この記事をまとめると
■新車ディーラーから紙のカタログが廃止されることが決定されている
クルマの紙カタログの廃止はアリorナシ? ディーラーの経済的負担は減るけれど「物理的なカタログ」の役目もまた大きい!
■トヨタディーラーでは紙カタログの廃止とともに紙の注文書も廃止になった
■押印が必要な書類があるので完全ペーパーレス化はまだまだ時間を要する
紙カタログの廃止にコレクターは涙
筆者はたびたび「紙のカタログ」がまもなく廃止となることをお伝えしてきたが、ついにトヨタが紙のカタログの廃止を順次進めているとの情報をキャッチした。「販売現場で聞いたところでは、今後、小規模な改良なども含めて登場する新型車については紙のカタログは用意されないとのことです。また、しばらく改良予定のない継続販売車種については、店頭での在庫がなくなったとしても、新規発注は受け付けないとのことでした」(事情通)。
「順次」としたのは、今後に登場する新型車には紙のカタログは用意されず、現状で紙のカタログが用意されている、しばらく改良予定のない継続販売車種でも店頭での在庫がなくなり次第、紙のカタログは店頭から消えることになるのである。
新車を売る側のセールスマンは、「今後はセールスマンそれぞれがもち歩くタブレット内にある、『ウェブカタログ』をお客さまにお見せしながら商談を進めることになります。我々としては物理的に存在する紙のカタログを用意して商談を行うほうが、販売促進活動を行いやすいと考えております。タブレット内のデジタルカタログは、トヨタならばメーカーウェブサイト上でも閲覧可能です。原則店頭にこないともらえない紙のカタログには『どんな内容なのか』というワクワク感とともに、新車購買意欲を刺激する役目もはたします」と語るが、いまどきの若い世代はそもそもカタログだけではなく、紙の雑誌や新聞、書籍すらペラペラとページをめくって読むことで情報収集や知識を豊かにするという習慣はまずないとされている。
事実、若い世代の新車商談では、お客からカタログを希望されることなくタブレットベースでの商品説明で事足りるとしているので、紙のカタログ廃止はペーパーレス社会という観点でも世のなかのトレンドに沿ったものであり、これ自体を筆者も非難するつもりはない。
ただ、幼いころから父親のあとについて行ってディーラーでカタログをもらうなど、いまもなお紙のカタログを収集している筆者としては、世のなかから「カタログ収集」という趣味がいよいよ成立しなくなってしまう時代がすぐそこにきていることは非常に残念に思っている。
紙カタログはなくなっても紙の注文書はまだまだ残る
我が家で新車を買うときには、父親がもらってきたカタログの装備一覧表で自分のほしい装備のところにマーカーを引き、どのグレードを購入するか楽しそうにカタログを読み込んでいた。アメリカなどの諸外国では、すでにデジタルカタログに完全移行している地域も多い。そして日本でも「新車の紙カタログ」というものが、少なくとも量販車種では「歴史のひとコマ」になろうとしている。
また今回、紙カタログの廃止とともに、紙の注文書も廃止になったとのこと。「すでにトヨタでは、電子署名が導入されており『注文書にハンコ押すからあと3万円値引きして』といった値引き交渉は成立しませんでした。ただ、端末入力で作成した注文書に電子署名した注文書はプリントアウトしてお客に渡されていましたが、今後はプリントアウトした紙ベースの注文書も存在しなくなるようです」(事情通)。
トヨタ車を購入する場合には「トヨタアカウント」をすでに取得するようになっており、これからは取得したアカウントでログインして、自宅などのパソコン上で注文書を閲覧することが可能になるとのことであった。なお、注文書の書式はいままでどおり業界団体のフォーマットに沿ったものなので、書式自体は大きく変わることはないそうである。
セールスマンなど販売する側も紙ベースでの受注管理ができず、端末の画面上で管理していくことになるとのことである。それなら新車購入時は完全ペーパーレスになるのではないかとも考えるのだが、新車の新規登録や下取り車の名義変更手続きなどをディーラーに代行してもらう委任状は紙ベースであり、そこには実印を押印する必要があるので、紙ベースの印鑑証明、さらには車庫証明も紙でのやりとりが残るということである。
現状では紙のカタログを残しているトヨタ以外のメーカーのカタログも、ページ数の少ない薄いものとなっており、これをもらっても購買意欲が高まるとは思えないものが目立っている。トヨタ以外でも紙のカタログ全廃は時間の問題といっていいだろう。
一方で、新車購入の実務面、運輸支局への新規登録手続きはオンラインを活用したワンストップサービスとなっている。しかし、それに必要な書類の一部は紙ベースのものが必要であり、それをスキャンしてデータ化している。最後まで電子化をてこずらせるのは押印が必要な書類となるだろう。印鑑証明そのものの電子データ化は可能でも、新車購入よりもはるかに多額な取り引きでも実印が重要視されているものでもあり、軽々に実印の電子データ化はできないだろう。
新車販売の世界の完全ペーパーレス化にはまだまだ時間を要することになりそうだ。
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