レクサスは2019年7月、中米コスタリカで「Lexus Milestones」と題した、ジャーナリスト向けのイベントを開いた。初代「LS」をはじめ、歴代の記念碑(マイルストーン)的なモデルなどとともに、最新の「RX」や「LX」などが試乗に供された。
レクサスが「マイルストーン」という言葉を使ったのは、2019年2月、1989年のデビューいらい累計販売台数1000万台超えを達成したときだった。マイルストーンには“歴史上の重要事件”という意味もある。レクサス・ブランドのスタートから30年目を迎えた2019年に、この数字を達成できたのは、かなり喜ばしいことであったようだ。彼らの歴史にとって、まさに、“重要事件”だったのだ。
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試乗に供された新型RX。従来モデルに対し、前後バンパー形状などが一新された。コスタリカでおこなわれた「Lexus Milestones」は、レクサス30年のあゆみを、新・旧モデルに試乗することで、体感出来るユニークな試乗会だった。新・旧モデルの試乗といえば、私はBMWを思い出す。新型車発表のタイミングで、よく過去のモデルを運転させてくれたからだ。
新・旧モデルに乗れるメリットは、クルマづくりのコンセプトの変遷(あるいは一貫性)が理解できる点にある。とはいえ、レクサスの新・旧モデル試乗は、初体験だ。感想はというと、BMWに負けず劣らず楽しい内容だった。
レクサスが用意した新型車のなかで、とくに目立ったのは、マイナーチェンジを受けたSUVの「RX」だ。フロントグリルをはじめ、エクステリアの一部に手が入った。
新型RXは、足まわりも改良された。試乗車のRX450hは、最高出力193kW(262ps)、最大トルク335Nmを発揮する3.5リッターV型6気筒ガソリン・エンジンに、前後ふたつの電気モーター(フロント最大トルク335Nm、リア最大トルク139Nm)を組み合わせる。また、ボディと足まわりの剛性を向上させ、くわえて新構造のダンパーや新しいブレーキ制御を採用したのも大きな特徴である。これらの目的は「リニアなステアリングフィールと、思い描いたラインを正確にトレースできる高い操縦安定性を実現するため」である、とレクサスはうたう。
コスタリカ北部、ニカラグアとの国境ちかくに位置するパパガヨ半島を再開発したリベリアというリゾート地が、試乗の中心だった。同国は原則的に外国人の運転を禁止しているそうであるが、地元の有力レクサス・ディーラーの熱心な働きかけで、一帯だけ運転が許されたのだ。
首都のサンホゼのように物流が激しくないせいもあるだろう。舗装状態はよく、道幅も広く、交通量も少なく、そして緑豊かな景色は目にやさしく、なかなかよいドライブ・ウェイだ。
新型RXの駆動方式はFWD(前輪駆動)ないしは、電子制御式4WD。メーターパネルはフルデジタル。速度計の横は、大型のインフォメーションディスプレイ。運転が楽しいSUVはたして新型RXはレクサスの説明どおり、運転の楽しみが以前より格段に向上していた。操舵したときのボディの反応がよくなっているのだ。ステアリング・ホイールを切り込む速度や舵角に応じて、ボディが向きを変えていくときの動きがスムーズで気持ちいい。
たとえばカーブは、意図どおりに正確なラインで曲がるうえ、ボディの傾きは抑えられており、適度なスポーティさを楽しむことができる。そのため、ドライバーはクルマと”対話”を楽しんでいる気分を味わえるのだ。
3列シート仕様の「RX450hL」もある(通常は2列・5人乗り)。ステアリング・ホイールは本革とウッドのコンピタイプ。調整は電動式。ボディは構造用接着材の塗布面積を増やしたという。これにより、ボディ剛性が向上したそうだ。また、スタビライザーの剛性をあげてロールを制御するとともに、ダンパーはシリンダー内部の構造を見直し、油圧では制御できない高周波振動を低減し、乗り心地を高めたという。
たしかに試乗時、ボディの動きは滑らかで、サスペンションの制御もよく、直線を走るときはフラット感がより強く感じられた。
印象深かった初代&2代目試乗車の「RX 450h」はハイブリッド・システムを搭載する。最高出力193kW(262ps)、最大トルク335Nmを発揮する3.5リッターV型6気筒ガソリン・エンジンに前後ふたつの電気モーター(フロント最大トルク335Nm、リア最大トルク139Nm)を組み合わせる。
ピュアEV走行範囲は限られているが、エンジンがまわるとトルクがたっぷりあって、加速は痛快だ。運転を楽しませるよう、開発されたというかんじだ。
インテリアは、インフォテインメント・システム用のモニターがタッチパネル化したほか、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応した。センターコンソールの形状もあらためられ、新たにスマートフォン用置き場も設置された。リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。テールゲートは電動開閉機構付き。並行して私は、レクサスが用意してくれた、1998年に販売開始された初代RXである「RX300」と、2005年に北米で販売開始された2代目RXの「RX400h」にも試乗した。
まず、高級SUVブームに先鞭をつけたとレクサスが自負するRX300には、走り出してびっくりした。室内の静粛性が驚くほど高い。乗り心地はふんわりしていて気持いいし、ステアリング・フィールもダイレクト感がある。エンジン・パワーだけは今日の基準からすると不足ぎみだけれど、よく出来ている。
初代RXは、「ハリアー」の名で日本でも販売された。「マークII クオリス」(当時)なども搭載した、3.0リッターV型6気筒エンジンのほか、2.2リッター直列4気筒エンジンも選べた。木目パネルを各所に使ったインテリア。なお、初代RXはレクサス初のFWD(前輪駆動)ベースのSUVだった。さらに印象ぶかかったのは、RX400hだ。完成度の高さがはんぱではない。
たっぷりのトルク感を持つパワーユニット(ガソリン・エンジン+モーター)と、正確なステアリングで、運転する楽しさが充分ある。さらに、乗り心地は、路面の凹凸をきれいに吸収し、速度にかかわらず終始快適だった。
2代目RXは、レクサスSUV初のハイブリッド仕様を(エンジン+モーター)を設定した。木目パネルをたっぷり使った初代のインテリアと異なり、2代目は、シルバーパーツを各所に使う。シート表皮は本革も選べた。2代目RXは、日本で販売された2代目ハリアーと同一モデル。なお、日本では姉妹車「クルーガー」も販売された。クルーガーはハリアーと異なり、3列シート仕様も設定された。もちろん最新のRX450hは歴代2モデルより速いスピードで、かつ高度なドライビングが楽しめるよう開発されている。新・旧の試乗で印象ぶかかったのは、静粛性が高く快適で、操縦性がよいという特徴が、デビュー当初から現在にいたるまで、RXのコアにあると感じさせてくれた点だ。
レクサスの試乗会で、折りに触れて開発陣が語るレクサスのクルマづくりコンセプト(いまは「すっきりと奥深い」がテーマ)が、1989年の時点できちんと確立されていることがわかった気になった。
3列シート仕様の「RX450hL」。マイナーチェンジによって、2列目シートは独立タイプ(キャプテン・シート)も選べるようになった。3列目シートは、従来に対し、よりきめ細かな位置調整が出来るようになった。初代LSから続くバランスの良さレクサスのスタート地点は、1975年、トヨタが米国第1位の輸入自動車メーカーになったことに端を発する。そのとき出た問題が、トヨタの上のトヨタがないという点だった。
成功者が乗るにはトヨタでは飽き足らないという流れのなかで、高級ブランドの必要性が説かれ、社内で「サークルF」と名づけられたプロジェクトがスタートしたのが1984年だったという。
初代RX以前は、FWD(前輪駆動)ベースのプレミアムSUVはなかった。日本市場では、マークIIといったセダンからの乗り換えも多かったという。「レクサスが出発したときは、(どこを目指すべきか)ガイドブックがなかった」と、今回のイベント資料に記されていた。手探り状態のなか、450台ものプロトタイプを作り、検討を重ね、結果、1989年にLSのデビューにこぎつけたのである。
今回、初代LSにも試乗したが、現行・歴代RXとおなじく運動性能と乗り心地、静粛性のバランスが非常に優れていた。なるほど、レクサスの魅力であるバランスの良さは、デビュー時から達成されていたことが、今回、コスタリカでの試乗でよくわかったのだった。
文・小川フミオ
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