クラシックカーとして魅力のスタイリング
ジュニア Zはクラシカルなスポーツカー・ライク。低速域では若干刺激に欠けるが、ペダルを踏み込むとツインカム・ユニットが活気を取り戻す。クックのクルマは1750ccへ載せ替えられているから、トルクも明確に太い。
特に中回転域でたくましく、防音処理が薄い車内へノイズが充満する。低いドライビングポジションも、気持ちを高ぶらせる。ステアリングホイールの重み付けは、完璧といっていい。
ドライビング体験は、フルビア・スポルト 1600よりエキサイティング。感覚的な訴求力が強い。より正確に操縦できるものの、乗り心地は多少劣る。前衛的な見た目とは一致しない。
ジュニア Zは、少し詰めが甘いスポーツカーのよう。フルビア・スポルト 1600は優れたドライバーズカーで、親しみやすさもある。個性は違っているものの、そこから得られる心象はさほど大きく違わないのが面白い。
この2台で焦点が向けられてきたのは、当初からそのスタイリングだった。誕生から半世紀以上が過ぎた今でも、それは変わらない。従来的で魅力的なボディをまとった兄弟モデルと、常に比較される立場にあった。
だとしても、風変わりなデザインはクラシックカーとしての強い魅力を醸成している。筆者としては、より特徴的なジュニア Zへ惹かれてしまう。
新車当時から、類まれなイタリア車として多くの視線を集めてきた2台。現在では、その存在感は100倍くらい強いように思う。
※この記事は2014年11月に執筆されたものです。
フルビア・スポルトとジュニア Z 2台のスペック
ランチア・フルビア・スポルト(1965~1973年/英国仕様)のスペック
英国価格:1850ポンド(1973年時)
販売台数:7102台(スポルト 1600を含む)
全長:4013mm
全幅:1575mm
全高:1270mm
最高速度:160-190km/h
0-97km/h加速:9.5~12.7秒
燃費:7.8-9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:914-962kg
パワートレイン:V型4気筒1216/1298/1584cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:88ps/600rpm-116ps/6200rpm
最大トルク:11.5kg-m/4500rpm-15.4kg-m/4500rpm
ギアボックス:4速/5速マニュアル
アルファ・ロメオ・ジュニア・ザガート(1969~1975年/欧州仕様)のスペック
英国価格:−
販売台数:1510台(1600 ジュニアZを含む)
全長:4000-4100mm
全幅:1549mm
全高:1280mm
最高速度:169-190km/h
0-97km/h加速:10.0~13.1秒
燃費:9.2-9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:948kg
パワートレイン:直列4気筒1290/1570cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:104ps/6000rpm/115ps/5000rpm
最大トルク:13.9kg-m/3200rpm/15.8kg-m/2800rpm
ギアボックス:5速マニュアル
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