ボルボは昔から日本人が好きな輸入車メーカーだが、ここ数年はドイツ車に迫る販売台数をマーク。2019年度の販売台数を見ると、1位メルセデス、2位VW、3位BMW、4位アウディ、5位MINIに次ぐ6位と大健闘している。
輸入車のなかでも個性派のボルボの魅力とはどこにあるのか?
輸入車販売シェア20%超と盤石 メルセデスベンツ 圧倒的な信頼と強さの理由は?
モデルごとの魅力に軽く触れつつ、売れている理由はどこにあるのかを多角的に考察していく。日本車と価格差が小さくなっているのも人気の要因!?
文:岡本幸一郎/写真:VOLVO
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輸入車の非ドイツ系の先鋒
ボルボの2019年の世界販売台数は、前年比9.8%プラスとなる70万5452台を記録した。
年間販売台数は6年連続のプラスとなり、70万台を超えたのは初めてのこと。
地域別でみると、欧州が前年比7.2%増の34万605台と回復傾向で4年連続のプラスとなり、中国が同18.7%増の15万4961台、米国が10.1%増の10万8234台で、そのほかが6.4%増の10万1652台、日本でも6.8%増の1万8583台を販売した。
なお、数字は登録台数であり、受注台数は2万台を超えていたようだ。
ボルボは廉価モデルだけでなくフラッグシップSUVのXC90も販売は堅調。モデルが新しいこともあり2年連続で前年比を上回っている
日本における純輸入車ブランドの新規登録台数で、このところずっと上位3位はドイツの3強のいずれかであり、4位がアウディ、5位がBMW MINI、6位がボルボという定位置となっている。
2019年はここ数年優勢なメルセデスベンツが6万7554台で1位となり、2位に4万6814台のBMW、3位に4万6794台のフォルクスワーゲンが僅差でつづき、4位に2万4222台のアウディ、5位に2万3813台のBMW MINIがこれまた接戦を見せ、これらドイツ勢に次いでボルボとつづく。ちなみに7位は1万3360台のジープだ。
参考までにボルボのこの10年余の新規登録台数を見ると、2008年が 7657台だったから、2019年の時点で2.4倍になっている。
ボルボの2019年の日本での販売台数は2008年に比べると2.4倍になっている。2014年に販売が落ち込んだが、その後順調に伸ばしている
低迷期からV字回復
もともと日本ではボルボのブランドイメージは高かった。それは「安全」への徹底したこだわりはもちろん、ちょっと控えめながらステイタス性もある知的な雰囲気など、ドイツのプレミアム勢とはひとあじ違った魅力に惹かれるユーザーが少なくなかったからだといえる。
1990年代半ばからは850、V70が大いに人気を博したことも思い出される。ところが2000年代に入ると事情により低迷し、2010年代前半にやや回復するも、2013~2014年にかけて再び落ち込んだ。
1990年代を代表するボルボの1台といえば850エステート。最強モデルのT-5Rは日本でも大人気となった
そして現在は、そこからまたV字回復をはたした格好になっている。2017年にはXC60、2018年にはXC40と2年連続して日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのも記憶に新しい。
日本の輸入車市場は依然としてドイツ勢が圧倒的に強いのは周知の事実だが、こうして非ドイツ系の急先鋒といえるボルボが見せる近年の好調の背景を見ていきたい。
躍動感のあるデザインの採用
ボルボのかつてのイメージと言えば写真の240シリーズに代表される武骨なまでの厳ついボクシーなデザインと頑丈さからくる安全性の高さだったが今は大きく変貌
ボルボ好調は持ち前のイメージのよさに加えて、いくつか要因が考えられる。そのひとつがデザインだ。
かつてボルボはデザイン的にはあまり評判がよろしくなかったのは否めないが、2010年頃から方針を転換し、躍動感のあるデザインを取り入れるとともに、スポーティなR-DESIGNを訴求したことなどが功を奏してイメージは大きく変わった。
躍動感のあるS60のリアビューは美しさと力強さが同居していてユーザーからも好評。ミドルクラスセダンとして人気が高い
さらには2016年に登場した2代目XC90から始まった新世代のボルボは、それまでのダイナミックさとは異質のエレガント路線に舵を切ったのも成功した。最近とりわけ評判がよいのが、流麗なラインを描くS60のリアビューだという。
外見だけなく北欧ならではの雰囲気を巧く表現したインテリアの評判も非常によい。
徹底したダウンサイジング戦略
また、世の中がダウンサイジング指向となるなか、2L以下で4気筒以下のエンジンしか作らないという方向性を明確に打ち出したのもよかった。
他のプレミアムブランドでは2Lの4気筒エンジンというのはどうしても廉価版的な印象があるのに対し、ボルボの場合はそれがない。さらには出来のよいディーゼルのラインアップを日本市場でもいちはやく充実させたことも賢明だった。
欧州メーカーが先鞭をつけたエンジン排気量のダウンサイジングは当たり前になってきたが、どのクラスも2L、4気筒以下なので安っぽさが感じられないのがいい
リーズナブルな価格も魅力的
プレミアムカーは特定のブランドを乗り継ぐユーザーが少なくないが、いっぽうでは買い替えのタイミングでブランドを問わず出来のよい車種を探して渡り歩くユーザーも少なくないというが、ボルボはそうしたユーザーにも大いに受け入れられた。
それには件のデザインのよさや安全性の高さに加えて、ドイツの競合勢にもひけをとらないブランド力を持ちながら価格がリーズナブルであることも効いたようだ。
V字回復の要因となったV40はエクステリアにも手を入れて古臭さを感じさせないが、2019年に生産中止され、残るは在庫のみの状態
SUVが販売を後押し
近年はSUVが好調だ。ボルボ全体のグローバルの最量販モデルはXC60で、2019年には前年比は9.4%増過去最高となる20万4965台を販売した。
新世代のボルボを象徴する美しい内外装デザインはもちろん、優れた快適性とこのクラスのSUVに求められる機能性を高い次元で併せ持つことが世界中のユーザーに支持されているからにほかならない。
グローバルでボルボの最量販モデルは写真のXC60。日本では625万3704~722万1297円で販売されている。この価格帯のモデルが最量販というのが凄い
日本ではボディサイズの小さいXC40のほうが売れている。2019年の世界販売台数は13万9847台だ。
こちらも高い基本性能はもとより、ブルドックをモチーフにしたという独特のスタイリングや、これまで硬いイメージの強かったボルボとしては意表を突く遊び心のあるインテリアも受けている。
日本ではXC60よりも小さいXC40が人気となっている。396万2037万円から購入できるという価格設定も絶妙で、日本車SUVにとっても手ごわい存在
日本導入当初より人気が高く受注が殺到したが、日本向け車両の生産割当の問題で納車まで時間を要する期間が長らく続いたほどだった。
新世代ボルボの皮切りとして登場したSUVのフラッグシップであるXC90も、登場から時間が経過していながらも2年連続で伸び、前年比7%増の10万729台と根強い人気を見せる。
こうしてすべてのモデルで前年を上回る販売台数を達成しているのはたいしたものだ。
新生ボルボはエクステリアデザイン同様にインテリアデザインも大きく変貌を遂げた。写真はXC40のインテリアで遊び心も感じられる
電動化に新たな活路を見出す
Dセグメントのセダン/ワゴンであるS60/V60も評価は上々だ。こちらも新世代ボルボデザインをはじめ、スポーティな走行性能とその完成度が高く評価されている。
販売戦略においては、S60については選択肢がめっきり少なくなった日本車のラージセダンからの代替え需要を狙うことを明言している。
S60は現在ボルボの日本でのラインナップで唯一のセダン。セダン受難と言われているが、日本車のセダンオーナーの乗り換えもかなりいる模様
日本向けのV60には設定ないT4をS60には設定して価格を抑え、日本車と大差ない価格帯から選べるようにしたのもその一環だ。
なお、ハッチバックのV40は、同カテゴリーのSUV人気が高いことを受けて廃止の方針とされた。
こうして高く評価されているボルボが、いま大いに力を注いでいるのが電動化だ。
この先、ボルボぐらいの規模の自動車メーカーが生き残っていくのはますます難しい時代を迎えそうだが、ボルボならきっと新しい何かを見せてくれることに違いない。
ボルボ初のフル電動パワーユニットを搭載したXC40リチャージ。ボルボは2025年までに世界販売の50%をEVにすると宣言。日本への導入は未定
【ボルボの日本でのラインナップ&価格帯】
■SUV
・XC40:396万2037~569万3519円
・XC60:625万3704~722万1297円
・XC90:813万7963~1359万円
■ワゴン
・V40:304万5370~421万6667円
・V60:514万~779万円
・V90:694万~994万円
■クロスカントリー
・V40クロスカントリー:360万5556~467万5000円
・V60クロスカントリー:564万~664万円
・V90クロスカントリー:724万~814万円
■セダン
・S60:489万~919万円
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現在、秘密裏にもう一つの40シリーズを開発中らしい。
日本にジャストサイズのコンパクトとしてのデビューが待ち遠しい。