昭和は遠くなりにけり・・・だが、以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は、「日産 パルサー」だ。
日産 パルサー(HN10型):昭和53年(1978年)5月発売
1970年(昭和45年)に登場したチェリーは、1974年チェリーFIIに進化した後、1978年には車名をパルサーに変えてフルモデルチェンジする。キャッチフレーズは「パルサー・ヨーロッパ」。これは「ヨーロッパの先駆車を凌駕する高い完成度を持つ日産の自信作(カタログコピー)」と言う意気込みをストレートに表現したものだ。
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ボディはバックウインドーの傾斜を強くして軽快感を高めた2BOXの4ドアセダンで、軽量化と高剛性のためハッチバックでなく独立したトランクルームを備えていた。トランク容量はSAEで263.1Lあり、バンパーレベルから開くリッドやトランクルームランプ(1.4L車)など、3BOXセダンと変わらない使い勝手の良さを謳っている。
エンジンはOHVの傑作と言われたA型で1.2Lと1.4Lが設定され、上級の1400TS及びTS-Gには総排気量1397ccに9.0の圧縮比と2バレルキャブレター単装で80psを発生するA14S型が搭載されている。TS(ツーリングスポーツ)とはいえSUツインキャブ仕様などスポーツエンジンの設定がなかったのは、日産の排出ガス対策であるNAPSで昭和53年排出ガス規制をクリアしたためだ。同レベルの出力で他車と走りの差別化を図るにはボディを軽量化してエンジンの負担を減らすしかない。そこでパルサーは最も重い1400TS-GでもMT車の車重を840kgに抑え、パワー/ウエイト レシオは10.5kg/psを達成している。
ミッションはコントロールロッド式4速MTが基本で、1.4L系には無段変速ATの日産スポーツマチックも用意された。さらに1400TS-Gに5速が直結(1.000)の専用クロスレシオ5速MTを設定したのは、日産レーシングスピリットの発露ともいえた。
シャシはチェリーから継承した前:ストラット/後:トレーリングアームだが、フロントサスに直進性を高めるネガティブスクラブを採用したり、ジオメトリーの最適化やバネ下重量の軽減などを図り、ロードホールディングを大きく向上させてきた。さらに1400TSには155SR13スチールラジアルを標準装備してコーナリング限界を高め、右前と左後輪/左前と右後輪に油圧系統を2つに分けるブレーキX配管で安全・確実な制動性能を実現するなど、基本性能を高めていた。
内装では2本スポークウッドステアリング(TS-G)や水平ゼロ指針の回転計と速度計がスポーツ心をあおった。シートはフロントがスライド量180mmのリクライニング、リアは幅1355mmのベンチで中央のマジックテーブルを出すとトランクスルーになるなど、使い勝手の良さと快適性確保にも十分な配慮が行き届いている。
排出ガス規制対応で元気をなくしたパルサーが本来の走りを取り戻したのは、セダン発表から4カ月後の9月。3ドアハッチバックとクーペが追加され、EGIで92psまでパワーアップしたA14E型エンジンを搭載した「XE」が新設定された。パワーウエイトレシオもセダンXEが9.18kg/psを達成、セダンより5kg重いハッチバックとクーペXEでも9.24kg/psまで向上して、スポーツ・ツーリング「パルサー・ヨーロッパ」の名にふさわしい動力性能を手に入れたのだった。
日産 パルサー 1400TS-G 主要諸元
●全長×全幅×全高:3940×1620×1360mm
●ホイールベース:2395mm
●重量:840kg
●エンジン型式・種類:A14S型・直4 OHV
●排気量:1397cc
●最高出力:80ps/6000rpm
●最大トルク:11.5kgm/3600rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:155SR13
●価格:103万8000円
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