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「KATANA Meeting 2022」で学んだ紳士であり続けるために必要な修行

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「KATANA Meeting 2022」で学んだ紳士であり続けるために必要な修行

来場者による記念撮影。東日本エリアでは山形県から「一般道を13時間かけて来ました!」西日本エリアでは宮崎県から「帰りは四国を旅しながら走ります!」など全国から駆けつけていた。

2022年9月11日、全国各地から1,100台以上のオートバイと、1,400名を超える二輪ユーザーが静岡県浜松市『はままつフルーツパーク時之栖』に集い、開催された『KATANA Meeting 2022』。今も高い人気を誇る名車、「KATANA」の魅力と、そのオートバイに惜しみない愛情を注ぐ人々の姿を見たことで、ジェントルマンである事の“辛さ”を再認識することになった。

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時代を受け入れることが何よりも大切

自動車評論会では「巨匠」とも評された徳大寺有恒氏(以下、徳さん)とともに、ある試乗会から帰る途中のことだった。すっかり日も落ち、東京方面へと向かう高速道路には赤いテールランプが連なっていた。

「ところでさ、ルーカスが初めて発見したものを知っているかい?」といきなりの質問であった。ちなみにルーカスとは140年以上にわたって世界中へ、電装品を中心に提供し続けてきたイギリスの自動車部品メーカーのこと。

徳さんは、このテの質問がけっこう好きであったが、一方で「ヘッドライトのバルブとかですかね」などといった、何のひねりもない回答などは期待していないのである。まさに禅問答のような質問に対して、こちらも必死で考えるが、結局は分からず答えに窮しているところに「それはね、“暗闇”なんだよ」と回答を、ちょっぴり得意げに披露するのである。英国車にとって必要不可欠とも言われたルーカスの電装品が壊れてしまうと、まだ街灯など満足に整備されていなかった時代では「いきなり暗闇がやってくるんだよ。」というのが正解である。

もちろん、その真偽のほどは分からないが、電装品を含めたパーツ類の信頼性が低い時代には、なにが起きても不思議ではない、と言うことの例え話として、徳さんらしく、なんとも機知に富んだ質問なのである。

実はこの話、ビンテージカーや旧車に乗ると言うことは、その車が生まれた時代背景をも一緒に背負うだけの覚悟が必要と言う説明にも繋がるのである。古いクルマを快適に走らせるためには、それなりにパーツの入手問題などもあったり、すでに生産されていないパーツや電装品を現在のパーツで代用するなど、考えなければならないことが多い。当然、オリジナルにこだわり過ぎれば、車を走らせて楽しむことが出来なくなるということだってある。古いクルマで快適に走るためにはそれなりの不都合を飲み込む覚悟や妥協をゆるす寛大さが、その陰に隠されているのだ。

そんなことを考えながら、3年ぶりに開催されることになった『KATANA Meeting 2022』の開催場所の静岡県浜松市へと向かった。途上では多くのKATANAに跨がったライダーたちが、そこかしこに見られ、会場に近づくほどその数は多くなっていった。残暑の厳しい時期、バイクに跨がるだけでもかなりきついだろうし、それだけでも十分に非日常的な経験を克服しているはずである。

旧車に乗ることは修行と覚悟せよ

待ちに待ったリアルミーティングに集まった車両の多くは1981年に衝撃的なデビューを飾った初代モデルを始めとした旧車。日本刀をモチーフにした先鋭的なデザインはいまだ古さを感じさせないとはいえ、古いものではすでに40年以上経過した立派な旧車なのである。それが全国から続々と集うのである。まさに圧巻というか、オーナーたちの思い入れがヒシヒシと伝わってくる光景であった。

何より嬉しく感じたのは、このイベントがメーカーである株式会社スズキ二輪が主催し、さらに革のジャケットにライディングジーンズ姿のスズキ株式会社の鈴木俊宏社長が、最新モデルのKATANAに跨がり来場、そして多くのライダーたちが待ち構えるステージに登壇したことである。こうした愛情あるメーカーのサポートが日本の車文化を支えてくれる大きな力になるのである。当然、古き愛車に跨がるライダーたちは、メーカーが関わることで「我々は見捨てられていないんだ」との意を強くするわけであり、結果的にメーカーへの信頼度も上がるのである。こうして来場者たちはここでしか購入できない物販品を求めたり、出展しているパーツメーカーのコーナーを覗いたりしながら終日楽しむのである。さらに天竜浜名湖鉄道には「KATANAラッピング列車(天竜二俣駅に展示)」が走っていたり、会場近くの「フルーツパーク」駅が、2024年まで『フルーツパーク KATANA』駅として改名されるなど、地元自治体や企業まで巻き込んで「聖地誕生」まで成し遂げているのである。

ここまで見れば、羨ましく感じ、古いバイクに乗ることが、なんとも素敵な風景に見えてきた。だが一方で、その陰には、どれほどの苦労があるのか、とにかく知りたくなった。少し日を置いて古い日本製バイクを愛する二人のオーナーの元を尋ねてみた。

一人は1999年式の「GSX1100S/SR KATANA」、もう一人74年式ホンダ・ドリームCB750(K4)と84年式CB750Fの2台を所有している。ここで驚いたのは見た目もメカニズも極上の部類に入ること。セル一発でエンジンが目覚めるところを目の当たりにすると感動すら覚えるのである。そしてどちらのオーナーも、「高校生の頃に買って貰えなかった、買えなかった夢を、今、叶えました」と、なんとも嬉しそうなのである。「パーツもまだなんとか入手可能だし、少々の部品なら製作も可能です」という。そして二人とも自宅にガレージを持ち、自分の手をオイルで汚しながら愛車の整備を行っている点に注目した。もちろん、メンテナンスや整備は専門ショップにすべて任せるという楽しみ方もあっていいし、まったく否定はしない。だが二人とも「古いクルマやバイクで出掛けると言うことは、現代のクルマでは考えられないようなトラブルに突然襲われること覚悟しなければいけない。おまけに「フルバイクは重いし取り回しも大変だし、なによりも簡単に曲がってくれないから、ライディングテクニックも必要だ」という。「最低限の知識や整備のスキル、そしてライディングテクニックがないと無事に帰宅できない可能性だってある」と続けた。

旧車に乗ってエレガントに走り、木漏れ日のテラスでリゾートランチを楽しむためには、それ相応な覚悟の上で乗り回さなければいけないことの証明でもあった。

徳さんはよく「ジェントルマンであり続けるには知識も振る舞いでもつねに修行を欠かすことは出来ない」というようなことを話されていた。男のカッコ良さは血がにじむほどの努力が必要だとも。なにごとも「おいしいとこ取り」は許されないし、すぐに底の浅さが露呈するのかもしれない。そして同時にある懸念事項が急激に頭をもたげてきた。昨今の異常とも思える旧車ブームと車両価格の高騰を見るに付け、色々な不安が次々に湧いてくるのである。

メーカーがイベントを主催し、鈴木俊宏社長自らが刀に跨がって登場したことは日本の車文化を熟成させる上で、大きな力にもなる。

9時の開場とともに、フルーツパークの広い駐車場はKATANAを中心にスズキのバイクで埋め尽くされていく。

タイヤメーカーやウエアメーカーも展示コーナーを設け、ライダーたちとの交流を図っていた。

天竜浜名湖鉄道「天竜二俣」駅でイベント開催中に停車していたKATANAの「ラッピング列車」。これまでも天竜浜名湖鉄道はアニメ「ゆるキャン△」のラッピング列車や、遠州鉄道やエヴァンゲリオンとコラボした「人類乗車計画」などの企画を成功させている。

GSX1100SのSRという国内仕様のタイプ。走行距離はわずかに5700kmであり、程度は極上ものである。オーナーの元には他に数台オートバイ、ロータス・エリーゼや初代サバンナRX-7、いすゞベレットGTを始めとした国産の名車がズラリと揃っていた。すべてがエンジン始動はセル一発であった。

2台のCBを所有するオーナーのメンテナンス工房の一部。使い込んだツールが整然と並べられていた

カラーリングやエンジン組み立てなどもすべて自分で行ったと言う74年式のホンダCB750K4。走行は3万4千キロほどだが見た目もエンジンの調子もまさに新車のごとし。

CB750Fは84年式で走行は2万8千キロ。重量が230キロ以上あり、取り回しや足つきでは苦労するという。

TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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