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DS 7 クロスバックの試乗で感じた「ワンアンドオンリー」の乗り味。異彩のフレンチブランドを再確認する

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DS 7 クロスバックの試乗で感じた「ワンアンドオンリー」の乗り味。異彩のフレンチブランドを再確認する

DS 7 CROSSBACK GRAND CHIC BlueHDi

DS 7 クロスバック グランシック BlueHDi

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DS オートモビルが昨年末に開催した試乗会にて、最新のDS 3 クロスバックのICE仕様(1.2ターボ)とE-TENSE(ピュアEV)を乗り比べたあと、DS 7 クロスバックのGRAND CHIC BlueHDi(2.0リッター・直噴ディーゼルターボ)にも試乗することとなった。

DS 7 クロスバックといえばDSオートモビルがシトロエンから独立して一番最初に発表したモデルであり、今回のBlueHDiモデルでさえその登場は2018年と、とりわけ新しいものではない。しかしグループPSAジャパンが敢えて今回これを試乗車に加えた背景には、「DSの世界観」を今一度フルラインナップ試乗として味わって欲しいという思いがあったようである。

というわけでここからは、DS 7 クロスバックの乗り味を含めた、DSの魅力と未来について語っていこう。

「DSの乗り味は現状、実にちょうどいいしなやかさを得るに至っている」

全長×全幅×全高は4590×1895×1635mm。ホイルベースは2730mmと、いわゆるCセグメントのミドルSUVであるDS 7 クロスバック。“セヴン”なんて多めの数が付いているから、かなり大きなボディサイズを想像しがちだが、全長自体は同グループのプジョー 5008より150mmも短く、逆に全幅は55mmワイドで、全高は15mm低い。つまりその立ち位置は、SUVクーペとまでは言わないが、実用を重んじる5008に対してはちょっとスポーティであり、かつラグジュアリーな路線を取っている。

実際その乗り味もDSは、グループPSAにおいて中間の味わいを示す。いや、“中間”という言い方は相応しくないのかもしれない。乗り味的にはシトロエンよりもシッカリ目であり、プジョーよりはラグジュアリー。筆者はこの乗り味の違いに対してあまりこだわり過ぎない方がよいと思うのだが(なぜならシトロエンが必要以上にソフトライドになり、プジョーにしなやかさが欠けてしまう傾向がやや見られるからだ)、ともあれDSの乗り味は現状、実にちょうどいいしなやかさを得るに至っている。そしてこれこそが、DSの目指す“ラグジュアリー”を、アバンギャルドなデザインと共に表現するひとつのキャラクターであると筆者は思っている。

それは当然DS側も大いに意識するところであり、今回の試乗でも「コンフォートモード」の使用を積極的にリコメンドされた。というのも試乗車である「GRAND CHIC」には、ADAS(先進運転支援システム)用のマルチパーパスカメラを乗り心地に応用し、その乗り心地を制御する「アクティブスキャンサスペンション」が装備されていたのである。

このシステムはカメラが捕らえた路面のアンジュレーションを画像として解析し、それが1cm以上の段差と認識されたとき、車両側で前後ダンパーの油圧を自動で可変させるシステムである。ただ残念ながら試乗コースであった横浜みなとみらい周辺は路面状況が良く、街中から大黒ふ頭を往復した程度では、その制御の変化状況を感じ取ることができなかった。またノーマルモードとコンフォートモードの間にも、大きな差は得られなかった。

「コンフォートモードはどんな状況下でもDSらしい乗り味を保つためにある」

しかしこの変化の無さに対しては、ある意味納得していた。なぜなら理屈通りに考えれば、平坦な路面でわざわざ、減衰力を可変させる必要はないのである。「コンフォートモード」というと、やたらとダンパーを柔らかくする“だけ”の場合がとても多い。確かにこれだと当たりそのものは柔らかくなるけれど、スプリングのバウンスは抑えが効かなくなるため、かえって乗り心地がふわふわと悪くなる。さらに操舵応答性までもが鈍くなるから、結局ノーマルモードにしてしまうことも少なくないのである。

対してDS 7 クロスバックのコンフォートモードは、ノーマルと変わらない確かな操舵レスポンスと、十分にしなやかな乗り心地を両立していたから、ずっとそのままで走り続けることができた。つまりこのモードは、ダンパーを和らげることが目的ではなく、どんな状況下でもDSらしい乗り味を保つためにあるのだと思う。

こうしたシャシーの躾けに対し、2.0リッターの直列4気筒ディーゼルターボも、実にいい働きを見せてくれた。街中ではアクセルの踏み始めからリニアなトルクが立ち上がる。しかしそのツキの良さには唐突なところがまるでなく、1750kg(パノラミックルーフ装着車)の車体を、実に上品に走らせることができる。

「直4ガソリンよりもBlueHDiの方がDSの世界観には忠実だと感じられた」

高速巡航ではこうしたトルク追従性の良さと、8速ATのギヤ比がうまくマッチングし、エンジン回転を低く保ったまま流れに従うことができる。もちろんアクセルを踏み込めばこのエンジンは、ディーゼルらしからぬ気持ち良さでトップエンドまで回り、流れをリードすることもたやすいのだが、それすら必要と思えないほど、ゆっくり運転しているのが心地良かった。

この柔軟性の高さは、400Nmの最大トルクが、2000rpmという低い回転域で発揮されるからという、単純な理屈だけで得られたものではないだろう。過給圧の立ち上がり方や8速ATの制御がマイルドであることや、車重とのバランス。そして遮音性の高さや、乗り心地の良さといった要素が巧みに絡み合うことで、クルマ全体のラグジュアリー感が生み出されているように感じる。

つまりこれを味付けした、シェフの腕が確かなのである。もちろんディーゼルエンジン特有のゴロゴロ感や、アクセルを通じて足裏に感じる振動がないわけではない。しかし225psとよりパワフルで、最大トルクも300Nmとまずまずな1.6リッター直噴ターボと比べても──上位機種だけにそれは当然のことなのかもしれないが──よりこのBlueHDiの方が、DSの世界観には忠実だと感じられた。

「PHEVのパワーユニットに2.0リッターディーゼルターボも用意して欲しい」

ちなみに今後DS 7 クロスバックも、DS 3 クロスバック同様「E-TENSE」ラインを整えてくる予定だ。ただしこのEMP2プラットフォームはピュアEVを想定していないため、それは1.6リッター直列4気筒ガソリンターボを軸としたプラグインハイブリッドになる。一見するとそれは、押し寄せるEV化の波に乗り遅れているかのようにも見える。グループPSAにおいて常に先進的なポジションにあるDSとしては、ここでもピュアEVをラインナップするべきではないのか? という思いも一瞬よぎる。

しかしそこには、フランスらしい現実的な考え方があるのだろう。長距離移動が求められるCセグメント以上のカテゴリーにはPHEVをラインナップする方が、作る側にも買う側にも、負担が少ないと考えているのではないかと思う。

個人的にはDSがプレミアムを謳うなら、PHEVのパワーユニットはこの2.0リッターディーゼルターボも用意して欲しい。そうすれば、価格は確実に高くなってしまうけれど、ハイブリッドモードの協調制御によってディーゼルエンジン特有のチープなバイブレーションはさらに緩和され、よりラグジュアリーなDSワールドが展開されると思う。

「グループ随一の上質な乗り味にこそ、DS 7 クロスバックの価値がある」

さてDS 7 クロスバック BlueHDiに話を戻すと、現状のパッケージングで609万円という価格は、パッと見ちょっと高いと感じるだろう。国産モデルであればトヨタ RAV4 PHVの上級グレードが余裕で買えるし、あと50万円ほど上乗せすれば、ジャーマンスリーの4WDモデルが視野に入る。

対してDS 7 クロスバックは、形こそ奇抜だが、基本的にはオーソドックスなFWDモデルのフランス車で、それを丹念に磨き上げたに過ぎない。だがその愚直な磨き上げで得たグループPSA随一の上質な乗り味にこそ、DS 7 クロスバックの価値があると筆者は思う。奇抜な内外装とは裏腹に、走りは極めてまとも。そして乗り慣れていくほどに、その味わいにどっぷりハマっていく。すると奇抜だと感じていたデザインさえもがすんなり馴染んでくる。

そして何より、人と被らない。これはインポーターにとって嬉しくない事実かもしれないが、DSブランドの販売台数は年間1000台にも満たないのである(2019年新規登録台数)。日本の路上でこの上質さを味わっているのが自分を含めた1000人ほどのユーザーだけなのかと思うと、申し訳ないけれど、なんだかワクワクした気持ちになってくる。こうした希少性を楽しむことは、インポートカーを選ぶ楽しみの原点である。全国にDSディーラーが23店舗しかないのは残念だが、調べれば「DS VALET」(ディーエス・バレー)なるサービスもある。

なんだかバイヤーズガイドのようになってしまったが、スピードや超高性能といった価値観が飽和してきた今、DS 7 クロスバック BlueHDiは、意外や狙い目の一台ではないか? と思うのである。

【SPECIFICATIONS】

DS 7 クロスバック グランシック BlueHDi

ボディサイズ:全長4590✕全幅1895✕全高1635mm

ホイールベース:2730mm

車両重量:1750kg(パノラミックルーフ装着モデル)

エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ

総排気量:1997cc

最高出力:130kW(177ps)/3750rpm

最大トルク:400Nm/2000rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:FWD

サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク

ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

タイヤサイズ:前後235/45R20

車両本体価格(税込み):609万円

【問い合わせ】
DS コール
TEL 0120-92-6813

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  • これが409万円なら選択肢としてアリだが、609万円となるとジョークに近い。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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