松竹梅にそれぞれ異なるモデルネーム
アメリカ車、特に黄金期とも言える1950~1960年代のそれが、あまり詳しくない人にとって取っつきにくい存在でもある理由のひとつに、車種名のややこしさが挙げられるのではないだろうか。トリムレベル――分かりやすく言えばグレード――によって車名が変わってしまう、というのがそれである。
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【画像17枚】地味だけどすこし派手な気もする1955年型150を見る!
例えばシボレーにしても、1958年型以降が全部インパラではないし、1957年以前がみなベルエアではない。インパラもベルエアもそれぞれその時々のラインナップでの最上位モデルであって、同じボディ、(ほぼ)同じ前後デザインを持ちながら、ビスケインやデルレイ、210や150、などといった異なるモデル名が、装備の豪華さの度合いに応じて与えられていたのである。しかも、何が最上位にあたるモデルなのかは、年を追うごとに変化してしまうのだから、ややこしい。
ここで採り上げている1955年型は、最廉価版が150(ワンフィフティ)、中級モデルが210(ツーテン)、一番上がベルエア、という3つのモデルから構成されていた。このうちベルエアは、1950年型から加わった2ドア・ハードトップの名称が、1953年型からモデル名に昇格したものである。また、210には2ドア・セダンをベースにした豪華版のデルレイというモデルも設けられていた。さらにワゴンにもそれぞれ独自のモデル名があるのだが、これは後述。
さて、1955年型はシボレーの歴史の中でも重要なモデルと言われる。イメージ的な面では、野暮ったさの残る実用車から、スタイリッシュで豪華なクルマへと、華麗に生まれ変わった点が大きい。ボディは車体構造を完全に見直し従来より全高が低くなり、前年のキャデラックなどに続いてラップアラウンド・ウィンドウも採用、テールフィンまでが控えめながらも採り入れられた。
ボディ形式は、2ドアと4ドアのセダンを全モデルに設定。うち、150には後席スペースを荷物置き場としたユーティリティセダン(定員3名)も存在する。そして210とベルエアには2ドア・ハードトップ(スポーツクーペ)が、そしてベルエアのみにコンバーチブルが、それぞれ用意されていた。
ステーションワゴンは150には2ドアのみ、210とベルエアには2ドアと4ドアが存在。その名称は、150と210の下級版ではハンディマン、210の上級版ではタウンズマン、そしてベルエアではボービルとなる。さらにベルエアには、傾斜したBピラーとリアエンド、そして低い屋根が特徴のスポーティな2ドア・ワゴンがノマドの名でラインナップされ、そのスタイリッシュなデザインは人気の的となった。
技術的な面では、シボレー初のV8 OHVエンジン導入が、1955年型における最大の変化だ。それまで、1930年代からV8をラインナップするフォードに対し、シボレーは直6のみで後れを取ってきたかたちだが、ここでV8をようやく採用したのである。後にスモールブロックと通称されるようになるこのエンジンだが、デビュー時点での排気量は265-cid(4.3L)で、最高出力は162hpを発揮した。パワーパックという名の強力版オプションもあり、4バレル・キャブレターの装着によって出力は180hp、デュアルエキゾーストがセットで装備される。さらにシーズン途中から195hpのスーパー・パワーパックも追加された。
直列6気筒OHVはシボレー伝統の通称ストーブボルトと呼ばれるエンジンだが、この年用意されていたのは235.5-cid(3.9L)の1種類で、最高出力123hpと136hpの2仕様が存在。トランスミッションは3速あるいは3速+オーバードライブのMTと、パワーグライドと呼ばれる2速ATがあり、これらが直6とV8のいずれにも組み合わされていた。直6エンジンは123hp仕様がMT用、136hp仕様がAT用となる。
同じセダンなら2ドアから4ドアへの改造も比較的容易!
1955年型シボレーは、名車として名高いトライファイブ・シェビー(1955-1957年型シボレー)の最初の年式ということもあり、プラモデル化の数は多い。ここでお目にかけているのは、AMT製ベルエア2ドア・セダンをベースに、4ドアへと改造しただけでなく、150(今までのところキット化はない)へとダウングレードを行った作品である。
AMTの1955年型ベルエアは、1960年代からある同年型ノマドのパーツを一部流用しつつ、1980年代にキット化されたものだ。ハードトップあるいはコンバーチブルが多いプラモデルの世界にあって、センターピラーを有するセダンであるという点が珍しい。そこで、このボディの利点を最大限に活用(?)し、4ドア・セダンへと改造を行ってみた。
ハードトップとセダンではルーフの高さや輪郭が異なるのだが、2ドアでも4ドアでもセダンであれば、その点は変化ない。そのため改造は、センターピラーを後ろ寄りにずらして作り直し、リアドアのサッシも追加、ドアラインの位置も異なるのでモールドを埋めて、前後2枚のドアとなるよう彫り直す、といった作業だけで可能となる。後にレベルからは1956年型デルレイ、さらには1957年型ベルエア/150の2ドア・セダンもリリースされているので、3年式全て4ドア・セダンへの改造が困難でなくなっているのは有難いところだ。
実車解説で述べた通り、1955年型においてはV8エンジンがあるという点が非常に重要なのだが、フリートユースがメインの最廉価モデルらしく、作例のエンジンは直6とした。エンジン本体はAMTの1951年型フリートライン、ヘッドカバーはモノグラム1/24 1953年型ベルエアから流用。さらにホイールはレベル製の1956年型デルレイ、車名ロゴやキーホールなどはこのデルレイ用のエッチング(モデルカーガレージ製)を利用するなどしている。
ボディカラーはネプチューングリーンをチョイス、Mr.カラーの青竹色をメインに調色を行った。実車では150でもツートンの設定があったが、廉価モデルらしさを強調するため単色とし、タイヤもホワイトウォールのない黒タイヤとしている。派手、ゴージャス、クロームたっぷり、といったいかにもな1950年代らしさを避けてのモデリングとなったが、こうしたプラモ作りもまた楽しいものである。
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モデルカーの世界は実車業界よりも詳しく研究する文化が定着してる事がよく分かります