使い勝手や乗り心地を考慮して改良が施された
現行モデルのマイナーチェンジであれば、比較的、改良の内容が分かりやすいものの、いざ、中古車を選ぶ際、いったいどの時期のクルマがベターであるかは、なかなかわかりにくいと思う。当時のマイナーチェンジを展開する試乗記を探すのもやっかいだ。
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そこで、自身のこれまでのマイナーチェンジモデル試乗記メモを掘り起こし、注目すべき、いや、マイナーチェンジで劇的に改良され、進化したクルマたちをピックアップしてみた。中古車を選ぶ際、そのマイナーチェンジ後のクルマをおすすめできる理由として、参考にしてほしい。
1)トヨタ・エスティマ
まずは、いまはなく、しかしいまでも人気の高いトヨタの天才タマゴ、エスティマである。新車ではもう買えないことから、中古車を探している人も多いはずだが、ここで取り上げるのは、最終となる3代目のエスティマだ。3代目は2006年に登場し、2019年にその姿を消した。
選ぶべきは、最後の(3回目)大きなマイナーチェンジが施された、2016年6月に発売されたモデルである。エスティマにとって10年目の進化であり、V6モデルが消滅。2.4リッターガソリンと2.4リッターのHVの布陣となったときだ。エクステリアデザインも大幅にリフレッシュされ、エスティマのスタイリングを一段と際立たせる2トーンカラーが用意されたのもこのとき。
今、中古車で選ぶべきHVモデルは、電気式4WDながら18.0km/Lの燃費性能を持つビッグマイナーチェンジ以降のHVモデルだ。マイナーチェンジ前のモデルだとパワステの応答性や摩擦感、段差を乗り越えたときなどにブルブル感が残る振動減衰性能、乗り心地に不満がアリだった。が、マイナーチェンジ後のモデルはパフォーマンスダンパーの追加や足まわり、EPSに及ぶ大改良の結果、特に中高速域でのステアリングの応答性、リニア感が高まり、乗り心地面でも摩擦を低減した新バルブ採用のダンパーがすっきりスムースに動き、路面を問わず俄然、快適になっていたのだ。
2.4リッターのエンジンは出足こそまったりした加速感だが、エンジンフィールは排気量なりの余裕を感じさせ、終始エンジン回転を抑えて走るため全域で静か。山道で高回転域を使うような場面でも不粋なノイズが抑えられている。操縦性は穏やかに躾けられているものの、山道やカーブでも腰高感は皆無に近く、電気式4WDシステム=E-FOURならではの安定感の高さを存分に味わえる。
実際、箱根ターンパイクで試乗した経験があるが、全高1730mmのミニバンとは思えない確かな走りを味わせてくれたものだ。もちろん、2列目席は、中寄ロングスライドが可能で、膝周り空間最大780mm(身長172cmの筆者のドライビングポジション基準)を誇るリラックスキャプテンシート仕様に限る。お薦めのHVモデルであれば、東日本大震災の直後、暗闇の東北に明かりを灯した(全国から集められたエスティマHVが)逸話もある、AC100V/1500Wコンセントの用意もある。
つまり、このビッグマイナーチェンジ以降のエスティマがねらい目で、できれば2トーンルーフを選べば、より古さを感じさせないエスティマ、愛車になると思う。
2)ホンダN-BOX
次に紹介するのは、今、日本でもっとも売れているクルマ、ホンダN-BOXの先代(初代)モデルだ。そのデビューは2011年で、2017年までが初代モデルである。そのN-BOX で選ぶべきは、2015年2月のマイナーチェンジ以降のモデルとなる。
理由はまず、2014年に兄弟車として登場したN-BOXスラッシュがいち早く採用した、後席5:5分割スライドシートが採用されたこと。当時のN-BOXの開発陣の言葉は今でも忘れないが、「N-BOXにとって悲願の後席スライド機構を実現」だった。
しかも、初期型はハイトな車高に対応し、転倒防止のために足回りが硬く、乗り心地にゴツゴツ感が認められた点も、これ以降のモデルでは改善。よりマイルドな乗り心地になっているのである。
このモデルの識別は分かりやすく、フロントデザインの刷新もポイントとなる。ここで注意したいのは、初代の最後期型を選ぶのは微妙ということ。2代目、つまり現行型との価格差が小さく、その予算があれば、現行型の初期モデルを選んだほうがいい。初代の中古車で価格、内容的に美味しいのは、2015年2月以降に生産されたN-BOXである。
マイナーチェンジとは思えない大幅改善を行ったモデルも存在!
3)ホンダ・ストリーム
ホンダ車では、なつかしい5ナンバーサイズのミニバン、わずか2代の寿命だったストリームも、中古車で選ぶべき2代目のシリーズ途中で劇的なマイナーチェンジがあった。それは、2009年6月の終わりのこと。ハイライトはスポーティーグレードとして2列シートのRSTグレードを追加したのだが、全車、足まわりを変更。
それを担当したのが、アメリカホンダ帰りの開発責任者で、ロサンゼルスの荒れに荒れた高速道路を知る男で、タイヤの動き出しで「ダンパーを動かさない」というセッティングを施した結果、じつにスムースな走り出し、スポーティーな操縦性と乗り心地の良さを両立させたのである。
ストリームファンであれば、N-BOXの初代と違い、2014年型の最後期モデルを選ぶのもいい。もちろん、実質的な後継車のジェイド(の2列シートRS限定)も視野に入れていいと思う。それほど人気がなかったため、割安で中古車を手に入れられる可能性がある。
4)ホンダ・フィット
最後もまた、ホンダ車になってしまうが、今も昔も日本の国民車的存在の先代(3代目)フィットである。記憶の残る劇的マイナーチェンジは2017年6月の終わり。綾野剛、二階堂ふみがCMに登場し、CM曲は侍ギタリスト、MIYABIのFire Birdだった。
マイナーチェンジではまず、ずんぐりとしたボディデザイン(失礼)のイメージをある程度払しょくできた前後バンパーの変更やLEDヘッドライトの採用がある。そして当時最新の先進運転支援システム=自動ブレーキ、誤発進抑制機能、車線維持支援システムなど8項目の機能を満載したホンダセンシングも用意。特筆すべきは、このクラスでは贅沢すぎるACC=アダフティブクルーズコントロールを加えたこと(渋滞追従はしない)。
インテリアでは、人気のHVモデルのブルーのあしらいを排除。全グレードともに黒基調に変更。例えばシフターもシルバーとブラックのモノトーンに(ほぼマウスに見える)。上質感にこだわったHV-Lホンダセンシンググレードでは、本革風の落ち着いたプレミアムブラウンインテリアを新設定。さらにナビはApple CarPlay、Android Autoに対応。スマホとの連携を強化させたのもこのタイミングである。
が、このマイナーチェンジ以降の先代フィットを本当にすすめたい理由はここから。とんでもなく本気な、常識的にはあり得ない大改良が施されたのである。
何しろ全車、ボディー剛性を高めるためボディーの肉厚をアップ。Aピラーまわりの整流改善、燃費向上のためのエンジンのフリクション低減(燃費性能は最高37.2km/Lに)、ダンパーの乗り心地改善のためのチューニング、EPS(電動パワーステアリング)の応答性向上、そして静粛性向上のためにダッシュボードのインシュレーターの追加など、マイチェンとは思えない改善項目が達成されている。
いやいやそれだけじゃない。今回、HVのグレードは4タイプあるのだが、上質感にこだわったHV-Lに加え、大人のスポーティーHVグレードとしてHV-Sを追加。そのHV-SはタイヤがRSと同じ185/55R16サイズのスポーツタイヤを履くとともに、エンジンマウントのダイレクトダンパーのチューニング、遮音機能付きフロントガラスの採用、フロアまわりを中心とした遮音材のメルシート(アスファルトのようなもの)の厚みアップ(標準の2mmから3mmに)、ダッシュボードのインシュレーターの増量など、静粛性に特化した改良が施されているのだから徹底している。
7速デュアルクラッチトランスミッション=DCTのギクシャク感が緩和されたのも、このマイナーチェンジにおいてであった。このマイナーチェンジで、操安性のために乗り心地は多少、犠牲にしてもいい……そんな過去のホンダの呪縛からやっと解かれた!? 熟成のマイナーチェンジ版フィットになったということだ。
いい方を変えれば、そのマイナーチェンジの前後では、別物と言えるぐらいの進化があったのである。最新のおだやかな顔つきのフィットではなく、シャープな切れ目のフィットに魅力を感じるなら、今でも満足して乗れる先代最終型の中古フィットは悪くない選択かも知れない。
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