かつては「4年で切り替え」が当たり前ながら、今は「10年選手」も存在!
日本車のモデルチェンジサイクルは1980年代まで4年が一般的だったが、現在では6年以上売り続けるモデルが急増。同じ車が改良を重ねて10年間現役を続けるケースも珍しくない。
2019年9月に欧州で新型が発表された日産 ジュークもまさにそんな例のひとつだ。一般的に、販売期間が長くなるほど車としての鮮度は落ち、売上も落ちるのが常。
しかし、登場から年月が経過した車でも、独自の価値を備えたモデルは少なくない。ここで紹介する5台は、まさにそんな実力派“超熟成車”といえるだろう。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、MITSUBISHI
【画像ギャラリー】約10年ぶりの刷新!! 新型ジューク 日本導入はあるか!?
日産ジューク/2010年発売
日産 ジューク/2019年8月販売台数:169台
欧州では2019年9月4日に、新型ジュークが発売された。ジュークは混雑した街中でも運転しやすいコンパクトSUVだから、日本で発表して当然だが、(新型は)今のところ国内販売の予定すら立てていないという。
ジュークのフルモデルチェンジは10年ぶりだから、新型になれば衝突安全性や安全装備も大幅に進化する。それなのに古いジュークを売り続ければ、日本のユーザーを危険にさらすことになるから、国内仕様も早急にフルモデルチェンジすべきだ。
現行ジュークを日産が売り続ける理由は、日本でジュークを買う人達を軽く見ているためだが、商品力も影響しているだろう。
安全装備などは低水準だが、外観や内装のデザインにおいては、現行型のジュークでも古さをほとんど感じない。デザインの似通ったライバル車が追従していないため、比較される機会もなく、新鮮味が下がりにくい。
運転感覚も、乗り心地には古さを感じるが、動力性能と走行安定性については大きな不満はない。
登録台数は1か月平均で250台前後だ。2010年に発売された直後の2800台に比べると、10%以下まで減ったが、何もケアをしていない割には需要が下がらない。
いい換えれば、新型ジュークを待っているユーザーは多いわけだ。
今はコンパクトSUVが流行しているため、進化した安全装備、プロパイロット、通信機能などを備えた新型ジュークを導入すれば、初代モデル以上の売れ行きを達成できる可能性がある。フルモデルチェンジが待たれている。
日産 フェアレディZ/2008年発売
日産 フェアレディZ/2019年8月販売台数:42台
フェアレディZの初代モデルは1969年に発売され、現行型で6代目。先代型の5代目で、初代デビュー当時と同様、2シーターモデルになって現行型もこれを踏襲している。
もともとフェアレディZは、初代モデルから北米で高い人気を得ていた。そのためにフルモデルチェンジの度にエンジン排気量を拡大して、現在はV型6気筒3.7Lを搭載。
ボディもワイドで全幅は1800mmを超えるが、ホイールベースは現行型になって先代型よりも100mm短く抑えた。Lサイズのスポーツカーでありながら、操舵感を機敏に仕上げている。
国産スポーツカーで、V型6気筒を搭載した2シーターモデルは複数あるが、GT-Rの価格は1000万円を超えて、NSXは2413万8889円に達する。
これに比べるとフェアレディZは、スポーティな装備を充実させた「バージョンS」でも500万円を下まわり、高性能スポーツカーとしては求めやすい。レクサス RCの直列4気筒2Lターボエンジン搭載車と比べても割安だ。
大排気量エンジンと機敏な運転感覚の組み合わせも含めて、フェアレディZはほかのスポーツカーとは違う独自の価値を備えている。従って発売から10年以上を経過した今でも、古さを感じさせない。
ダイハツ コペン/2014年発売
ダイハツ コペン/2019年8月販売台数:298台
コペンは軽自動車の2シータークーペだ。前輪駆動を採用したこともあり、スポーツカーの純度は高くない。
ちなみにホンダ S660(2015年発売)は、軽自動車でありながらエンジンをシートの後部に搭載するミッドシップスポーツカーで、カーブを曲がる性能を徹底的に向上させた。これに比べるとコペンの走りはマイルドだ。
その代わりコペンは、電動開閉式のハードトップを装着する。買い物に出かけたついでに、気軽にオープンドライブを楽しめる。不意に雨が降り始めた時でも、慌てずにソフトトップを閉められる。
また、コペンのボディは樹脂製だから「着せ替え」も可能だ。
「ローブ」、「セロ」、「エクスプレイ」という3種類のボディがあり、この内のローブとセロは、互いに外板を交換できる。購入後しばらく時間を経過したら、デザインの異なる新品の樹脂外板を装着して、気分を一新させるのも楽しい。
このようにコペンは、軽自動車のボディに電動開閉式ハードトップを組み合わせて、着せ替えまで可能にした。ほかのクルマとは違う魅力が備わり、今でも古さを感じない。
三菱 RVR/2010年発売
三菱 RVR/2019年8月販売台数:254台
三菱が用意するSUVのRVR、エクリプスクロス、アウトランダーは、すべて共通のプラットフォームを使う。ホイールベースの数値も2670mmですべて等しい。
それなのにRVRの全長は4365mmだから、アウトランダーよりも330mm短い。全長が4400mm以下のSUVでは、RVRのホイールベースは最長だ。
この効果により、RVRはホイールから前後方向に張り出したオーバーハングが短く、カーブを曲がる時でも慣性の悪影響を受けにくい。高重心のSUVながら、操舵感を比較的機敏に仕上げながら、走行安定性を悪化させていない。
ボディの前側を少し下げながら自然に内側へ回り込むスポーティな運転感覚と、後輪側の安定性を両立させた。地味なクルマだが、カーブを曲がる時の感覚に個性がある。
また、ボディサイズの割にホイールベースが長いため、空間効率も優れている。コンパクトSUVの中では、燃料タンクを前席の下に搭載するヴェゼルに次いで、後席の足元空間が広い。
ホンダ レジェンド/2014年発売
ホンダ レジェンド/2019年8月販売台数:41台
レジェンドの1か月の登録台数は50台前後だ。2万台以上を売るN-BOXに比べると、0.3%の販売規模にとどまる。
つまり、海外中心の車種だが、海外版のアキュラ RLXも、北米で1か月に150~200台しか売れていない。赤字に陥るのではないかと心配させる、グローバルな不人気車だ。
しかし「売れていないからダメな車」とはいえない。V型6気筒3.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドシステムは、モーターを前輪に1個、後輪には2個を配置した。
後輪はモーターのみで駆動され、カーブの曲がり具合や路面状況に応じて、左右に装着されたモーターの駆動力を変化させる。
マイナーチェンジでは改良も加えられ、Lサイズの高級セダンなのに、ミドルサイズカーのように軽快に走らせることが可能だ。峠道や雪道でも、ボディのサイズと重さを意識させない。乗り心地も改善され、ほかの高級セダンとは違う独自の価値を備える。
しかもベンチレーション機能を内蔵した本革シートなど、各種の装備を充実させて、価格は720万5000円だ。凝ったハイブリッドシステムや4WDのSH-AWDを考えると、割安といえるだろう。
ちなみにレクサス GS450hの場合は、V型6気筒3.5Lのハイブリッドを搭載した2WDモデルでも、700万円を大幅に超えてしまう。
レジェンドは高級セダンとしての華やかさと存在感が乏しく、絶望的に売れていないが、運転すると走りが意外に良いために感心させられる。車内が広く、後席の居住性も良好だ。
レジェンドに限らず、地味で売れない車の中には、他車とは違う価値や存在感を秘めた車種が埋もれているものだ。
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