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【新型ディフェンダー開発の舞台裏】5人の重要人物にインタビュー 前編

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【新型ディフェンダー開発の舞台裏】5人の重要人物にインタビュー 前編

開発には数千人 5人の代表

発売間近に迫った新型ディフェンダーだが、すでにこのクルマは第三者による厳しいテストによって、ランドローバー史上もっとも優れたオフローダーであることを証明している。

【画像】新ディフェンダーの故郷 スロバキア工場 全10枚

ランドローバーがこれまで築き上げてきた名声を考えれば、これは驚くべきことだ。

その高いオンロード性能によって、このクルマはこれまででもっとも優れた多用途性を誇るオフローダーの最右翼でもあり、加えて新時代の電気システムが最高のコネクティビティ機能まで実現しているのだから、まさに新型ディフェンダーは驚異的なモデルと言えるだろう。

このクルマを構想し、実際に創り出すことに成功したのは類まれな才能あるチームだった。

なかには7年間もこのプロジェクトにかかわってきたメンバーもいるが、彼らは迫りくる納期に対応すべく、数ある仕事のなかでも新型ディフェンダーの開発作業を進めて来たのだ。

パーツサプライヤーまで含めれば、数千人ものひとびとが新型ディフェンダーの開発には携わっていると言う。

今回はそんなひとびとを代表する、72年に及ぶランドローバーの歴史上、最大のヒット作のひとつになることが確実視される新型ディフェンダーの開発で主要な役割を果たした5人に話を聞くことが出来た。

ニック・ロジャース:プロダクト・エンジニアリング担当エグゼクティブ・ディレクター

新型ディフェンダーとともに モロッコでの決意

36年前、ロジャースが見習いのエンジニアとして働き始めた時、すでにランドローバー社内ではディフェンダーのモデルチェンジについて話し合いが行われていたという。

「モデルチェンジそのものがつねに議論の焦点でした」と、ロジャースは言う。

「新型ディフェンダーに関するアイデアとともに、わたしもランドローバーでキャリアを積んで来たようなものです」

実現はしなかったものの、ロジャースはこれまでふたつの新型ディスカバリーのプロジェクトに関与している。

ひとつはランドローバーがフォード傘下だった時代のものであり、ディスカバリー3のT5ラダーシャシーをベースにしていた。

もうひとつのプロジェクトでは、初代レンジローバー・スポーツに続けて新型ディフェンダーの登場が計画されていたと言う。

だが、こうしたニューモデルが成功したことに加え、(例え少数の間ではあっても)依然としてディフェンダーが高い人気を誇っていたために、このランドローバーを象徴するモデルの世代交代が後回しにされていたことが問題だったと彼は言う。

「2012年頃、いまは新型ディフェンダーの国際発表イベントを担当していますが、当時は同じエンジニアだったデビッド・スニースと話をしています」と、ロジャースは思い返す。

「そして、この状況を前に進めなければならないということで意見が一致しました」

「モロッコのアトラス山脈をドライブした時のことをよく覚えています。ディフェンダーのモデルチェンジを社内の最優先事項にして、それを実現しようとふたりで決心したのです」

初代の精神 万能のモデル

では、彼らはどうやってこれまで何度も失敗してきたプロジェクトを進めることが出来たのだろう?

ロジャースの答えはシンプルだ。

「それは、初めて1948年に誕生した初代ディフェンダーの精神を活かそうとしたからです。これまでの計画は、現行ディフェンダーを単に現代的なモデルにアップデートしようというものに留まっていました」

「今回は初代ディフェンダーを創り出したひとびとの精神を踏襲するだけでなく、その精神を現代流に解釈しようと決めたのです」

「2020年から数十年に渡って必要とされるディフェンダーとはどんなモデルであるべきかということを、 わたしの家にプロジェクトのメンバーを集めて徹底的に議論しました」

そこでは、例えばテールゲートに取り付けられたスペアホイールは新型でも引き続き採用されるべきだなどという、あらゆる事柄が議論されている。

「オフローダーとして十分なデパーチャーアングルを確保するのであれば、リアオーバーハングは短くなければなりません」と、ロジャースは言う。

「つまりリアを大胆にカットする必要があるということですが、その結果、スペアホイールの設置場所は必然的に一カ所に限定されます。これでスペアホイールの位置は決定です」

こうした議論を通じて、新型ディフェンダーには先進のコネクティビティ技術が与えられることになったとロジャースは言う。

「ランドローバーで新型ディフェンダーの開発にかかわったひとびとは、このクルマを万能のモデルにしたかったのです」

ジム・モーガン:電気システム担当チーフエンジニア

最新のコネクティビティ いつでもアップデート

新型ディフェンダーは、ジャガー・ランドローバー最新のコネクティビティ技術を備えたモデルでもあるが、その裏にはジム・モーガン率いるチームの働きがあった。

彼らはランドローバーが「Third Dimension」と呼ぶ、つねに起動された状態で外部と繋がり、いつでもアップデート可能なシステムの設計開発を担当している。

ハードウェアそのものを目にすることは出来ないが、そのメリットは計り知れない。

Third Dimensionが新型ディフェンダーの多用途性を大きく向上させるとともに、さまざまな変更にもより迅速に対応することを可能にしている。

まだ登場から3年しか経っていないEVモデル、ジャガーIペイスが搭載しているアップデート可能なシステムの数が4つに留まるところ、新型ディフェンダーではその数が16にも達しているのだ。

さらに、新型ディフェンダーの先進性はこれだけではない。

「われわれに与えられたミッションは、最新であるだけではなく最高の価値をお客様に提供することでした」と、モーガンは話す。

「スマートフォンに代表されるとおり、いまソフトウェアの定期的なアップデートは常識であり、これがすべての考え方の基本となっています」

理想的な存在 僻地でも有効

では、こうしたジャガー・ランドローバーの最新技術を与えるモデルとして、なぜ新型ディフェンダーが選ばれたのだろう?

それは、シリーズ1にまで遡ることの出来るモデルでありながら、おそらくこれからもっとも長く生産され、生産終了後も長期に渡って路上に留まり続けることで、定期的なソフトウェア更新が必要になる新型ディフェンダーこそが、新たなソフトウェア技術を与えるのに理想的な存在だと思われたからだ。

だからと言って現在あるレベル以上の機能が与えられるという訳ではない。

「すべての車両が型式認証を受けていますが、認証を受けた機能のレベルは維持されなければならないのです」と、モーガンは話す。

ほとんど誰の助けも期待出来ないような僻地での冒険に新型ディフェンダーを使用するひとびともいるが、モーガンは「電子制御が複雑さをもたらす」という批判の声には与しない。

むしろ彼はまったく逆の見方をしている。

これまで困難な状況をもたらす不具合とはたいてい機械的な故障であり、遠隔での故障診断が行えるということは、苦境にあるドライバーを助けられるようになる可能性があると言うのだ。

「最近ではメカニカルシステムの信頼性が向上して来ています」と、モーガンは話す。

「ソフトウェアであれば遠隔操作が可能であり、たいていは直ぐに効果を発揮するのです」

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