コスト度外視? 懐かしの贅沢エンジン搭載車を振り返る
近年の自動車はコストを抑えるため、各種部品を共通化するのが一般的となっています。心臓部とも言えるエンジンも同様で、ミニバンとスポーツカーが同型式のエンジンを搭載しているという例も珍しくありません。しかし、車種専用のエンジンを搭載するという贅沢なモデルも少なからず存在します。そんな贅沢なモデルのなかから、専用エンジンを1世代だけ搭載した「これっきり」のモデルを紹介しましょう。
所有してたら確実に「自動車税」貧乏! 古き良き大排気量「贅沢エンジン」搭載車5選
レクサスLFA 1LR-GUE
レクサスLFAは2010年末から2012年末までの約2年間で、500台のみ限定生産され日本車の歴史に名を残したスペシャルなモデルです。僅か500台のために専用で設計されたのが、1LR-GUEというエンジン。 ヤマハとトヨタの共同開発で誕生したこの4.8L V10ユニットは、560psというNAエンジンとしては世界トップクラスの性能を誇りますが、注目すべきは採用された各種メカニズムです。
オイルの潤滑方式に国産車としては珍しいドライサンプ方式を採用し、エンジンの低重心化と高速旋回時のオイル供給の安定化を実現。そしてドライバーのアクセル操作に対してリニアな反応を求め、シングルスロットルが一般的となっている時代に各気筒独立した10連スロットルを採用しました。 組み付けは一基につきひとりのエキスパートが手組みをしています。そのほかにもこのエンジンはクルマ好きが聞けば「お金がかかっている」とすぐにわかるメカニズムが各所に採用されています。
ホンダ・インテグラタイプR B18C
高回転型エンジンと聞けばホンダを思い出す人も多いはず。ホンダの可変バルブタイミング機構である「VTEC」を採用したスポーツエンジンは名機と呼ばれるユニットが多いですが、そのなかでも1995年に登場した初代インテグラタイプRに搭載するB18Cは、とくに手間がかかっています。 B18Cは1.8Lという排気量ながら200psを発生し、リッターあたり111psというNAエンジンとしては世界最高峰の性能を実現。8000rpmで最高出力を発生するという、市販車用エンジンとしては超高回転型ユニットでした。 この高性能を実現するために、ホンダはピストンやインテークマニホールドをはじめ約60点もの専用パーツを新規開発。そして初期型である通称「96スペック」ではポート研磨を手作業で行っていたほどでした(のちに機械化)。このような手間とコストをかけたエンジンを搭載したモデルが、新車価格約230万円だったのは超お買い得と言えるでしょう。
日産スカイラインGTS-R RB20DET-R
1987年に日産がグループAのホモロゲ―ションを取得するため、800台限定で販売したのが専用エンジンを搭載した「GTS-R」です。グループAでのホモロゲ―ション取得のために作られたスカイラインと聞くと、R32型スカイラインGT-Rのイメージが強いと思われますが、GTS-RはR32型の先代モデルであるR31型に設定されました。 等長エキゾーストマニホールドやギャレットの大型タービン、大容量インタークーラーなどの専用パーツが与えられたエンジンは、当時の国産車トップクラスの210psを発生。このエンジンをベースにグループAレース仕様ではさらなるチューニングが施されていました。 しかし、レースでは当時最強を誇ったフォード・シエラに惨敗を喫します。このときの屈辱が、のちのグループA GT-R伝説へと繋がっていったのは言うまでもないでしょう。
トヨタ・センチュリー 1GZ-FE
専用エンジンが搭載されていたのは、何もスポーツモデルだけではありません。日本が誇るショーファードリブンであるセンチュリーにも専用エンジンが用意されていました。1997年に登場した2代目センチュリーには、1GZ-FEと呼ばれる5L V12の専用エンジンを搭載しています。 2021年現在、日本の乗用車としては唯一のV12エンジンであることにも驚かされます。ですが、スーパーカーなどに搭載されたV12とは異なり、センチュリーらしいメカニズムが採用されているのも興味深いポイントです。
まず6気筒ごとの片バンクずつで独立したエンジン制御とし、どちらかのバンクにトラブルが生じても片方のバンクで走行可能としました。そして燃料ポンプを2重系統とし、エンジン始動ごとにポンプを切り替えて耐用年数を延ばすとともに、どちらかのポンプに異常が発生しても通常時と同じように走行できるようにしています。このように「何があっても無事に要人を送り届ける」というセンチュリーらしい工夫がなされたV12ユニットなのです。
また、2003年には圧縮天然ガスCNGを燃料とした1GZ-FNEもラインアップに登場。天然ガス仕様のV12エンジンは、世界的に見ても稀な存在でしょう。
マツダRX-8 13B-MSP
今でこそラインアップから消えてしまいましたが、かつてマツダは、スポーツカーはもちろんセダンやバスにまでロータリーエンジンを搭載していました。しかし時代とともに採用車種は減少、2012年のRX-8を最後にラインアップから消えてしまいました。そのRX-8に搭載された13B-MSPは、過去に販売されたロータリーエンジンとは異なり、RX-8専用エンジンという形となりました。 事実上の先代モデルとなるRX-7に搭載されていた13B-REWがターボエンジンだったのに対し、13B-MSPはNAエンジンであるため、単純なNAバージョンと思われてしまうかもしれません。しかし、市販車として初めてサイド排気ポートを採用し、吸気ポートも従来比30%拡大し吸気抵抗を大幅に低減。その他各種パーツの軽量化などを行い、新世代エンジンとしての進化を遂げています。 13B-MSPはNAであるため、スペックこそ先代エンジンとなる13B-REWに比べて劣ります。しかし、NAロータリーならではの突き抜けるような回したくなる魅力的な回転フィーリングを持っているのです。
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