この記事をまとめると
■マレーシアの首都クアラルンプールで新車ディーラーを訪問した
車庫証明に燃費基準ステッカーがカッコイイとかマジか! マレーシアでは日本仕様カスタムが流行していた
■プロドゥアのディーラーでは親族ぐるみで新車購入する人も多い
■「ドイツ車派」「フランス車派」といったものがなくいいと思ったクルマを購入する層が多い
マレーシア全体での新車販売は好調
クアラルンプール国際モビリティショー(KLIMS)取材のため、2024年12月上旬にマレーシアの首都クアラルンプールを訪れた。少々長めの滞在日数をとり、滞在後半は街なかの様子を積極的に見ることにしていた。そのひとつが市内にある新車ディーラー訪問である。
今回は、市内中心部からやや離れた幹線道路沿いにいくつかのブランドの新車ディーラーが隣り合うように出店している、日本でもお馴染みの光景となる複数のディーラー街を歩くことにした。マレーシアでは販売だけを行うディーラーもあるようで、郊外型店舗は「4S店」と呼ばれ、販売、サービス、部品交換、塗装を行う。つまり、日本の一般的な形態のディーラーが軒を連ねているのと似たようなものだ。
まずは自国量販ブランドで「国民車」とも呼ばれているプロトンとプロドゥアのふたつのブランドのうち、ダイハツと提携しているプロドゥアのディーラーを訪れた。ショールームは日本の新車ディーラーを参考にしたとの話どおり、入口にはその日に点検などアフターメンテンナンスや修理などで来店するお客のクルマのナンバープレートの番号を記し、「本日の来店予定客」として掲示していた。
店舗スタッフに話を聞くと、「いま(2024年12月)は新車が売りにくい時期になっている」とのこと。聞けば、2024年12月に新車を購入しても、翌月は年が明け2025年になり、すぐに「1年落ち」となってしまうため、新車を積極的に買おうというお客が極端に減るのだそうだ。一方、販売サイドとしては、在庫車を可能な限り年内に売りつくしたいのでジレンマも大きくなるというのである。
「弊店ではローンを利用しての新車購入は80%ほどになる。ローン仲介手数料も入るので、我われはローンで新車を売りたいのだが、いまの時期(年末)はそうもいっていられない。現金払いですぐ買ってもらえるお客さまなら好条件(値引きアップなど)で販売する」といったことを話してくれた。
在庫車を積極的に販売したいとのことで、プロドゥアブランドは6車種がラインアップされているが、そのなかで話を聞いた時点で在庫車があるのは、日本でのダイハツ・ロッキー(トヨタ・ライズ)ベースの「アティーバ」と、マレーシア以外の新興国、たとえばインドネシアではトヨタ・テリオスやダイハツ・テリオスの車名で販売されているFR方式を採用するコンパクトクロスオーバーSUVのアルズの2車種だけ。そのほかのアルザ(コンパクトMPV)、ベッツァ(コンパクトセダン)、アジア、マイビィ(いずれもコンパクトハッチバック)は納車まで半年ほど待つことになっているとのことであった。
80%程度がローンを利用すると前述したが、なかには一発で融資の審査が通らないケースもあるようだ。そのようなときは親族が保証人となったり、現金を親族からかき集めて頭金を増やすなどして審査を通しているとも語ってくれた。親族ぐるみで新車を買うというのはとても印象的であった。
タイやインドネシアでは、それぞれローン審査が厳格化されていることなどさまざまな事情から、新車販売全体が苦戦傾向にあるので、マレーシアの状況を聞くと、「金利は3%前後で安定している。新車販売も2023年比で目立って落ち込んでいるどころか、むしろ前年比プラス傾向のほうが目立っている」と、周辺国とは少々異なる様子を語ってくれた。マレーシアは周辺国よりも経済成長率が高いこともあるのが影響しているようである。
国民車であることと、エントリーブランドということを意識してきているプロドゥアは、日本でいうところのコンパクトモデルしかラインアップしていない。もう一方のプロトンはそれよりやや上級車種という位置付けで国民車ブランド同士が被らないような配慮が続いていたようだが、プロトンが2017年に中国・吉利(ジーリー)汽車傘下となると、車種の上級化がさらに進み、割高イメージが目立ってきたとのことである。
メルセデスとプジョーとリープというBEVを扱う輸入車ディーラー
続いて、メルセデス・ベンツとプジョー、そして最近中国系でステランティスグループ傘下のBEV(バッテリー電気自動車)「リープ」を扱うことになった老舗ディーラーに向かった。
興味深いのは、メルセデス・ベンツ車をほしがる人とプジョーをほしがる人の間では所得層が異なるというものの、趣向性という面では購買層に大きな違いはないそうだ。つまり、「ドイツ車派」、「フランス車派」などといった日本のような母国がどこかというような選択肢はほぼなく、「いいと思ったらたまたまプジョーだった」というようなノリになっているとのことであった。
事実、店を訪れたときにたまたまプジョー5008の納車式を行っていたのだが、購入した夫婦はマツダCX-8と比較検討したとのこと(マツダは中産階級でかなり人気が高い)。新車購入の際には試乗が購入車種決定に大きな影響を与えるようで、この夫婦も奥さんが5008を試乗して気に入ったので購入したそうだ。またKLIMSの会場でも声高に紹介されていたのだが、保証内容も車種決定には大きな検討材料になっているとのことであった。
この店でのローン利用率は95%となっていた。ここでも、年末駆け込み需要というものを狙っているとし、現金一括払いならば好条件を提示するとのことであった。
最近扱い始めたリープ車については、話を聞いたセールスマンはすでに2台を販売したそうだ。1台は初めてBEVに乗る人で、もう1台はすでに中国BYDのATTO3を乗っていて増車として購入したとのことであった。
ただし、話を聞いた限りでは充電インフラなどの環境整備が不十分ということもあり、買う側も売る側もBEVはまだまだ敷居の高い乗り物というイメージをもっている人が多いように思えた。そんななかでリープを扱い始めたのは、プジョーユーザーなどが「BEVがほしい」となったら、他メーカーに流れる前に自社で販売したいとの狙いもあったようである。
東南アジア地域というか、日本以外では現金一括払いというのがほとんど存在しないことがほとんど。そんななかでプロドゥアのローン利用率が80%とやや低いのは、「新車がほしくて一生懸命お金を貯めて購入した」といったものがイメージでき、政府が国民車ブランドを設けた背景の一端を垣間見た気がした。
すでにマレーシアでも郊外在住の中産階級以上の所得層では、自動車の複数保有は当たり前のようになってきている。日本ほど明確ではないものの、国民車ブランドと外資ブランドを、日本における日本車と輸入車(外車)のようにわけることで自動車の普及をはかるとともに、国民車ユーザーが「頑張って次は日本車などの外資ブランド車を買うぞ」と奮起させて所得を上げさせていく、そんな国策めいた狙いもあるのかなあと今回ディーラーを訪れて感じた。
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