■記憶に残る日本のV型6気筒エンジン
現在、高級車やスポーツカーを問わず、大排気量車に搭載されるV型6気筒エンジン。
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片バンク3気筒ずつのシリンダーをクランクシャフトに対してV字型に配置することで、エンジンの全長を直列6気筒よりも格段に短くできるという特徴があります。
そのため、FRであれば重量物を車体中心に近づけることで運動性能を向上させ、FFであれば横置きに6気筒エンジンの搭載が可能になるなど、多くのメリットがあります。
日本では1980年代からV型6気筒エンジンを搭載するクルマが一気に増えましたが、そのなかでも記憶に残るV型6気筒エンジン搭載車を5車種ピックアップして紹介します。
●日産「セドリック/グロリア」
国産乗用車として初めてV型6気筒エンジンが搭載されたのは、1983年に発売された6代目日産「セドリック」(グロリアとしては7代目)です。
先代までは直列6気筒エンジンを搭載し続けていたことから、一部ではV型6気筒エンジンへのスイッチを良く思わないユーザーも存在しました。
しかし、最高出力180馬力とこれまでにない出力を発揮する、3リッター「VG30E型」を搭載するトップグレード「ブロアム」は、高い人気を誇ります。
翌年にはトヨタ「クラウン」も3リッターエンジンを搭載しましたが、セドリック/グロリアは3リッターV型6気筒エンジンにターボチャージャーを装着し、230馬力を誇った「VG30ET型」搭載車を追加。動力性能ではクラウンを大きく引き離しました。
その後VG型エンジンはDOHC化やツインターボ化がおこなわれて、「シーマ」や「フェアレディZ」など多くのモデルに搭載され、現在も主力エンジンの「VQ型」へと進化することになります。
●ホンダ「レジェンド」
1985年に発売されたホンダ「レジェンド」は、同社初の高級車として、ホンダが培ってきたすべてのテクノロジーを投入して開発されました。
エンジンは静粛性と高性能の両立を目指した軽量コンパクトなV型6気筒を、英国のブリティッシュ・レイランド(BL)と共同開発。
V型6気筒エンジンとして市販乗用車では世界初のハイドロリック・ラッシュ・アジャスター付SOHC4バルブ方式を採用し、最高出力165馬力の2.5リッター「C25A型」と145馬力の2リッター「C20A型」をラインナップしました。
ダイレクトなレスポンスと高性能を実現しながら、徹底したNVH(ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス)対策によって、高い静粛性も実現。
また、シャシではダブルウイッシュボーンのフロントサスペンションを採用し、コンパクトなV型6気筒エンジンを横置きとしたことでボンネットラインを低く抑え、スタイリッシュなフォルムと広い室内空間を両立しました。
1987年には美しさと気品を備えたスタイリングの2ドアハードトップを追加。専用設計された180馬力の2.7リッターV型6気筒SOHC「C27A型」エンジンを搭載し、圧倒的な存在感と風格を主張します。
また、1988年のマイナーチェンジでは、エンジンの運転状況に応じて排気の速度を制御し、ターボチャージャーの過給圧をコントロールする「ウイングターボ」を開発。2リッターモデルに搭載されて最高出力190馬力を達成し、ホンダらしい高性能な高級車の世界を築いていきました。
●トヨタ「カムリ プロミネント」
1986年のモデルチェンジで3代目となったトヨタ「カムリ」は、スタイルが不評で不人気車となってしまった2代目とは異なり、丸みを帯びたスタイルで「マークII」のような高級感を持つクルマに生まれ変わりました。
さらに1987年にはFFレイアウトであるカムリに、より高級感を持たせるために、トヨタ初のV型6気筒DOHCエンジンである、「1VZ-FE型」を搭載するグレード「カムリ プロミネント」を追加します。
最高出力140馬力を誇る2リッターV型6気筒で、直列DOHCエンジンを「ツインカム」と呼称していたことから、シリンダーヘッドが2個あるV型6気筒DOHCエンジンは「フォーカム」と呼ばれました。
加えて、プロミネントのみに4ドアハードトップが採用され、ハイソカーの要素を取り入れた豪華な内装と装備が採用されています。
このプロミネントの4ドアハードトップは、当時、北米で発足したばかりのプレミアムブランド、レクサスの「ES250」としても販売されました。
■世界最小のV型6気筒エンジンを搭載したモデルとは!?
●マツダ(ユーノス)「プレッソ」
1991年にマツダは、当時の販売チャネルだったユーノスから、コンパクトで特徴的なデザインの3ドアハッチバッククーペ、ユーノス「プレッソ」を発売。
バブル経済という背景もあり、コンパクトなモデルながら搭載されたエンジンは、当時世界最小の1.8リッターV型6気筒エンジンということで、大いに話題となります。
最高出力140馬力(マイナーチェンジ後のハイオク仕様は145馬力)を発揮し、高級感を演出するためのV型6気筒と位置づけられていました。
しかし、フロントが重くバランスが悪くなったことや燃費の悪さから、同じシャシに1.5リッター直列4気筒エンジンを搭載する姉妹車の、オートザム「AZ-3」のほうが好評となります。
その後、1993年にはプレッソに1.5リッター直列4気筒エンジン搭載車が追加され、同時にAZ-3に1.8リッターV型6気筒エンジン搭載車が追加されたことで、差別化を撤廃。
1998年に「ファミリア」のモデルチェンジがおこなわれた際に、2モデルともに生産が終了となりました。
海外には「Mazda MX-3」として輸出されて一定の評価を受けていましたが、国内での販売台数は少なく、技術的には凝っていたにも関わらず、悲運なクルマとなってしまいました。
●三菱「ミラージュ」
1991年に発売された4代目三菱「ミラージュ」は、「ランサー」とコンポーネンツを共有し、3ドアハッチバックと4ドアセダンのバリエーションで展開されました。
後に2ドアクーペの「ミラージュ アスティ」も追加されるなど、4ドアセダンのみだったランサーに対し幅広いニーズに対応。
1992年には、マツダ製よりもさらに小さく世界最小を塗り替えた、1.6リッターV型6気筒の「6A10型」エンジン搭載車を追加ラインナップ。
最高出力140馬力を発揮する6A10型エンジンを搭載したのは、4ドアセダンの「ROYAL」と「VIE LIMITED」で、ミラージュにジェントルでラグジュアリーな走りの質感をもたらしました。
しかし、同年に175馬力を誇る1.6リッター直列4気筒の「4G92型」エンジンを搭載する「サイボーグ」が登場したため、V型6気筒エンジン車の存在感は薄くなってしまいます。
そのため、1995年に登場した5代目では、最高出力135馬力の1.8リッターV型6気筒の「6A11型」エンジンにスイッチされ、よりラグジュアリーな要素が強められました。
※ ※ ※
現在も2.5リッター以上のエンジンはV型6気筒が主流ですが、直列6気筒エンジンの良さが見直されて、復活の兆しもあるようです。
ダウンサイジングターボエンジンの台頭で、6気筒エンジン自体は数を減らしている状況ですが、やはり多気筒エンジンならではのフィーリングには魅力があります。
効率を追い求めることは重要ですが、官能的な要素も残してもらいたいと願う人も多いのではないでしょうか。
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