小排気量エンジンで燃費を改善しつつ、過給によって出力を確保するダウンシング過給エンジンは、効果的な燃費改善技術として定着しています。しかし、そのキーとなる過給機にはターボチャージャーが多く採用されており、スーパーチャージャーの採用例は圧倒的に少ない状況。現在、国内ではスーパーチャージャー採用モデルは(従来の用途や名称で使っている、という意味では)ありません。
なぜスーパーチャージャーは採用されないのでしょうか。基本原理とターボチャージャーとの違いを整理し、復活の可能性について、考察していきます。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真/イラスト:日産、トヨタ、メルセデスベンツ、マツダ、スバル、三菱、VW、ボルボ、Mr.ソラン
【画像ギャラリー】7代目クラウンから、マツダ3まで!! スーパーチャージャーを積んだ貴重なクルマ
日本でもバブル期には多く採用されていた、スーパーチャージャー
スーパーチャージャーの歴史は古く、世界で初めて量産車で採用されたのは、1921年の「メルセデス6/25/40PSと10/40/65PS」です。その後はレース用マシンを中心に普及していきました。
日本では、1985年に7代目の「クラウン」で初めて採用。その後、バブル景気の勢いもあり、競うように多くのモデルで採用されました。1990年代半ば以降は、パワーを出すことを主目的としていた当時の過給機は総じて燃費が悪かったことと、バブル崩壊の影響もあって、スーパーチャージャーは、ターボチャージャーとともに、一時は市場から敬遠されることに。
ところが、2005年頃からアウディを中心とした欧州メーカー各社が、ダウンサイジング過給というコンセプトを推進したことで、「環境に悪い」との烙印を押された過給機が、環境(燃費)対応のキーテクノロジーとして復活することになります。しかし、この時過給機の中心となったのは、高速域で過給できるターボチャージャーであり、スーパーチャージャーは依然として敬遠されたままでした。
特に、日本においては、スーパーチャージャーの採用が広がることはなく、2012年に日産「ノート」に採用されましたが、それも2020年に生産を終了し、現在の採用例はありません。「マツダ3」と「CX-30」のSKYACTIV-Xでスーパーチャージャーと同様の構造が取り入れられていますが、マツダは「エアサプライ」と称している上、使用目的も異なっています。
1985年、有名なキャッチコピー「いつかはクラウン」で登場した7代目クラウン。国内乗用車初のスーパーチャージャーを搭載したことでも大きな注目を集めた
スーパーチャージャーの過給の仕組み
スーパーチャージャーは、クランクシャフトからベルトなどを介してコンプレッサーを回転させ、吸気を圧縮(過給)する機械駆動式過給機です。ルーツ式とリショルム式がありますが、現在ではルーツ式が主流です。
ルーツ式は、ドライブローター(クランクシャフトに連動して回転)とドリブンローターの一対のローターが、互いに逆回転しながら、吸入、圧縮、吐出を繰り返します。一方、リショルム式は、スクリュー式とも呼ばれ、互いに噛み合った一対の螺旋状ローターで構成され、ケースとローター間の空間が徐々に縮小され、吸入空気が圧縮、吐出されます。
日産のノートがかつて採用していたルーツ式スーパーチャージャーの作動原理。2組の2~4葉のローターを回転させて空気を圧縮(イラスト:筆者作成)
2012年に発売されたスーパーチャージャーエンジン搭載の日産ノート。久々のスーパーチャージャーエンジンとして注目を集めた
ターボチャージャーのほうがより合理的
ターボチャージャーは高速で高い過給圧が得られるものの、排気ガスのエネルギーが小さい低速域では過給圧が上がらず、また加速時にタービンの回転遅れによる過給遅れ(ターボラグ)があることが課題です。
一方のスーパーチャージャーは、エンジンで直接コンプレッサーを回すので、低速域から高い過給圧が得られ、過給遅れもありません。しかし、コンプレッサーを駆動するためにエンジンに余分の駆動損失が発生します。特に駆動損失が増大する高速回転領域で出力が低下することと、燃費の悪化が、最大の課題です。また、過給を高めると騒音が発生しやすいことや、コストが高いことなどもマイナス要因です。
本来廃棄される排気ガスの運動エネルギーの一部を回収して再利用するターボチャージャーに対して、スーパーチャージャーはシステム効率が劣ります。スーパーチャージャーが悪いというよりも、ターボチャージャーがより合理的なシステムであり、これが、スーパーチャージャーではなくターボチャージャーの採用が多い最大の原因でしょう。
ターボチャージャーは、排気エネルギーを回収して再利用するシステム。スーパーチャージャーは、エンジンで駆動するので駆動損失が発生する分、出力や燃費の面でターボチャージャーに及ばない(イラスト:筆者作成)
電動スーパーチャージャーが有効かどうかは、まだ不透明
電動化時代を迎え、欧州ではターボチャージャーのコンプレッサーをモーターで回す電動スーパーチャージャーが、メルセデスベンツやアウディなどで市販化されています。ターボチャージャーの低速域の過給不足やターボラグ、またスーパーチャージャーの駆動損失を解消することが狙いです。
画期的な技術ではありますが、やはり課題はあります。電力消費が大きいため、中高速域で多用するとバッテリーが電欠状態になることから、現時点では使用が低速域に限られることです。そのため、電動スーパーチャージャー単独でなく、低速域は電動スーパーチャージャー、中高速域ではターボチャージャーと、双方を組み合わせたシステムで使うのが一般的です。将来有望な技術かどうかは、まだ不透明です。
メルセデスベンツ 「AMG CLS53 4MATIC+」。3L直6エンジンに48Vマイルドハイブリッドと「ターボチャージャー+電動スーパーチャージャー」を組み合わせた贅沢な仕様
ターボチャージャーのコンプレッサーをモーターで回して過給する電動スーパーチャージャー。消費電力が大きく、現在はレスポンス向上や低速域の過給のために限定的に使用(イラスト:筆者作成)
スーパーチャージャーの復活の可能性は低い
燃費が重視される現在のクルマにとって、駆動損失によって必然的に燃費が悪化するスーパーチャージャーの復活の可能性は低いと言わざるを得ません。低速のトルクやレスポンスを改良したいなら、いっそのことモーターでエンジン出力をアシストするハイブリッドや、モーターで走るPHEV、バッテリーEVなら解決できるのでは、と少しばかり飛躍した結論になってしまいます。どちらにせよ、限定された使用以外にスーパーチャージャーの出番はなさそうですね。
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みんなのコメント
マーチスーパーターボ
低回転域をスーパーチャージャーで、高回転域をターボで過給はなかなかすごい
レビン&トレノGT-Z
2代続けてスーパーチャージャーを採用