「因果応報だね」
これは、F1第23戦カタールGPでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がトップでチェッカーフラッグを受けた直後に、フェルスタッペンのレースエンジニアであるジャンピエロ・ランビアーゼが無線でフェルスタッペンに送ったメッセージだった。
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何が因果応報だったのか。それを説明するには、土曜日の予選後にフェルスタッペンに科せられたペナルティに触れなければならない。
前日の予選でポールポジションを獲得したフェルスタッペン。しかし、Q3のアタックに入る前の走行中に、不必要に遅く走行して、結果的にジョージ・ラッセル(メルセデス)の進路を妨害したとして、スチュワード(レース審議委員会)から1グリッド降格のペナルティを科せられていた。しかし、フェルスタッペンはふたりともアタックに入る前のラップだったため、妨害には当たらないとして裁定には満足していなかった。
「正直、あれでペナルティをもらうなんて信じられない。おそらく、アタックしていないラップでペナルティを受けたのは、今回が初めてだと思う。スチュワードの部屋に座って、そこで何が起きたことに、とても驚いた。正直に言って、とても残念だった。僕たちは、みんなお互いをとても尊重し合っていると思っていたからね。でも、現実はそうじゃなかった。誰かが誰かをあそこまでひどく陥れようとしている人を見たことはない。あそこまで誰かをひどく陥れようとしているのを見たんだからね。僕のなかで彼に対する尊敬の念はすべて失ったよ」
フェルスタッペンはそう言って、ラッセルを非難した。
不本意ながらも2番グリッドからスタートしたフェルスタッペンは、1コーナーでそのラッセルのインを差してトップの座を奪い返す。そして、その後は2番手に上がってきたランド・ノリス(マクラーレン)と優勝争いを繰り広げていく。
勝負の分かれ目となったのは、30周目に出たダブルイエローフラッグだった。この直前にアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)のサイドミラーが落下し、それを回収するためにホームストレートエンドでダブルイエローが提示されていた。29周目の最終コーナーでは1.829秒の差をノリスにつけていたフェルスタッペン。ダブルイエロー区間で減速したフェルスタッペンに対して、ノリスは原則を怠ったため、その差が一時1.081秒に縮まった。
そこでフェルスタッペンは無線でノリスが減速していないかどうかチェックするようランビアーゼに伝え、減速していないことを確認したランビアーゼは、スポーティングディレクターのジョナサン・ウィートリーを通して、そのことをレースコントロールに報告した。
レースコントロールも走行データからその事実を確認し、ノリスにストップ・アンド・ゴーのペナルティを科した。
最大の敵がいなくなったフェルスタッペンは、その後も安定した走りでトップを堅持。第21戦サンパウロGP以来、ドライコンディションでは第10戦スペインGP以来となる決勝レースでの優勝を遂げた。
“不必要に遅く走行した”として、土曜日にペナルティを受けたフェルスタッペン。この日はイエロー区間で減速していたことで、結果的に勝利を大きく引き寄せることとなった。チェッカーフラッグの後、「因果応報だね」とフェルスタッペンに語りかけたランビアーゼはこう続けた。
「だって、今日、君は不必要にスロー走行していたわけではないからね」
その言葉を聞いたフェルスタッペンは、こう言って笑った。
「それ、最高だよ!」
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