まもなく登場する新型クラウン。じつに15年ぶりにステーションワゴンが復活する見込みである。振り返ってみればクラウンやセドリック/グロリアといった高級サルーンにはかつて当然のようにワゴンモデルが設定されていた時代も。
今やワゴン市場は風前の灯状態だが、なんで昔は高級セダンとワゴンは蜜月関係にあったのか!?
クラウンワゴン復活直前! 高級セダンにワゴンが付き物だったのなんで!?
文:佐々木 亘
画像:TOYOTA
■新車で買える国産ワゴンは5台のみ……でも欧州勢は未だ勢いアリ
ワゴンブームという言葉があったように、1990年代にはステーションワゴンが飛ぶように売れていた。それが2000年ごろからのミニバンブーム、さらには現在のSUVブームで、今や、完全に下火になってしまっている。
現在、国内でステーションワゴンを販売するのは、トヨタ・スバル・マツダの3社だけだ。カローラツーリング・カローラフィールダー、レヴォーグ・インプレッサスポーツ、マツダ6ワゴンが挙げられるが、いずれも高級セダンとは縁遠い。
クラウンエステートが消滅したのは2007年、日産のステージアも同年に姿を消している。代わって台頭してきたのは、アルファードやエルグランド、ハリアーのようなクルマたちだ。
クラウンエステート
高級ミニバンや高級SUVが、高級ステーションワゴンに変わる存在として、日本では活躍している。しかし、国内で高級ステーションワゴンを見なくなったというわけではない。欧州メーカーは、日本向けの主力モデルとしてステーションワゴンを作り、高い販売実績を残しているのだ。
■魅力は走行性能! SUVやミニバンはどうしたって重心高
室内高やロードクリアランスが重要視されるようになった、昨今の日本のクルマ選び。背の高いミニバンやSUVはドンピシャの存在だ。しかし、快適性が高いと言われるミニバンやSUVにも弱点は多い。
普段、背の低いクルマに乗る筆者も思うが、セダンユーザーが最も気にするポイントは、ミニバンやSUV特有の重心の高さや車両重量の重さにある。
全高を高くし、フロア位置を高くしたミニバンやSUVでは、自ずと車両重心が高くなる。これにより、コーナリング時のロールが大きくなったり、走行中にフラフラと不安定に感じたりと、「走り」の面でネガティブな要素が残るのだ。
こうしたネガを消しながら、セダンよりも積載性を高め、機能的にクルマを使えるようにしたのがステーションワゴンである。
国内メーカーがSUVで高い人気を得ている一方、BMWやメルセデスなどは、SUVに加えてステーションワゴンでも、日本のユーザーから注目を浴びているのだ。
日本よりも高速道路の制限速度が高く、さらに一度に走行する距離が圧倒的に長い欧州の自動車事情。空気抵抗が大きく重心が高い、いわばフラフラのSUVやミニバンよりも、ビシッと路面に吸い付くように走れるステーションワゴンの方が、理にかなっているということだろう。
■キモは乗り味とゴルフバッグ!? ワゴンとセダンが蜜月関係のワケとは!?
ステーションワゴンが持つクルマの素性は、高級セダンやサルーンに非常に近い。そこで1990年代の国産メーカー各社は、セダンの乗り味を崩さずに、人もモノも快適に運べるステーションワゴンを、高級セダンから派生させるようになった。
高級セダンのユーザーにとって、乗り味や質感と同程度に重要なのが「ゴルフバッグがいくつ積み込めるか」という問題だ。どんなに大人4名を快適に乗せられても、人数分のゴルフバッグが入らなければ、クルマとしてはNGである。高級セダンにとって、4名乗車+4名分のゴルフバッグ積載は、同時に成し遂げなければならない至上命題だった。
プラットフォームや足回り等の基本骨格はそのままにして、ルーフを後方まで延長し、3BOXを2BOXにする方法が、最も正解に近いカタチを提案しやすい。そのため、クラウンやスカイラインなどの高級セダンには、ワゴンタイプが用意され人気を博した。
1968年 スカイラインバン
これまで国内専用として販売してきたクラウンは、新型から海外での販売も視野に入れている。海外で売れる高級日本車は、レクサスRXに代表されるSUVだが、クラウンの登場で情勢は変わるだろうか。
ノッチバックタイプの新型クラウン、そして追加される予定のクラウン・ステーションワゴンが、欧州市場で大きな話題を呼べば、国内市場でもステーションワゴンの存在を見直す動きが出てくると思う。
SUV・ミニバン人気も、そろそろ一周まわって落ち着くだろう。すると次は、セダンやワゴンの時代が来るか。そんな時には、みんなが乗りたいと思うステーションワゴンが必要だ。国内メーカーさん、高級セダンとステーションワゴンのセット、そろそろ復活させませんか。
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