世界の名所を、クルマ好き男子がひとりで訪ね歩く旅。ちょっとマニアな視点で名所を切り取り、いつもの旅にクルマのエッセンスを加えたい人へ向けてレポート。第15回は、ランボルギーニの創設者であるフェルッチを偲ぶ旅をご紹介。
ランボルギーニファンならば、一度は訪れておきたい聖地
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ランボルギーニファンならば、サンタアガタ・ボロネーゼのランボルギーニ本社にあるムゼオ・ランボルギーニと、私設ミュージアムであるムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニの2つは欠かすことのできないスポットだ。
さらにランボルギーニに、というより創設者フェルッチオに心酔しているならば、彼の墓前に花を手向けたい人もいるだろう。敬愛する作家の文学忌に、やはり作家の墓前に花を供えるのと、心情的には同じである。
ボローニャから北に30kmほど離れた場所に、レナッツォという小さな町がある。1916年4月28日にフェルッチオ・ランボルギーニが生まれ、そして育った町だ。この町の共同墓所に、彼は眠っている。
レナッツォのメインストリートであるレナッツォ通りとアルベレッリ通りが交差するあたりに、サン・セバスチャン教会の赤茶色の塔が見える。その塔を右手にして進んで交差点を過ぎると、日本でいうところの児童公園があり、その隣に駐車場が並んでいる。
この公園と駐車場の間の細い道が、共同墓地の門に繋がっている。レンタカーで訪れたならば、こちらの無料駐車場にクルマを停めるとよいだろう。
鉄の門扉を抜けて、共同墓地の敷地に入ると、左手の方にフェルッチオが眠っている墓がある。日本人だと、墓といえば墓石が建っている姿を想像しがちだが、イタリアではLoculoと呼ばれ、壁にロッカーのようにして墓が並んでいる。たいていは、個人が矩形のひと区画に眠っている。
そんな中にあってフェルッチオの墓は、ピンクのベースに白や緑の模様が入った美しいノルウェージャンローズという大理石が壁面いっぱいに使ってあるので、すぐに気がつくだろう。中央のひときわ大きなスペースをフェルッチオの墓が占め、その両サイドにフェルッチオを囲むようにして家族が眠っている。
墓の上部にはピエタがレリーフされており、そのピエタをアーチ状に「LAMBORGHINI」の文字が配されている。
共同墓地の開門時間は、夏季は7時~19時30分、冬期は7時30分~17時まで。花束持参で訪れたい。
フェルッチオの名のついた広場
共同墓地を出て次に向かいたいのは、サン・セバスチャン教会の前にある広場だ。その名も、フェルッチオ・ランボルギーニ広場。
この広場にフェルッチオに捧げられたブロンズの記念碑が建てられている。“CONCRETEZZA e GENIALITA”と名付けられた記念碑は、2006年にチェントのためにつくられた作品だ。
ランボルギーニのエンブレムにもなっている闘牛と、フェルッチオが最初に興したトラクター、そしてミウラのフロントカウルを象徴的にコラージュした記念碑となっている。記念碑の作者は、Salvatore Amelioという1948年生まれのイタリア人だ。
もともとフェルッチオは、高性能なグラントゥーリズモを作りたいと思っており、ミウラはダラーラやスタンツァーニ、ボブ・ウォレスらが勤務時間外にはじめたプロジェクトである。当初、フェルッチオから理解を得られなかったミウラが、こうしてフェルッチオを称える記念碑に取り入れられるとは、なんとも皮肉なことである。
とはいえ、ミウラP400SVを自ら購入し、ヘッドライトのまわりをいわゆる「まつ毛」ありに改造するほどであるから、フェルッチオが完成したミウラを気に入っていたことは確かだ。
もし、フノにあるムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニを訪れたことのある人なら、この記念碑の特徴的な抽象化されたデザインに既視感を覚えるかもしれない。それというのも、サルバトーレ・アメリオの油彩画と記念碑の模型が、ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニの一角に展示されているからだ。
少年フェルッチオが見た景色
フェルッチオの生家は、レナッツォの中心地から1kmほどの町外れにある。畑の中に赤茶色の建物がポツンと建っており、フェルッチオが農家に生まれたことがこのことからも分かる。
現在は、ランボルギーニ家の血縁ではない家族が住んでいるため、自由に見学することはできないが、門扉の脇に、フェルッチオが生まれた家であることを示す看板が掲げられている。
事前に現在の家主にアポイントを取っていたので、特別に納屋や家の中を見学させてもらった。
門をくぐると、すぐ右手に納屋、左手に屋根裏も数えると3階建てとなる大きな母屋、そして正面奥にも人の住んでいる建物が見える。この最初の納屋こそが、フェルッチオの小さな工房だ。納屋の扉の上には「OFFICINA LAMBORGHINI」と、フェルッチオがここで機械いじりをしていた当時を偲ばせる文字が残されている。
2000年に現在の家主は、敷地もあわせて家と納屋を購入したという。納屋に収められているトラクターも、購入当時には敷地内に打ち捨てられており、レストアを施して現在の姿になったそうだ。
にわかにフェルッチオの生家に注目が集まるようになったのは、ランボルギーニ創業50周年となる2013年のことだ。このときに、書籍や雑誌、テレビ番組等で取材を受けることになったと、現在の家主は話してくれた。
ランボルギーニ家とは血縁関係にない現在の家主だが、まったくランボルギーニ家と繋がりがなかったわけではない。家主の父親は、かつてレナッツォの中心地で靴屋を営んでおり、フェルッチオとフェルッチオの父親の靴を作っていたそうだ。
こうした縁もあってか、自費でフェルッチオの納屋を改装した工房を維持し続けているという。
フェルッチオが使っていた部屋は、母屋の2階、中央の部屋となる。いまは使われていなかったが、窓から眺める戸外の景色は、フェルッチオが住んでいた頃とさほど変わらないであろう田園風景だった。
MUSEO FERRUCCIO LAMBORGHINI
ムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニ
住:S.P. Galliera n. 319 – 40050 Funo di Argelato (BO) – Italy
TEL:+39 051.863366 Guided tours: +39 338.6511527
URL:https://www.museolamborghini.com/it/home/
文・尾崎春雪 編集・iconic
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