Mercedes-Benz 300 SL
メルセデス・ベンツ 300SL
伝説に彩られたガルウイングの嚆矢「メルセデス・ベンツ 300 SL」(1954-1963)【名作スーパーカー型録】
戦後のメルセデス製スーパースポーツの原点
第二次世界大戦後のメルセデス・ベンツが、プロダクションモデルの生産を再開するのは1948年になってからのことになるが、それとほぼ同時に計画されたのがモータースポーツへの復帰だった。1950年代を迎えると、メルセデス・ベンツには戦前にもレーシング部門のマネージャーを務めていたアルフレート・ノイバウアーを中心とするレーシング・チームが再編され、1954年シーズンからのF1GP、それに前後してスポーツカー・レースに復帰するためのプロジェクトが本格的に始動した。
そのスポーツカー・レースのために開発されたモデルこそが、後にメルセデス・ベンツにとって戦後初のスポーツカーとなる300SLのプロトタイプであり、それは1952年に完成。チーフ・エンジニアは、かのルドルフ・ウーレンハウトである。
独自のチューブラー・スペースフレームを採用
300SLプロトタイプのエンジニアリングで最も特徴的だったのは、やはり新設計されたマルチチューブラー・スペースフレームだろう。スチールパイプを立体的に組み上げるこの手法は、軽量かつ高剛性であることが大きな特徴で、300SLプロトタイプではこれにアルミニウム製の肉薄パネルでシームレスに成型された流線型のボディが組み合わされた。そのフレーム構造を理由に上下方向に開閉するガルウイング式のドアを採用していたことも、このボディの特徴的なデザインだ。
ボディ左方向に45度傾けて搭載されたエンジンは、アルミニウム製のヘッドとクランクケースを持つ2996ccの直列6気筒。そのベースは当時の300リムジンに等しいが、圧縮比の向上やダウンドラフト型キャブレターの採用によって最高出力は170psを超えるレベルにまでチューニングされた。
プロトタイプはレースで表彰台を独占する活躍
組み合わされたギヤボックスは4速MT。サスペンションは300リムジンと同様にフロントにダブルウィッシュボーン、リヤにスイングアクスルを使用していた。そして車重が860kgと軽量な300SLプロトタイプは、240km/hという最高速度を掲げ1952年のミッレミリアでデビュー戦を飾ると、3台が投入された同年のル・マン24時間レースでは1-2フィニッシュを飾るという偉業を成し得たのだった。
ル・マン24時間レースの後も、300SLプロトタイプはニュルブルクリンクで開催されたグランド・ジュビリー・プライズ(サーキット開設25周年記念レース)に4台が参戦し1位から4位を独占。さらにメキシコのカレラ・パンアメリカーナでも1-2フィニッシュを達成するなど圧倒的な強さを見せつけた。そしてこの戦績は世界中のファンを、とりわけメルセデス・ベンツにとって最も重要な輸出市場ともいえたアメリカで大きな話題となり、1953年に製作された第2次プロトタイプを経て生産化へと移行することになる。
プロトタイプを洗練させたロードカーとして登場
生産型の300SLが初公開されたのは、1954年のニューヨーク・オートショーだった。その基本的なスタイルはプロトタイプ、第2次プロトタイプから変わることはないが、ロードカーとしての居住性を確保するためにさまざまな改良策が施されている。スペースフレーム構造もそのままプロトタイプから継承されているから、もちろんボディサイドを全長方向に貫く(とはいえそれはシンプルな一本のパイプなどではないが)パイプを避けるために、あのガルウイング式ドアが採用されていることも変わらなかった。ステアリングホイールは、ロックを解除すると下向きに倒れドライバーの乗降性を改善する仕組みだ。
プロトタイプから大きくそのメカニズムが変化したのはフロントのエンジンだった。2996ccの直列6気筒という基本スペックに変化はなかったものの、キャブレターの代わりにロバート・ボッシュとの共同開発による直噴式のインジェクションが備わり、最高出力は215psを発揮するに至っている。
エアロダイナミクスを風洞実験にて検証
風洞実験を経てさらに空力的にも洗練されたボディには、エンジンルームで発生する熱気を排出するためにフロントのフェンダーアーチの後方にエアアウトレットが設けられ、シングルフレームの中心にスリーポインテッド・スターのエンブレムを掲げるグリルはプロトタイプのそれよりも精悍で、かつラグジュアリーな印象を受けるデザインに変化した。
ラグジュアリーなインテリアを備え、ウェイトは1295kgにまで増加した300SLだが、その走りはファイナルギヤの選択によって差があったものの(当時は複数のファイナルからカスタマーが好みのギヤ比を選ぶことができた)、250~260km/hとされた最高速度は変わらずに魅力的なものだった。
クーペは1957年に生産終了し、続いてロードスターをリリース
最終的にメルセデス・ベンツは300SLを1400台生産した後に1957年に生産を終了するが、引き続き300SLにはオープン仕様となるロードスターへの進化が待っていた。フレーム構造を改良し、一般的なサイド開きのドアを採用。リヤサスペンションを改良したほか、クーペではガルウイングドアをアルミニウム製とし、ほかのパートはスチールで成型されていたボディも、フルスチールへと変化している。アメリカ市場向けには225ps仕様のエンジンが搭載されたことも話題で、一方シャシー関連では1961年から4輪ディスクブレーキの採用というニュースもあった。
メルセデス・ベンツ 300SL。とりわけそのファーストモデルたる300SLクーペは、当時のカスタマーにはまさに現代でいうスーパースポーツにほかならなかったに違いない。その流麗なボディデザインと高性能なパワーユニット、そして圧倒的な運動性能。そのどれもがスーパースポーツと呼ぶに相応しい特徴といえるのではないか。
【SPECIFACATIONS】
メルセデス・ベンツ 300SL クーペ
発表:1954年
エンジン:直列6気筒DOHC
総排気量:2996cc
圧縮比:8.55
最高出力:158kW(215ps)/5800rpm
トランスミッション:4速MT
駆動方式:RWD
乾燥重量:1295kg
最高速度:260km/h
解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
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みんなのコメント
結局、スーパーカーブームの頃、どっかの大人がこの『SL』を見て
「ドアが上にあがるのは“ガル…”って言うんだ」と思い込み
『カウンタック』のドアにまで言い出したのが、間違いの始りだな。
悲劇的なレースでの事故でのメーカー自粛が無ければ••
今期はコロナでやられちゃいしたが復活!F1無敵!
かつての無敵のホンダとの対戦楽しみにしてましたが、来期に期待してます!