トップの画像は1987年(昭和62年)公開の映画、「私をスキーに連れてって」で劇中に起用されたトヨタの4代目セリカ GT-FOUR。主人公のOL2人がこのセリカを駆って(普通に営業中の)ゲレンデを駆け下り最期は横転するシーンがナイスだ。今なら炎上間違いなし。昭和だからこそ許されたシーンかもしれない(ちなみにYou Tubeでもこのシーンが見られるが、コメント欄は「ST165で何してくれるんだ」とゆるく燃えている)。そういう意味では大らかな、いい時代だった。
そんな昭和の最後の年、1989年から令和元年の今年まで30年。昭和は実は世界最長の元号であるだけに、その「カーライフ」期間はかなり長いワケだが、ともあれそんな昭和と令和のカーライフと、始まったばかりのカーライフの違いを検証してみようというのが本企画の主旨。
【え、もう2019年終わり!??】レインボーブリッジの虹色ライトアップ始まる
大きく変わったものもあるだろう。意外と変わってないなというものもあるだろう。まずは読み進めていただき、お楽しみいただければ幸いだ。
昭和45年から今年にかけての自動車保有台数。昭和の終わりから目測で計ってみても、町を走るクルマの数は約2倍(!)になった
※本稿は2019年11月のものです
構成・文:松村 透(クルマ業界に精通するディレクター兼ライター)/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年12月10日号
■その時代の流行りがダイレクトに反映されるジャンルがコレ!【カスタム&ドレスアップ編】
●【大きく変わった】 ステアリング交換
マフラー交換同様、昭和時代は「クルマを購入したらとりあえずステアリングも交換」がお約束だった。だが令和となった今、エアバッグ付きステアリングが標準装備となり、社外品に交換する機会が激減した。悲しい……。
愛車を手放しても、愛用のステアリングは当時の思い出とともに、今でも大切に保管している……という人は少なくないはず
●【大きく変わった】 マフラー交換
昭和の時代は「クルマを購入したら、とりあえずマフラー交換」がお約束のメニューだったように思う。ノーマルマフラーだと恥ずかしいといった雰囲気すらあったものだ。
令和となった今、「マフラーを交換させたくないのか!?」とツッコミたくなるようなデザインのクルマも少なくない。そもそもマフラー交換をする気にさせるクルマも減っているような……。
●【大きく変わった】 エアロパーツ
次々と新しいエアロパーツが開発され、日本車が洗練されていった昭和の時代。高価なフルエアロは憧れだった。令和の今では純正エアロも当たり前となったが、時代の流れか、わりと控えめなデザインが増えたように思う。
●【あんまり変わらなかった】 シャコタン文化
昭和から令和へと変わっても、車高を落とす「シャコタン」は健在。近年では海外で誕生したシャコタン文化「スタンス系」のカスタムが日本にも逆輸入され、若者に人気。
■昭和時代には当たり前&憧れだった、あのオプションが絶滅?【ディーラーオプション編】
●【大きく変わった】 灰皿
たばこ産業の調査によると、成人男性のピーク時の喫煙率は83.7%(昭和41年)。それが年々減少し、最新のデータでは27.8%。灰皿がオプション扱いになるのもやむを得ない。
なおこれは昨年(平成30年)のデータであり、今年はさらに減少する可能性が高い。たばこを片手に颯爽とドライブ……。そんな時代は過去のものになりつつあるのだ。
灰皿も今やオプション扱い。成人男性の喫煙率は3割を切っている。昭和から平成、令和となり、喫煙者は肩身が狭くなるいっぽうだろう
●【大きく変わった】 レースのシートカバー
昭和の時代にはディーラーオプションというよりは標準装備に近かった感のあるレースのハーフシートカバー。当時のクルマも、このカバーが似合う雰囲気だったように思う。そういえば自宅の黒電話もカバーがこれだったという人も多いはず。
令和となった今、レースのハーフシートカバーそのものがディーラーオプションで設定がなく、ほぼ絶滅してしまった。需要がないのだろう。
ところが旧車の当時の雰囲気を再現するためには必須として意外なところで再評価。しかし大半のものが処分されてしまい、一転してレアアイテムに。その結果、ネットオークションでも高値で取り引きされる時代に……。なんとも皮肉な話だ。
●【大きく変わった】 自動車電話
昭和の時代はリッチマン(死語?)の必須アイテムだった自動車電話。受話器片手に運転するのがトレンディ(左ハンドルの外車だと、さらにインパクト大)であり、トランク部のアンテナは、レプリカ品が出回ったほどだ。
令和になった現在では、自動車電話そのものが絶滅。さらに法規も変わった。今やスマホ片手に運転したら道交法違反。12月1日から施行予定の改正道交法では違反点数と反則金が、現在のおよそ3倍に引き上げられる。
センターコンソールに置いてあるだけでステイタス。アラフォー世代以上にとって、愛車に自動車電話を取り付けることに憧れた人は多いはず
●【あんまり変わらなかった】ドアバイザー
これも昭和時代には標準装備に近かったオプション。雨の日でも窓が開けられる便利なアイテムだが、令和となり設定はあるものの装着率は激減した。
要因はさまざま考えられるが、ドアバイザーが似合わないデザインが増えていることや、エアコンの性能向上による快適な車内空間の確保、さらに喫煙率の低下による雨天時の窓開けの機会がなくなったこともありそうだ。
■昭和の時代には誰も想像がつかなかったアイテムや技術ばかり 【カー用品編】
●【大きく変わった】 ドライブレコーダー
度重なるあおり運転関連の事件で急速に普及率が高まっているドライブレコーダー。ソニー損保が平成30年12月に発表した時点での普及率は31.7%。それから約1年後、令和となった現在はさらに上昇しているだろう。
昭和の時代、ドライブレコーダーならぬ、オンボードカメラといえばF1ではないだろうか。セナの電光石火のシフトチェンジが懐かしい……。
令和の時代の必須アイテムといえるのは、やはりドライブレコーダーだろう
●【大きく変わった】 オーディオ
昭和のドライブの必須アイテムといえばカーオーディオ。グライコ付きのデッキ、ブランド名が点灯するリアスピーカーなどの演出に憧れたし、オリジナルのカセットテープを何本も作ったりしたはずだ。
令和の現代は、オンデマンドで音楽を受信し、ブルートゥースで車内のスピーカーに音を飛ばす時代。便利にはなったが、どこか味気ない。
近年、人気が再燃しつつあるカセットテープ。ドライブする相手や場面に応じて、夜な夜な試行錯誤しながらオリジナルカセットテープを作ったことが懐かしい
●【大きく変わった】 ETC
停止することなくそのまま料金所を通過できるETC。昭和の時代には夢のような話だ。国交省の統計によると、令和元年8月現在のETCの利用台数は869万台、利用率は91.9%。もはや現在のカーライフにおけるマストアイテムといっていいだろう。
その一方で、料金所のおじさんと何気ない会話を交わす機会は激減してしまった。顔見知りのおじさんに会えると嬉しかったものだが。
●【大きく変わった】 LED
昭和の時代からヘッドライトバルブを変更することはあったが、LEDの普及はカー用品にも大きな変化をもたらしたといえる。令和となった今、LEDヘッドライトを標準装備(あるいはオプション設定)するクルマも少なくない。さらに室内やナンバー灯など、クルマのあらゆる照明をLED化するカスタマイズも定着してきた感がある。
●【あんまり変わらなかった】 カップホルダー
昭和から平成に変わる頃、エアコン吹き出し口に飲み物が置けるカップホルダーが大流行。すっかり忘れているかもしれないが、当時の多くのクルマにはカップホルダーが装備されていなかったのだ。
令和の時代となり、今やポルシェのハードモデルですら標準装備するようになっている。市販品も、スマホや電子タバコと同時装置できたり、保冷・保温ができるタイプのものまで販売されるなど、各社が趣向を凝らしたカップホルダーを販売している。
●【あんまり変わらなかった】 芳香剤
昭和から平成を経て令和に変われど、芳香剤の立ち位置はあまり変わっていないようだ。どこのカー用品店でも芳香剤が売られているし、昭和の時代に一世を風靡した「車にポピー」でおなじみのグレイスメイトポピーや、バニラおよびココナッツの匂いを放つ芳香剤もいまだ健在だ。
もちろん芳香剤自体は独自の進化を遂げており、エアコン吹き出し口に取り付けるタイプや、シガーライターに差し込んでアロマディフューザーとして使うものもある。
■昭和から平成、令和となり、便利になったことを改めて実感する【ドライブ編】
●【大きく変わった】 目的地への経路検索
助手席の彼女に地図を持たせて道案内。道を間違えて大げんか……なんて光景は、昭和の時代ならではのエピソードだ。令和の時代となった今では、スマホにインストールしたアプリがカーナビ代わり。地図情報の更新が早くて便利だが、時々、むちゃくちゃな道案内をするのが玉にキズ。
今やスマホ+ナビアプリでもカーナビとして成立する。こんな時代が訪れるとは。時々、むちゃくちゃなルートを案内するのはご愛敬?
●【大きく変わった】 道中の寄り道
昭和の時代、道中の寄り道といえばドライブインだった。クチコミサイトもないので、アタリかハズレかは賭けに近かったが、それも楽しかった。
令和となった現在、全国には1,160もの道の駅(6月19日現在)が登録されており、高速道路のSAもきれいにリニューアル。便利にはなった。
●【大きく変わった】 そもそものクルマ選び
「大きいことはいいことだ」。映画『ロボコップ』の劇中のセリフだ。大排気量・ハイパワー・最上級グレード。昭和時代のクルマ選びは、まさにこれだった気がする。
令和となった今、小排気量・燃費・ハイブリッド。見栄よりも堅実なクルマ選びが主流になったよう。ある意味、まともになったということ?
タブレットなどでもクルマ選びはできるが、印刷されたカタログに情緒を感じる。寝る前に眺めるのは至福のひとときだ
●【あんまり変わらなかった】 やっぱりドライブは楽しい
昭和の時代はもう30年前に終わった。当時、280psがトップクラスだった日本車の最高出力は、今や600ps。カタログ値で30km/L超えの燃費を標榜するクルマも少なくない。ハイブリッドカーやEV、自動運転の進歩もめざましい。当時の若者も今やすっかりオジサン、オバサンの仲間入り。夜な夜な走り回るのは体力的に辛いはず。
それなら、旅行を兼ねたドライブはいかがだろう? 年齢を重ねたからこそわかるよさ、楽しめるドライブルートがあるはずだ。
* * *
64年も続いた昭和だけに、カーライフに絞ったとはいえすべてを拾いきることはできなかったが、当時の空気感を少し思い出していただけたのではなかろうか。とはいえ時間は逆行できない。この先の令和も、豊かな思い出ができる、いい時代でありますように。
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マナーも低下した。
運転技術も低下した。