SUVの王者としての風格を漂わせるベントレー ベンテイガ。今回は従来からあるW12エンジンに加わったV8エンジン搭載車に試乗、圧倒的な存在感と他に類を見ない贅を尽くしたインテリアを味わった。(Motor Magazine 2018年8月号より)
新しく搭載されたV8エンジンはベントレーらしい味付け
ベンテイガが最後だった。なんのことかというとフォルクスワーゲングループが使うV8エンジンを搭載したSUVに乗るのが、である。最初はポルシェ新型カイエンターボ、次にランボルギーニウルス、そして最後にこのベンテイガV8となったのだ。
そう、この3モデルが搭載するエンジンはベースが基本的に同じなのだ。ポルシェが開発したというこのV8ツインターボエンジンをランボルギーニらしく、ベントレーらしく各ブランドのエンジニアがチューニングしているのだが、スペックだけみるとそれぞれの特徴を顕著に表していて、並べて見るととても興味深い。
○ポルシェ新型カイエンターボは最高出力550ps、最大トルク770Nm、最高速286km/h、0→100km/h加速4.1秒。
○ランボルギーニ ウルスは最高出力650ps、最大トルク850Nm、最高速305km/h、0→100km/h加速3.6秒。
○ベントレー ベンテイガV8は最高出力550ps、最大トルク770Nm、最高速290km/h、0→100km/h加速4.5秒。
新型カイエンターボとベンテイガV8の最高出力と最大トルクは同じ数値だが、最高速はウルス→ベンテイガV8→新型カイエンターボの順で、0→100km/H加速はウルス→新型カイエンターボ→ベンテイガV8の順となるのだ。
冒頭に記したとおり、海外でだが、新型カイエンターボやウルスには、ともにサーキットと一般道で試乗して、その実力を存分に体験することができた。そして最後になったが国内でベンテイガV8の試乗が叶ったというわけだ。
今回、試乗したのは都内の一般道なので、パフォーマンスをすべて解き放てなかったが、その片鱗は十分に感じることができた。
満航続距離745kmという足の長さも魅力のひとつ
さて、前置きが長くなったが、ベンテイガV8である。6L W12ツインターボエンジンを搭載するベンテイガに加わったのがこのV8モデルだ。最高出力や最大トルクなどのスペックは前述のとおり。排気量もパワーも少なくなった分、非力では? という疑問を持つ人もいるかと思うが、それはまったく心配する必要はない。だって、カイエンターボもウルスも同じV8を搭載しているのだからどこに不満が出ようか。
5mを超える全長、2m近い全幅に3mに近いホイールベースは確かに大きい。外から見るとまるで小山のようだ。しかし運転席に座るとその大きさをあまり感じさせない空間が広がっていた。さらに走り出しもタイヤのひと転がり目から軽快でW12とは違った味わいを楽しませてくれる。
特筆すべきは効率と価格だろう。状況に応じて8気筒のうち4気筒を休止させる可変シリンダーシステムを採用し、燃費を向上、満タンでの航続距離はなんと745kmを超える。
価格はW12の2786万円に対して1994.6万円。この差は大きいのではないだろうか。ベントレーの購入層はそれほど価格にシビアではないかもしれないが、このベンテイガV8は従来からのベントレーユーザーだけではなく他ブランドからベントレーの世界にお客を引き入れる役割も負っている。それならこの価格は十分に説得力のあるものである。
なにしろクオリティは文句なし、インテリアはすべてに贅が尽くされたものだ。なにより、このSUVには、“ウイングドB”が付けられているのだ。
ベンテイガV8に乗って、前述したカイエンターボやウルスを比べることがナンセンスであることに気づかされた。クルマの価値は出力やトルクだけではない。ましてや最高速や加速力でもないということに改めて思い至る。それほどベンテイガV8の放つオーラはまったく別格で、まさにベントレー以外の何者でもない。(文:千葉知充)
ベントレーベンテイガ V8 主要諸元
●全長×全幅×全高=5140×1998×1742mm ●ホイールベース=2995mm ●車両重量=2395kg ●エンジン=V8DOHCツインターボ ●排気量=3996cc ●最高出力=550ps/6000rpm ●最大トルク=770Nm/1960-4500rpm●トランスミッション=8速AT ●駆動方式=4WD ●車両価格=1994万6000円
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