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キャデラック・カスティリアン・エステートワゴン 8.2L V8に5.9mのフルサイズ 前編

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キャデラック・カスティリアン・エステートワゴン 8.2L V8に5.9mのフルサイズ 前編

大きいことは美しいことだ

迫力のフロントグリルと、大胆なテールフィン。フルサイズ時代を謳歌していた往年のキャデラックは、正式にはステーションワゴンを生産しなかった。

【画像】これぞフルサイズ キャデラック・エステートワゴン リンカーン・コンチネンタルも 全61枚

ビュイックからオールズモービルまで、ゼネラルモーターズ(GM)が擁するブランドにはそれぞれ用意されていたが、キャデラックは例外。華やかなブランドイメージに、実用主義なワゴンボディは適さなかったのだろう。

オーナーのステータスを象徴する豪華さに、アメリカの自動車技術のすべてが注ぎ込まれた設計。スタイリングやドライブフィールが、期待を裏切ることはなかった。北米大陸での旅行を最も安楽にしてくれるクルマが、キャデラックだった。

巨大なボディには、1970年代には8.2Lという驚くほど大排気量のV型8気筒エンジンが搭載された。加速は太いトルクに任せ、トランスミッションは3速のみのオートマティック。乗り心地は枕のようにソフトで、操縦性も至って温和だ。

その時代のアメリカ車には、大きいことは美しいことだ、という言葉が通じた。1971年の10代目フリートウッドでは、全長が6mに迫るほど。

ひと回り小さい、といっても全長5.2mで排気量は5.7Lもあったが、欧州車に影響を受けたセビルも登場はしていた。だが、ドゥビルやカライスといった後輪駆動のフルサイズ・キャデラックは、迷うことなく巨大だった。

ステーションワゴンを選べなかった時代

その頃の典型的なオーナーは、ステーションワゴンが必要な時期を既に過ぎていた。家族旅行の荷物を詰め込んだり、子供を学校へ送り迎えするのではなく、キャリアでの成功を示す移動手段が必要だった。

キャディラックは、ゴルフバッグを詰め込んで、早朝にグリーンを目指すようなクルマだった。一線を退き、フロリダやパームスプリングスでの余生を楽しむクルマだった。大企業で長年の心労を乗り越えた自分への、ご褒美だったともいえる。

1970年から1973年にかけてキャデラックは好調で、多様なボディスタイルを提供していた。セダンにリムジン、クーペ、コンバーチブルまで幅広く選べたが、ステーションワゴンは選択肢に含まれなかった。

保守的ともいえたモデル展開は、まだ充分に機能していた。より巨大な荷室を望むなら、追加費用を用意して、特別なボディを製造するコーチビルダーを訪ねるしかなかった。

ただし、救急車や霊柩車、商用車など、キャデラックがステーションワゴンへコンバージョンされた例は少なくない。映画ゴーストバスターズにも、そんな1台が登場することは、読者もご存知だろう。決して、的はずれな希望ではなかったといえる。

今回ご紹介する、キャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴンもそんな1台だ。1976年の価格は3万ドル。ベースとなったフリートウッド 60スペシャル・ブロアムの、2倍近い資金が必要だった。

8.2Lの巨大なV8を載せたラストイヤー

基本のスタイリングは、デザイナーのビル・ミッチェル氏が手掛けた、1971年式からの派生。とてもバランスが良い。

フリートウッドは毎年のようにフェイスリフトが施されており、1976年仕様には角張ったバンパーにバーの細かいフロントグリル、四角いヘッドライトなどが与えられている。いかにもキャデラックらしいルックスだ。

後輪駆動シャシーのホイールベースは133インチ(3378mm)で、サスペンションは4輪ともにコイルスプリング。リアはリジッドアスクルながら、4リンクを採用している。ブレーキは、フロントにベンチレーテッド・ディスクが採用された。

ボディは巨大で、車内もゆったり。当時製造されていた量産車で、最も肘周りの空間が大きいといわれたほど。

1976年は、キャデラックが正式にコンバーチブルを生産した最後の年でもある。1977年に向けてダウンサイジングを図っており、500cu.in、8.2Lという巨大なV8エンジンを搭載した、最後のモデルイヤーにもなった。

この8.2Lエンジンは、1970年の前輪駆動2ドアモデル、エルドラドへ搭載されていたもの。だが、強化された排出ガス規制に対応するため、1975年にブランドの全モデルへ登用された。

当初グロス値で約400psを発揮していたものの、規制へ合わせた結果、ネット値で約190psへ絞られていた。豪華なシートに分厚いカーペットが敷かれたデレガンス仕様では、車重は2540kgにも及んだ。

1976年の製造台数は11台のみ

カスティリアンの多くも、デレガンス仕様がベース。ボディを手掛けたのは、ジェームズ・クリブス氏とジャック・パトリック氏が1975年に創業した、トラディショナル・コーチワークス社だ。

彼らは、カリフォルニア州のカーディーラー、ウィルシャー・キャデラック社の従業員だった。クリブスはマネージャーに就いており、高級なキャデラックの高額なスペシャルモデルに興味を抱くであろう、富裕なセレブとも繋がりを持っていた。

2人は、腕利きとして知られていたカスタムビルダーのジーン・ウィンフィールド氏を招聘。技術と才能を持つ、コーチビルド・チームを構成した。

トラディショナル・コーチワークス社は、キャデラックからの承認も得ていた。カリフォルニア以外でも、正規ディーラーを通じてカスティリアンのオーダーが可能だった点が興味深い。

さらに彼らは、独自のパンフレットを制作。ステーションワゴンの他にも、前輪駆動のエルドラドをベースにしたクーペ・デロイというモデルや、フリートウッドがベースのピックアップトラック、ミラージュもラインナップした。

ピックアップトラックの国なだけあって、エルカミーノ風ボディのミラージュは、合計で200台以上が製造されている。しかしカスティリアンは遥かに少なく、1975年に40台、1976年には11台しか作られていないという。

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

2件
  • これで車中泊をするといい
  • ターミネーター3に出てきて、屋根も剥がれ、ホイールキャップもぶっ飛ばした霊柩車を思い出した。あれはブラハムなのでこれより新しいけど、子供ながらに凄い動きするなぁと観てました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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