コスパ良好。ツアラー系の新しいカタチ
水冷並列2気筒を搭載するBMW F750/850GSを基に排気量を拡大し、前後に17インチホイールを履かせたアドベンチャースポーツが「F900XR」だ。各種電子デバイスなど豪華装備のプレミアムラインで真価に迫る!
ヤマハ トリシティ300試乗インプレッション【安定性と運動性を両立する熟成のLMW技術】
[◯] 全回転域でマナー優秀。国産車並みに扱いやすい
’20年2月から日本でも販売が開始された「BMW F900XR」。ベース/スタンダード/プレミアムラインという3種類のパッケージが用意され、今回試乗したのは電子制御サスペンション/トラクションコントロール/エンジンブレーキコントロール/ABSプロ/クルーズコントロール/アダプティブヘッドライトなどを採用した「プレミアムライン(143万9000円)」だ。なお、中間グレードの「スタンダード」は、電子制御サスペンションを導入しない代わりにローダウンサスペンションとローシートを採用。シート高は標準の825mmに対して775mmへ引き下げられる。
―― 【BMW F900XR】■全長2105 全幅860 全高1320-1420 軸距1530 シート高775-870(各mm) 車重223kg ■水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 894cc 105ps[77kW]/8500rpm 9.3kg-m[92Nm]/6500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量15.5L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●色: 赤 黄 銀 ●価格:114万8000円~
―― シェル構造のスチール製ブリッジフレームや両持ち式のアルミスイングアームなど、シャーシはF750/850GSからそのまま流用。日本では3つのパッケージを展開し、中間のスタンダードはローダウンサス&ローシートを採用。
―― シート高は825mm。足着きはそれなりだが膝の曲がりが緩く、ロングライドで疲れにくいまとめ方が好印象だ。[身長175cm/体重62kg]
まずはエンジンから。ボアを2mm拡大し、最高出力をF850GSの95psから105psにアップした水冷パラツインは、極低回転域から右手の動きに対するマナーが良い。ダイナミック/ロード/レインのどのライディングモードでもUターンのような小回りがしやすく、排気量アップの恩恵が感じられる。そしてスロットルを大きく開ければ、270度位相クランクならではのビート感とともに俊敏に加速する。894ccで105psは驚くほどのスペックではないが、体感的にはそれ以上に感じられ、不快な振動の少なさもあって、実に好印象なパワーユニットと言えるだろう。
ハンドリングもいい。電子制御サスペンションのダンピング選択はダイナミックとロードの2種類で、ホイールトラベル量は170/172mmと長めの設定ながら、どちらのモードでもピッチングは控えめだ。29.5度とかなり寝かせたキャスター角だが、ハンドリング自体は極めてナチュラルであり、切り返しも軽い。これについては逆回転クランクの効果なのか、それとも軽量な部類に入る車重のおかげなのかは判断できないが、ワインディングを楽しめる要素なのは確かだ。
―― F750/850GSの水冷パラツインを基にボアを2mm拡大して853→894ccに。270度位相&逆回転駆動のクランクや2軸バランサーなど基本設計は継続。上位仕様はクイックシフターを装備。 [写真タップで拡大]
―― φ43mm倒立式フォークとリンクレスのモノショックを組み合わせる。最上位のプレミアムラインのみ電子制御サスペンションのダイナミックESAを採用。前後ブレーキキャリパーはブレンボだ。
スクリーンはレバー操作で上下2段階に調整でき、小さめながらも防風効果は高い。ダイナミックESAは、大きなギャップを通過したあとの収束が早く、高速巡航時の乗り心地に大きく貢献している。ブレーキキャリパーは前後ともブレンボでコントロール性が高く、さらにコーナリングABSによって安全性を高めるなど、全方位に隙がない。
―― 6.5インチTFTカラー液晶のメーターはスマホとの無線接続が可能。試乗したプレミアムラインはキーレスライドやナビホルダー、クルーズコントロールなどを採用。 [写真タップで拡大]
―― [写真タップで拡大]
―― ←↑2輪車初の軽量プラスチック溶接式タンクは15.5Lを公称。シートはスタンダードのみロータイプで、ベースとプレミアムラインは標準シートを採用する。なお、全車がETC2.0車載器を標準装備。
―― 【BMW F900R】●価格:105万7000円
【BMW F900R】●価格:105万7000円
[△] シフトの重さは要改善。排気音もやや大きめだ
クラッチ操作が不要なギヤシフトアシストプロを採用するが、アップもダウンもシフト操作自体が重いのはBMWの全車に共通する。それとアイドリング時から排気音は体感的に大きめで、閑静な住宅街でのエンジン始動はどうしても気を使う。
[こんな人におすすめ] ツアラーの新しいカタチをF900XRに見た
直接のライバルとなりそうなのはトレーサー900やVFR800Xあたりか。前後17インチのアドベンチャースポーツ、特にミドルクラスにおいては、F900XRのプレミアムラインが電子デバイス面で大きくリード。コスパも非常にいいのだ。
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