日産の伝統的なスポーツカー“フェアレディZ”の新型に試乗
日産の伝統的なスポーツカーといえばスカイラインGT-Rと思う人も多いに違いない。
しかし、国内にとどまらず自動車王国アメリカで認められた日産のスポーツカーといえば、紛れもなく“フェアレディZ”なのである。スポーツカーとしてひとつのモデル名で半世紀以上続いていることに伝統を感じる。
その歴史に新たな1台が加わり、7代目の“RZ34”が誕生した。先代のZ34型は、実に12年間持ちこたえたデザインであり、30年来の友人である谷中氏がチーフデザイナーとして引っ張ったモデルなのだ。
そして新たなRZ34型は、初代Zのオマージュを込めてデザインしたという。このデザインを仕切ったのが、20年来の友人でもある入江慎一郎デザインダイレクターだ。新型の力強いフォルムのエクストレイルも、彼がダイレクターとして作ったモデルである。
数名の日産のデザイナーとは30代から親交が深く、その最も交流がある2人の友人がフェアレディZのチーフデザイナーであったのである。これは縁があるとしか言いようがない、試乗会場である北海道に向かう機上で感慨深く回想していた。
現地のテストコースに到着するとガレージには新たな身をまとったZがある。初代S30のモチーフを現代版に解釈してデザインされていて、プレミアム感を得た造形だ。ボディパネルのパーティングもキレイに納まっている。ヘッドライトの作りもプレミアムブランドに顔負けしない肉厚の樹脂を使っていて、本当の意味での目力をつけている。 しかし、エクステリアで最も気になったのはテールランプだ。これは、私が最も好きなZ32のテールランプをオマージュしていると感じた。だが、作りはショーカー並みのクオリティでよくも市販車で装着が可能になったと思うほど出来がいい。RZ34としてリファインしたZのエクステリアのディテールは、とてもコストをかけた品物である。
ただ、デザインでひとつ苦言を申せば、リアの同色に塗られたスポイラーである。本来の造形で勝負できればスポイラーはいらなかったはずだ。もし装着するのであれば同色ではなくマットブラックやカーボン調などにして、レトロフィット感があった方が王道だったのではないかと思う。
ダイレクト感あるシフトフィールが魅力的な6MTモデル
それはそれとして試乗した印象をお伝えしよう。初めにステアリングを握ったのが6MT仕様からである。 生憎の雨であるがその方がタイヤに頼らずサスペンションとエンジン特性のシビアな部分がわかりやすい。発進のトラクションは万全だ。
発進直後の直進安定性は非常に良い。ボディの下を流れる空気も考慮したようだ。フロントも押さえつけれていて、トルクの落ち込みから盛り上がるMTのシフトアップ時にも安定性が万全だ。シフトフィールはダイレクト感もあり、エンジンの振動もシフトノブに伝わるのもたまらない感触のひとつだ。
高速コーナーでの路面との接地感も万全だ、先代とは比べ物にならないほど、雨の日の安心感がある。 時速70km弱の中速コーナーで一定の舵角でステアリングをあて、緩やかに曲がっていると一瞬で一気にオーバーステアになる。2度ほど同じ条件で走ったがやはりそうなる。とっさに修正するものの、これがZのスポーツカーとしての乗り味なのかと感じた動きである。
雨の中にもかかわらず時速120kmで走行しても、思った以上に静粛性は高く先代を凌駕している。
ATモデルはわずかな重量増があだとなったか
次に9速AT仕様の試乗だ。サウンドコントロールの恩恵でエンジン音の演出も悪くはない。 そして、負荷をかけていったときのATは、とてもスムーズでGTとしての要素を演出してる。ただ、高速だけを走っている分にはエンジンとの統合制御もバランスが取れているが、コーナー侵入時における制動時の挙動はいささかスムーズさに欠ける。9速ATの恩恵がスポイルされているなと感じた部分だ。
そのスムーズではない部分によって、ボディが無駄に前後に動いてしまい乗り心地や路面とのコンタクトまで影響が出てしまう。 MTに比べると、車重はわずか10kgほどの増加だが、本来のポテンシャルを出しきれないのではないかと感じた。
しかし、数年前聞いたときは次のZはリリースできないのではないかと囁かれていた。Zという日本で最もトラディショナルなブランドを温めていた人たちがいたからこそ、最も成熟したZを世に出せたのであろう。こういうモデルを出せることは、今の日産に勢いがあるからである。 文/松本英雄、写真/日産
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