「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、キア モーニングだ。
キア モーニング(2011年:日本未導入)
最新の韓国車を現地で試乗する企画、今回はキア モーニングに試乗してみた。今年(編集部註:2011年)の初めにフルモデルチェンジされたキアのコンパクトカー、「モーニング」は、ヨーロッパでは「ピカント」の名で発売され、すでに人気を呼んでいる。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
実車を初めて見て、そのスタイリッシュなデザインに驚かされた。従来モデルは、正直に言って2世代前の日本車ぐらいの雰囲気だったのに新型は最新のヨーロッパ車のように洗練され、階段を一気に駆け上がった感がある。
キアはアジア通貨危機の影響をもろにうけて、1998年にはヒュンダイの傘下に収まった。それゆえ個性を獲得する必要にせまられ、戦略として洗練されたデザインを標榜することになる。2006年には元アウディ/フォルクスワーゲンのピーター・シュレイヤーがデザイン ダイレクターとして召喚された。あの初代アウディ TTを生み出した手腕が、キアでふるわれることになった。したがって、最近のキア車がヨーロピアン テイストを持っていることは、なんら不思議ではないのである。
新型モーニングもエッジを効かせた抑揚のある面構成が特徴的で、日本のコンパクトカーよりも高級にみえる。フロントマスクは高い衝突安全性や歩行者保護性能を持たせながら、存在感のあるデザインとすることを目指したという。LEDデイタイムランニングランプも組み込まれたヘッドランプは、アメリカンフットボール用のヘルメットにインスピレーションを受けてデザインされたという。
試乗車のエンジンは直列3気筒の1Lで、ヒュンダイ/キアのコンパクトクラスの主要エンジンであり、デュアルCVVT(連続可変バルブタイミング)などハイテクも用いられている。またLPGとガソリンを両方使えるバイフューエルモデルを用意するなど、環境&エネルギー問題への対応も興味深い。
その走りっぷりだが、4速ATとの組み合わせは、走行性能としては並か、ちょっと古臭いかなと感じられた。アクセルを踏みこんで回せばそれなりに走るけれど、1500rpmぐらいまでのトルクが細いため、街中などでは少々もどかしさも感じる。
サスペンションは低速域ではスムーズに動き、なかなか乗り心地が良く感じるが、高速道路で段差を越えたりすると少しドタバタとする。走りが好きなユーザーには物足りないだろうが、それでもボディはそこそこしっかりしていたので、ヨーロッパ向けなどのセッティングだったら、もっと印象は良くなっていたと思える。
キアのクルマも、もう2~3年もすると「安くてデザインがいい」というだけではなく、性能でも評価されるようになるのではないだろうか? そんな予感に満ちている。このモーニングも日本にも導入されれば、ヴィッツやマーチの良きライバルになりそうだが、親会社のヒュンダイが日本市場から撤退してしまった状況下では、なかなか難しいだろう。
■キア モーニング 主要諸元
●全長×全幅×全高:3595×1595×1420mm
●ホイールベース:2385mm
●車両重量:900kg
●エンジン種類:直3 DOHC
●排気量:998cc
●最高出力:51kW<69ps>/6200rpm
●最大トルク:94Nm<9.6kgm>/3500rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:横置きFF
●EU総合燃費:23.8km/L(5速MT)
[ アルバム : キア モーニング はオリジナルサイトでご覧ください ]
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