入場者数が130万人を超え大盛況となった東京モーターショーには、軽クロスオーバーとして大人気車となったスズキハスラーの次期モデルのコンセプトカーが出展された。
スズキのWebサイトにはすでにティザーサイトが設けられており、次期ハスラーは現行モデルの時と同様に12月中に発表される見込みだ。
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現行モデルの正常進化となる次期ハスラーは楽しみだが、ひとつ注目したいのは現行ハスラーが登場から約6年が経ちながらも未だに堅調な販売台数をキープしている点である。
当記事では現行ハスラーの歩んだ軌跡を振り返りながら、現行ハスラーの販売が堅調な理由、強さの秘密を考察する。
文:永田恵一/写真:SUZUKI、平野学、池之平昌信、茂呂幸正
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現行ハスラーのおさらい&販売状況の軌跡
現行ハスラーは次期モデルと同じく2013年の東京モーターショーへの出展後、「スズキからのクリスマスプレゼント」とばかりにこの年の12月24日のクリスマスイブに発表された。
現行ハスラーはワゴンRをベースとした乗用車派生で最低地上高を上げるなどとし、深い雪道や悪路にも対応できる軽クロスオーバーというものである。月間販売目標台数は5000台と、ニッチなジャンルの軽自動車として考えれば妥当に思えるところだった。
現行ハスラーは2013年の東京モーターショーに参考出品車として出展され、その年の12月に発表、2014年1月から販売を開始し、現在まで人気をキープ
現行ハスラーは販売が本格的に始まった2014年1月から目標の5000台を超える好調なスタートを切った。さらにツートンのボディカラーに人気が集まったため当初は供給が滞り、長い納期となった。
6月あたりからは増産体制が整い、販売台数も月1万台規模に急上昇した。最終的に2014年には軽乗用車では10位となる約10万4000台を販売し、ワゴンR、スペーシア、アルトに続くスズキの軽自動車の新たな柱に躍進した。
2015年から現在までの販売状況は以下のとおりだ。
【ハスラーの販売台数】
■2014年:10万4233台(軽自動車10位)
■2015年:9万5557台(軽乗用車9位)
■2016年:8万5762台(軽乗用車9位)
■2017年:7万2600台(軽乗用車10位)
■2018年:6万5291台(軽乗用車9位)
■2019年1~10月:4万8551台(軽乗用車9位)
■累計(2014年1月~2019年10月):47万1994台
■月販平均:6743台(デビュー時の月販目標:5000台)
デビューから快進撃を続けたハスラーは、ワゴンRが2017年2月にフルモデルチェンジされるというモデル末期だったこともあり、現行ハスラーは2016年にワゴンRの販売台数を年間で約4500台上回った。
ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1665mm、ホイールベースは2425mm。現行ハスラーはウェストラインの高いデザインが特徴的
登場時の月間販売目標台数である5000台に加え、9位もしくは10位という軽乗用車販売台数ランキングにおける順位を今年10月まで見事なくらいキープしている。なお現行ハスラーは約6年間で累計約47万台が販売されている。
それでは本題となる現行ハスラーはなぜ今まで堅調に売れたのか? つまりハスラーの強さの秘密を検証するにあたり、その要因はいつ苦も考えられる。それらを個別に見ていく。
軽クロスオーバーというそれまでなかったコンセプトの新鮮さ
5ドアで雪道などにも強い軽自動車というとダイハツのテリオスキッドとスズキのKei(Keiは1代限りで絶版となったが、Keiがハスラーを開発する大きなヒントになった部分があったという)くらいしかなかった。
そこにハスラーのようないい意味で手軽なクルマが登場したのだから、注目されるのは当然だ。
本格的なオフロード走行をしたい人にとってはジムニーが魅力的だが、ライトにアウトドアを楽しみたい人にとってはハスラーのオシャレな感じは魅力的
さらにハスラーは雪国で重宝するクルマなのに加え、デリバリーが始まった2014年あたりから首都圏でも年に何度か大雪が降るようになり(中央自動車の談合坂SAで動けなくなったクルマにヤマザキパンのトラックが積み荷のパンを配布した神対応があったのも2014年の2月だ)、現行ハスラーはそんな時期に登場したのも追い風となった。
楽しげで明るい雰囲気
現行ハスラーはもともとファニーなスタイルなのに加え、ボディカラーはルーフが白か黒のツートンカラーを含めオレンジ、ブルー、お笑いコンビオードリーの春日氏のトレードマークとなっているセーターのようなピンク、レッドといった明るいものもある11色を設定。
ハスラーはツートンカラーのボディカラーが大人気。フェニックスレッドパールブラックツートーンルーフは一番人気(2018年販売データ)
インテリアもダッシュボードのパネルやパイピングの入ったシートなどオシャレで、かつボクシーなスタイルなので車内は広く、荷物もたくさん積める。
現行ハスラーを見たら、ほかのクルマで例えるならルノーカングーのように「このクルマを買ったら生活もアクティブなものに変わりそう」と好意的に感じ、現行ハスラーを買ったユーザーも多かったに違いない。
カラーパネルは車体色に対応したパッションオレンジとピュアホワイトを設定。パッションオレンジのカラーパネルは、パッションオレンジ ホワイト2トーンルーフのボディカラーにのみ設定されていたが、乗り込むだけで元気が出る感じがいい
ハードウェアの完成度も上々
ワゴンRをベースとしているだけに、現行ハスラーはクルマ自体もスズキのクルマらしく軽量なので低燃費かつ軽快によく走る。
また深い雪道や悪路に対しても最低地上高はFF/180mm、4WD/175mmと十分確保され、4WDは横滑り防止装置を利用したトラクション(駆動力)を高めるグリップコントロールと急な下り坂でスピードを一定に抑えてくれるヒルディセンドアシストを装備するなど芸が細かい。
ハスラーの軽快なフットワークは魅力的だ。4人乗車、荷物満載でもストレスフリーで気持ちよい加速感が得られる
それでいて価格はワゴンRとそう変わらないのだから、「こちらのほうが何かよさそう、面白そう」とワゴンRからハスラーに流れる人がいるのも当然だ。
さらに現行ハスラーは見た目を含めた雰囲気に加え価格も手頃なのでテレビや一般誌といった大手メディアへの露出が多かったことも、人気に拍車を掛けたように感じる。
改良も抜かりなかった
2015年にエネチャージからSエネチャージに変更。Sエネチャージも改良型で、走行性能、燃費性能の向上に大きく貢献している
売れているクルマだけにメーカーの扱いも手厚く、登場後減速エネルギーをバッテリーに溜めるエネチャージから僅かながらオルタネーター(発電機)がアシストを行うSエネチャージへ昇格。
自動ブレーキも最低レベルの30km/hで機能を停止するレーダーブレーキサポートから軽自動車では上位の性能を持つステレオカメラからの情報を基盤にするデュアルカメラブレーキサポートに進化した。
また現行ハスラーの武器となった豊富なボディカラーの入れ替えや、内外装に手を加えたタフワイルドやワンダラーなどの特別仕様車も設定し、最後まで新鮮さと高い商品力をキープした。
ハスラーは特別仕様車を適宜投入。写真は2018年11月に発売したワンダラーで、ルーフ、バンパーガーニッシュに新色のウッディブラウンを採用
まとめると元々高い商品力を持っていた現行ハスラーに追い風や好循環が続き、すべてがうまく進んだ現行ハスラーは売れるべくして売れたという簡単な結論である。
ハスラーの対抗馬としてダイハツはキャストをキャラクターの違う3タイプを用意して登場させた。キャスト自体も堅調な販売をマークしているが、ハスラーが強すぎて軽のクロスオーバー=ハスラーという一般のイメージは根強い。
次期ハスラーの登場に向けて
スズキのホームページで新型ハスラーのティザー展開されている。変わってないように見えて細部はアレコレ変更されている。MINIのような定番的な魅力がある
キープコンセプトとなる次期ハスラーはスタイルこそそう変わらないが、よりアクティブな遊び心を刺激するインテリアも相変わらず魅力的だ。
使い勝手の面では、ティザー展開されているのを見るとラゲッジを強調しているので、積載性などが大幅に向上しているのは間違いない。
現行ハスラーに比べてスクエア感が強くなったよう見える新型のサイドビュー。ホイールデザインもスタイリッシュにまとめられている
エクステリアに関しても変わっていないようで細部が変わっているため、現行のオーナーこそその違いがわかり欲しくなると思われる。
それだけに次期ハスラーは現行モデルが約47万台を売っているだけに母体保有も多いため代替需要も期待できるので、爆発的な人気にはならないとしても確実に売れるクルマとなるのは間違いないだろう。
自転車も楽々と収納できる大容量のラゲッジ。これを見ているだけで、野に山に海に繰り出したくなってくる
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