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不運と嘆くことしかできないのか 2戦連続の悪夢 SUBARU BRZ GT300

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不運と嘆くことしかできないのか 2戦連続の悪夢 SUBARU BRZ GT300

2戦続けて悪夢が起きた。トップを快走しながらも、築いてきたアドバンテージを全く関係のないところで起きたアクシデントによって、すべてを捨てさせてしまうことになるセーフティカーの介入。ポールポジションからスタートしたSUBARU BRZ GT300は、5位フィニッシュとなってしまった。

渋谷真総監督は、前回のこともあるので、SCが導入された場合の対策として、ピットイン周回数の見直しをしている。ギャンブルでもあるそれは最初のスティントでの最低限の周回数、最大の周回数を2ピットにならないであろう、という安全率を捨てて算出し、対応しようというものだ。

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決勝レースは300kmの耐久レースだが、GT300はGT500が300km走行した時点でのゴールとなるため、距離や周回数が決まっていない。GT500は63周でレースを走っているがラップタイムから算出するとGT300は59周となる。だが、可能性としては前後1周程度の違いが起きることも想定されるわけだ。

だから、チームはレースがスタートし、展開が落ち着いたあたりで、マシンの燃費を確認し、想定周回数を計算する。この日は10周を終えたあたりで計算し、59周をGT300のレース距離とし、最低の周回数、最大の周回数を算出した。これは、スタートドライバーの山内英輝選手が最大の周回数を超えるとガス欠になり、ミニマムの周回数を走らないと次の井口卓人選手が59周走るだけの燃料が搭載できないことを意味する。

スーパーGTではレース距離の1/3を走行した時点でドライバー交代が可能になっているが、この日で言えばGT500クラスが21周を終えた時点でドライバー交代ができる。GT300は1、2周少ない19周目でドライバー交代が可能になるわけだ。

だがBRZ GT300は19周でピットインしては、算出した周回数には届かず、最後まで走り切れる燃料は搭載できずに2ピットになってしまう。そのため、セーフティカーが入りそうなケースだと分かっていてもBRZ GT300をピットに入れるわけにはいかなかった。(燃料タンクがGT3と同じ120Lタンクであればピットインが可能であった)

また、65号車が戦略勝ちでトップに来るか?という状況にも見えたが実はBRZ GT300は65号車をラップダウンさせており、1周遅れでのピットインをしていたので、65号車に逆転される心配はなかった。SCが導入された時点でBRZ GT300より前を走っているのは、4号車と56号車の2台だけであることは、ピットもドライバーも理解していた。そしてリザルトが示すように56号車と4号車の2台だけが60周し、3位以下はラップダウンになっている。これもSCによる影響であることは一目瞭然な結果と言えるだろう。

そしてリヤ2本交換でピットアウトし、その2台を追いかけることになるがその差は40秒以上あり、とても届く距離ではなかった。逆に3位でコースに戻れるはずであったが、18号車にピットのストップ時間で先行され5位でコース復帰になった。だが、アウトラップでタイヤが温まらないうちに、タイヤ無交換の52号車にも抜かれ6位となる。

これも給油時間(給油量)とタイヤ交換の時間の差によるものだが、18号車は「給油中にタイヤが回転した」というペナルティを受け、順位を落とすことになった。その結果井口選手は4号車、56号車は離れすぎで追撃できず、目の前の52号車と後続の25号車で3位争いをすることになったのだ。

レース終盤、井口選手は11号車に追突され、痛恨のスピン。3位争いから脱落し6位フィニッシュとなっている。しかし、追突した11号車には30秒のペナルティタイムが加算されたため、BRZ T300は5位フィニッシュということになった。

ちなみに、チームでは給油量を重量か時間で指示をする。例えば「35kg入れて」とか「23秒入れて」といった指示で「50L入れて」とは指示されない。重さはガソリンと水の比重が0.75で計算し、マシン重量への影響を考え、秒数はピットストップ時間に直結する。1秒間に給油できる量と33φのリストリクターのハンデを差し引いて秒数指示をしているのだ。

公式練習

今回はウエイトハンディが半減されるルールのため、BRZ GT300は51kgのハンディになる。さらにJAFマシンに課せられたBoP(性能調整)分の15kgもプラスされ66kgのウエイトを搭載してのレースとなっていた。前回のもてぎ表彰台のときより-18kgなので、マシンへの負担は減ってくる。

しかし、前回のレポートでも書いたが軽くなったから速くなるというほど簡単なものではなく、マシン重量に合わせたセットアップをしなければ、速くはならない。また物理を超える速さはあり得ないので、ドライバーがアドレナリンを出せるような物理の状態へマシンを仕上げるということが課題だった。

公式練習ではタイヤ選択もあり、ソフトとミディアムのどちらで予選、決勝を走るか決める必要がある。それは他チームのタイムを見ながらの判断になるが、周りを気にするまでもなくBRZ GT300は常に上位タイムを記録していたのだ。

これは持ち込んだダンロップタイヤの想定温度がハマった結果だろう。当然ソフトのほうがタイムは出るもののミディアムでもそれほど悪くなく、その差は0.3秒ほど。耐久性の信頼度からミディアムの選択ということになった。

一方、マシンのセットアップは苦労したようだ。ドライバーからは前回の鈴鹿とは全然ちがうマシンのようだ、とか、ブレーキのタッチが悪いため車両が安定しない、など厳しいコメントが出ていた。

渋谷真総監督はそうしたフィーリングの悪さを改善するために、ダンパー、スプリング、そしてキャンバー角の変更、ABSマップの切り替えで対応している。さらにデフのイニシャルトルクも変更し、フロントへかかる負荷を減らす方向での調整をしている。

これはマシンの走行状況を肉眼でもモニターでも確認できる違いがあった。コーナー入り口でマシンが左右に振られるシーンがそれだ。セットアップが決まりだすと、そのふらつきが消えている。もっともドライバーによれば、100%は改善できなかったので、足で慎重にブレーキ調整をして対応したと言っていた。

こうして公式練習では2番手のタイムを出しており、トップ11号車とは0秒025の僅差なので、セットアップは成功したと見ていいだろう。

予選トップ、トップでポール獲得

GT300の予選は30台のエントリーがあり、A、B組に別れ各組上位8台がQ2予選へ進出する。井口選手がQ1を担当し、A組トップタイムをマークした。このとき履いているタイヤはミディアムタイプである。つづくQ2予選は山内選手がポールを狙いに行く。そして見事狙い通りにポールポジションを獲得することに成功したのだ。

もてぎのコースはゴー&ストップが多く、切り返しをするコーナーはS字だけという評価をドライバーはする。コーナリングマシンのBRZが得意としない理由がそこにもあるわけで、ゴー&ストップで言えば、ブレーキに負担がかかり、ゴーの部分では大排気量のトルクがモノを言う。ちなみに前戦の鈴鹿ではブレーキ径を小径化したが、今回は通常サイズへ戻している。

BRZ GT300は2.0Lターボで、ターボの過給圧は500rpm刻みで決められ、一瞬のオーバーシュートでもレギュレーション違反のペナルティを取られる。そうしたエンジンデータは予選や決勝など走行のたびにマシンに車載されるCPUから書き出され、GTAが確認している。オーバーシュートはタイヤの空転でも起こるため、エンジン制御にはその分のマージンを見る必要があり、慎重さが要求されている部分でもあるのだ。

こうして、マシンのセットアップはうまくいき、BRZ GT300はポールポジションを獲得。決勝レースは優勝がもっとも近い場所にある位置からのスタートとなった。

決勝

スタートドライバーは山内選手だ。このところのスタートダッシュが冴えを見せ、安定して速いレース展開に持ち込んでいる。2番手は244号車の久保凛太郎選手でRC F GT3。3位はシリーズを争う11号車のGT-3だ。シリーズを争うのは7番手に56号車がいて、ランキングトップの65号車はQ1通過ならずの20番手からスタートになっていた。

こうしてみるとランキングトップマシンは、軽量化されたウエイトハンディに対するセットアップに苦しんだようで、またタイヤのマッチングでもダンロップユーザーだけがうまくチョイスできたような予選結果になっている。

こうした状況のだからこそ、山内選手はスタートダッシュを決め、逃げに逃げて、後続とのタイム差を広げ、最後まで逃げ切る作戦を実行していたわけだ。

そしてSCが入る直前まで山内選手は2位の360号車に5.694秒、3位の11号車に12秒434の大差をつけていた。

そして悪夢の再来。そのタイムはSCの介入により無残にも帳消しにされてしまったのだ。ただ、レース運営サイドからすれば、グラベルにつかまって止まってしまっているマシンがあるため、危険と判断するのは正しいだろうし、SCを入れることも正しい判断だと思う。

レースを観戦していた立場からすると、グラベルで止まったマシンはピットスタートであり、今回のレースでは順位争いには絡んでいない。さらに、ウオームアップでもマシンの不調があり、決勝レースで止まるのであれば、レースに影響のない場所にマシンを止めることができなかったのか?という疑問は残った。

またSC導入に関し、GTAでも欧州で採用しているFCY(フルコースイエロー)方式の導入を模索している。これは各マシンとピット、コントロールタワーが1秒の狂いもなく、同時に指定速度に車速が落とせる仕組みで、このFCYがあれば築いたタイムギャップを吐き出すことなく、リードを保ったまま危険除去作業が終わるまでリードタイムは維持される。そしてカウントダウンを無線でききながらドライバーは再スタートが切れるという仕組みだ。

現状ではFCYに関し、GTA会長の坂東正明氏からはまだテスト段階であり、オートポリス、岡山、菅生のコースでは手付かずの状態であり、また、もてぎでも今回のレースでテストが1度できただけだったため、実際の運用にはもう少し時間がかかると説明している。主に欧州と違う電波管理に問題があるようで、誰もが望むものの、簡単にはいかないということであった。また坂東会長は来年の運用に関し、オフィシャルの旗の補助的な運用とするのがベストと判断していると説明した。

したがって、今季の最終戦でもこうしたSC問題が三度起こる可能性が残っている。また最低の周回数を算出し、その周回数未満でのピットインは2ピットを意味することになり、今のところ、対策はないのだ。次戦は最終戦。シリーズチャンピオンも決定する大一番だ。ドライバーやチームにはトラブルが出た時、少しでもジェントルマンな対応をして欲しいことを切に願う。

SUBARU BRZ GT300はチームランキング6位。トップとは19ポイント差で、ライバルチーム次第ではあるが、一縷の望みは残っている。そしてドライバーズランキングは4位、5位、6位が同点で、トップと15ポイント差。こちらも相手次第になるが可能性がないわけではない。

今季、最終戦を全力で戦うBRZ GT300がどんなレースを展開し、どんなフィニッシュを見せてくれるのか期待したい。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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