ハースのケビン・マグヌッセンは、F1イタリアGPの決勝レース中にアルピーヌのピエール・ガスリーと接触した。このインシデントにより、マグヌッセンはペナルティポイントの累積が12となったため、次戦アゼルバイジャンGPに出場することができない。このことに、マグヌッセンは憤慨しているが、それも当然と言える部分もあるかもしれない。
マグヌッセンはイタリアGPの決勝レース18周目、ふたつ目のシケインでガスリーにオーバーテイクを仕掛けた。しかし両者は接触。ガスリーは激しいクラッシュになることを避けるために、ランオフエリアに飛び出すことになった。
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この接触はマグヌッセンに非があると判断されたため、10秒のタイム加算ペナルティが科された。ただそれだけではなく、ペナルティポイント2も、マグヌッセンには付与されることになった。
このペナルティポイント2は、マグヌッセンにとっては非常に大きな意味を持っていた。これでマグヌッセンは、過去12ヵ月の間に獲得”してしまった”ペナルティポイントの累積が12となったため、次戦アゼルバイジャンGPへの出場禁止処分が下されることになったのだ。
ペナルティポイント12で出場停止というレギュレーションには、欠点と言える部分もあるが、基本的には危険運転を罰するための良い方法であると考えられている。そしてペナルティポイントは軽微な違反があった際に科されることはまずなく、接触や同様の違反を繰り返した時にのみ科されるものだ。
ただルールの適用方法は、その時々のスチュワードによって異なることがあり、前例と比べると矛盾があるのではないかと指摘されることもある。ただ今回のマグヌッセンの場合は、チームメイトのニコ・ヒュルケンベルグがイタリアGPで犯した接触と比べると、かなり軽微であったようにも思われる。
ヒュルケンベルグはイタリアGPの決勝レース序盤、ターン1でRBの角田裕毅に”スライディングタックル”をかましてしまった。オーバーテイクを仕掛けに行ったが減速し切れず、角田のマシンの右側面に、タイヤをロックさせた状態で激しく突っ込んでしまったのだ。角田のマシンのダメージは大きく、リタイアを余儀なくされた。この接触に関して、ヒュルケンベルグには全面的な非があるとして、マグヌッセンに科されたのと同じ10秒タイム加算とペナルティポイント2が罰則として与えられた。
またマグヌッセンは、マイアミGPの時にウイリアムズのローガン・サージェントに同じような形で突っ込んでしまい、この時もペナルティポイント2を科された。
これらふたつの事故は、オーバーテイクをしかけるマシンは「安全かつ完全にコントロール下にある状態でドライブすべき」というFIAの基準に違反しているだけでなく、被害者となったドライバーをリタイアさせている。
確かにガスリーとの事故でも、マグヌッセンはロックアップしていたため、最初の基準は満たしているかもしれない。しかしその一方で、ブレーキングゾーンで横に並びかけていたため、コーナー内側のスペースに飛び込む権利があったとも言える。
マグヌッセンは、レース序盤にRBのダニエル・リカルドが、アスカリシケインのブレーキング時にヒュルケンベルグをコース外に押し出したことを指摘し、自身に科されたペナルティに困惑している旨を明かした。
「全く理解できないね。完全に混乱しているよ。混乱全開だ」
「僕とガスリーは、ターン4で激しいレースを繰り広げた。その前に軽く接触し、ふたりともコーナーを曲がれずはみ出し、コースに戻った。どちらのマシンにもダメージはなく、レースへの影響もなかった。にも関わらず、僕は10秒のペナルティを受けた」
そうマグヌッセンは語った。
「しかし1周目、リカルドはニコを時速300kmで芝生に追い出し、ニコのレースを完全に台無しにした。ニコのマシンには、大きな影響をダメージを与えたんだ。でも、彼が受けたペナルティは5秒だ。その理論は一体どこにある? まったく理解できないよ」
当事者のひとりであるガスリーも、今回の件でマグヌッセンがペナルティを科されるのは厳しすぎると感じていると語った。
「正直言って、今回の接触は大したことはなかった」
「誰かが、彼に10秒のペナルティが科されたと僕に言った。彼ちょっと驚いたね。彼はオーバーテイクを仕掛けてきたけど、ホイール同士が接触しただけだ。タイムを失うこともなかった。だからちょっと驚いたよ」
「なんとかして、ペナルティが取り消されることを願っている。間違いなく不公平なことだよ。僕にできることがあれば、喜んでそうするよ。何ができるか考えてみる。あの事故を考えると、とても不公平だと感じるんだ」
ペナルティポイントの累積が12となったドライバーが出場停止を逃れることができる規定は存在しない。一貫性をもたせるためにも、そういう”抜け穴”のような規定があってはならないと思う。全てのドライバーは、ペナルティポイントの累積で出場停止になるリスクを負うべきだ。
しかし今回のような小さな事故で、マグヌッセンがアゼルバイジャンGPに出場できないのは驚きであると言える。ごくありふれた”バトル”のように見えたからだ。
しかしスチュワードは、その接触によって生じた結果は、ペナルティの重さを考慮する要素にはならないとしている。もしマグヌッセンがぶつかる角度が僅かに異なっていれば、確かに全く違う結末になっていた可能性もある。
つまり論点は、「そのドライバーが大きなクラッシュを引き起こしたか?」ではなく、「接触した時、ドライバーはコントロールを失っていなかったか?」ということなのだ。
そこが今回の問題の核心だ。
とはいえ今回のマグヌッセンに関しては、コーナーをほぼ抜けていたし、ガスリーとしてももっとスペースを残せた可能性がある、ライン以外のグリップは低かった……などなど、主張できることはいくつもある。酌量する要素は数多くあり、それがグレーゾーンを生み出す可能性が十分にあると言えそうだ。
別のレースであれば、レーシングインシデントと判定されたかもしれない。そう考えると、マグヌッセンとしては腹立たしいことだろう。しかしアゼルバイジャンを”謹慎”し、シンガポールで復活する時には、ライセンスポイントは綺麗さっぱり0になっているはず。スッキリとした形で、後半戦に挑むことができるだろう。
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