2018年11月に、ハイラックス誕生50周年を記念して登場した特別仕様車「ブラック ラリー エディション」、この最新のハイラックスに試乗することができた。その「トラック」のイメージを覆す上質感に驚いた。(Motor Magazine 2019年3月号より)
タフネスを極めて生まれた上質さ
初代ハイラックスが1968年に誕生して50年……「ブラック ラリー エディション」は、その8代目をベースに海外で企画されたアニバーサリー仕様だ。
えっ! ナンバープレートに、アルファベットが入っているのはなぜ?【くるま問答】
フロントグリル、アルミホイールなどをブラックの塗装でコーディネイト。内装もブラック×メタリックの加飾が追加されている。「黒」だけでなく光り物系もコンビネーションさせることで、グレードがアップした印象だ。さらに前後フェンダーに追加されたオーバーフェンダーと18インチ大径タイヤが、たくましさをアピール。アジアパシフィックラリーなど、過酷な戦いを繰り広げてきた「マシン」のモチーフが、そこに生きている。
「ブラック ラリー エディション」はいわばメーカー純正のカスタマイズモデルだが、その本質はあくまでライトトラックだ。働くクルマとしての走破性や耐久性といったタフネスも重要なポイント。そのため今回の試乗も、メインステージは、さなげアドベンチャーフィールドを貸切にした「オフロード体験」だった。
まずは林間を縫うような未舗装のコースを走行。傾斜度25度という登りでは空しか見えないような急坂もある。クルマ1台がやっと通り抜けられるような狭い道で凸凹に体をゆすられながら、2.4L直4ディーゼルターボの豊かなトルクを生かしてそろそろと進んでいくと、なんとなく冒険しているような気分が味わえた。
ゴロゴロと大きな石が積み重なるガレ場も、クリープだけでスルスルと乗り越えてしまう。なにより足まわりのとんでもないストロークのゆとりと、ミシリとも言わない強靭なボディに驚かされる。
とは言ってもトラックだから、とタカを括っていたのだが、少なくとも一般道では、乗用車としてまったく不満はなかった。乗り心地が良く、静粛性も高く、ウルトラスムーズなパワーフィールとあいまって、ちょっとした上級サルーン感覚まで楽しめた。
開発者によればハイラックスというクルマは、世界中の危険に満ちたフィールドを駆け抜けて「生きて帰ってくる」ための性能を磨き抜いているのだそうだ。どんな過酷な道でも立ち往生しない、速さとか贅沢感とかとは違う次元での「高性能」の追求。それが、結果的に普通の日常でも味わえるゆとり感につながっているように思えるから、面白い。
試乗車の仕様は乗り出し500万円を超えてしまいそうだが、普段は十分快適で、時には圧倒的にタフで頼りになる。実はとてもお買い得!な1台かもしれない。(文:神原 久)
トヨタ ハイラックス Z “ブラック ラリー エディション” 主要諸元
●全長×全幅×全高=5320×1885×1800mm
●ホイールベース=3085mm
●車両重量=2090kg
●エンジン=直4DOHCディーゼルターボ
●排気量=2393cc
●最高出力=150ps/3400rpm
●最大トルク=400Nm/1600-2000rpm
●トランスミッション=6速AT
●駆動方式=4WD
●車両価格=394万7400円
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