ホンダの米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーターは、2016年3月17日、Acuraは、新型「NSX」北米仕様車の量産を4月下旬より開始し、順次ユーザーにデリバリーすることを発表した。
新型NSXのグローバル生産拠点としてオハイオ州メアリズビルに設立された「パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター(以下、PMC)」は、熟練した技術者が持つ職人の技と、革新的な先進生産技術との調和を実現しているという。
PMCは、新型NSXのような少量生産に最適な生産設備を備えており、およそ100名の従業員が、各工程で先進のロボット技術と協調しながら、最高レベルの品質と高いクラフトマンシップを実現している。また高度な生産技術を多数有しており、現在12件の特許を米国で申請している。
また、新型NSXの3.5L V6型ツインターボエンジンは、同オハイオ州にあるホンダのアンナエンジン工場にて、エキスパートの手により組まれる。
PMCは、ホンダにとってオハイオ州で3番目の四輪車生産工場であるとともに、新型NSXの開発を行なったホンダR&Dアメリカズのオハイオセンターからほど近い、メアリズビル四輪車工場に隣接する場所に立地している。
【PMCの主な特徴】
■ロボットによる精密溶接技術
新型NSXのスペースフレームは先進の結合技術を活用して生産される。
・アルミニウムや超高張力鋼板など複数の素材を組み合わせたスペースフレームは、業界初※1の試みとなる100%ロボット化されたミグ溶接により作られる。8台の溶接ロボットが860ヵ所のミグ溶接を施すことで正確な溶接を実現し、ボディの高い精度が保証される。
・360度回転式のボディ冶具の活用により、ロボット溶接のアームが最適にアクセスできるため、高精度な溶接を可能にした。
■工程内品質検証
高い技術を持った溶接のエキスパートが、部品一つひとつを溶接の各ステージで目視検査するとともに、寸法計測を行ない、スペースフレームの品質や精密性を検証。この作業は、パワートレーン、サスペンション、ボディパネルといった構成部品の正確な組み付けと、高い動的性能を確保する上でとても重要。
■クラフトマンシップ
手作業による高いクラフトマンシップが、高性能ロボットによる作業と調和。
・技術者が14時間かけて新型NSXのパワートレーン、サスペンション、電装部品、インテリア部品、エクステリアボディパネルを組み付け。先進のビジュアル作業標準システムにより、技術者は各工程で標準化された作業を忠実に実行することが可能。
・主要なボルトの取り付けはエキスパートによる手締めから始まり、その後ワイヤレス通信が可能なデジタルトルクレンチで締め付けることにより締付トルクを精密に管理。車両ごとにボルト一点一点のトルク実績を記録することができ、組立工程の品質を保証。
■全方位ガラス張りの品質検証センター
PMCの品質に対する取り組みは、アソシエイト一人ひとりの意識のみならず、工場の設計にも明確に表れている。工場の中央には品質検証センターが配置されており、工場内のあらゆる場所からガラス張りの壁を通して検証中の車両を見ることができる。
■エキスパートによるエンジン組み立て
新型NSXのエンジンはドライサンプ方式の3.5L V6型ツインターボエンジンで、アンナエンジン工場のエキスパートの手により、1基あたり6時間以上かけて組み立てられる。
・構成部品は一つひとつ技術者の手で組み付けられ、547ヵ所に及ぶボルトが手作業により極めて正確なトルクで締め付けられる。
・正確にバランス取りされた新型NSXのエンジンは、ベンチテストを実施し、150マイルの走行距離に相当するところまで慣らし運転が行なわれた状態にすることで、すぐにサーキットでの走行が可能な状態でユーザーに納車される。
・エンジン組立工程は、最高レベルの品質とパフォーマンスを誇るホンダのレースエンジンの組み立てプログラムをベンチマークとしている。
■アブレーション鋳造を世界で初めて※2自動車に適用
新型NSXのスペースフレームでは、6ヵ所の接合部にアブレーション鋳造技術が自動車業界で初めて適用されている。これはサスペンションやパワートレーンの組付剛性や衝突構造における重要な要素になっており、アブレーション鋳造による接合部品は、新型NSXのエンジン組み立てを行なっているアンナエンジン工場で生産される。
■世界トップクラスの外観塗装仕上げ
プライマーと塗料が11層にも塗り重ねられた上に、さらに仕上げ処理が加わり、突出した美しい表面仕上がりを実現。
■ジルコニウムによる前処理を採用したスペースフレーム
スペースフレームは、錆止めプライマーの塗布前に、ジルコニウムを使用したエッチング処理を行なう。ジルコニウムの使用は、塗装工程で排出される廃棄物の削減にも貢献。
■360度回転式の冶具を用いたシーラー塗布
スペースフレームが360度回転式の冶具に投入されて、上昇・回転することによりシーラー塗布がより精密になるとともに、技術者の作業環境が向上。さらに、この冶具はフレームを一方向からのみで保持することができ、フレームの投入や取り出しを効率的に行なうことが可能。これは現在特許を申請中の技術となる。
■動的性能を徹底的に確認
ホンダの幅広いレースエンジニアリングのノウハウを用いて、新型NSXは出荷前に動的性能の厳密な確認プロセスが実施される。ホイールのアライメント調整作業は45分間をかけて行なわれ、他にもタイヤ荷重の計測および最低地上高の確認や、四輪すべてのブレーキパフォーマンスの精密な測定など、さまざまな観点から徹底的に動的性能の確認が行われるという。
※1、※2 ホンダ調べ
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