この記事をまとめると
■クルマのCMは昔と比べて芸能人を起用したものが減った
「女性向け」は必要なくなった? イマドキの「女性ターゲット」小型車事情
■またかつては軽自動車に女性を起用するCMが多かったが今では幅が広がっている
■クルマのCMにおいてもジェンダーフリーの狙いがあると考えられる
かつては海外の大物スターの起用も多数
8月27日にスズキ・ワゴンRの派生モデルとなる、“ワゴンR スマイル”がデビューした。CMキャラクターは俳優の広瀬すずさん。広瀬さんは俳優の草刈正雄さんととともに、本家ワゴンRのCMキャラクターとなっていたので、今回ワゴンRからワゴンR スマイルへ“乗り換え”したことになるのだろうか? そんなストーリーがあるのかは別として、最近では、クルマのテレビCMにおいて、芸能人などが絡むものが少なくなっている。いわゆる“キャラクターCM”が減少しているように見える。
過去には、マイケル J フォックスさん(ホンダ・イングラ)、エディ マーフィさん(トヨタ・セリカ)、デニス ホッパーさん(トヨタ・セリカ)、ジョディ フォスターさん(ホンダ・シビック)、ブルース ウイリスさん(スバル・レガシィ)など、海外の大物スターがこぞってクルマのCMキャラクターを務めていた。
歴史上もっとも日本車が輝いていたころともされ、たとえ日本国内のみのオンエアであっても、世界の最先端をいっていた当時の日本車のテレビCMに出演することは、大物スターにとってもメリットは大きかったようだ。そして、この流れは海を渡り、数年前の中国で目立っていた、まさに“歴史は繰り返す”であると感じるとともに、時代の移り変わりを強く感じた。
大学3年生であった1990年春に初めてアメリカを訪れ、アメリカ本土を1カ月半ほどブラブラしたことがある。その時にどうしても、アメリカの日本車カタログが欲しかったのだが(いまはロサンゼルス近郊のディーラーまわって集めている)、英語も達者ではないので、日本からアメリカ人の好きそうな日本車のカタログ(フェアレディZやセリカ、スカイラインGT-R、クラウンなど)を調達し、アメリカのディーラーを訪れて物々交換することを思いついた。
場所はロサンゼルス市近郊サンタモニカに近いトヨタ系ディーラー。つたない英語でカタログ交換したい旨を伝えると、セールスマネージャー(店長)以下スタッフ総出で暖かく迎えてくれた。日本から持ってきた、カタログを見て大騒ぎとなり、「Zは俺がもらう」など取り合いになっていた。その時にセリカのカタログを見ていたスタッフが、「Oh! Eddie Murphy!(エディー マーフィーがいるぞ)と驚いていたのはいまも鮮明に覚えている。想定外に喜んでもらえて、スタッフみんなと記念撮影して、当時のアメリカで販売されるトヨタ車すべてのカタログと交換出来てとても嬉しかったのをいまも覚えている。
かつて軽自動車では、各メーカーが時代の先端をいく俳優(女性)などをこぞってCMに起用していた。CMにキャラクターを使うのは、そのキャラクターとCM車両のイメージを直結させることで、CMに出演している俳優(女性に)のライフスタイルなどに共感する女性が買ってくれるという効果はあるが、逆にキャラクターイメージがCM車両に強くついてしまうというデメリットもあった。かつて“軽自動車=女性のクルマ”というイメージがいま以上に強かったころの話である。いまや、新車販売のなかで軽自動車の販売比率が4割に近づいている現状を見ても多様化が進んでいるのは明らかである。
ジェンダーフリーを狙っていると考えられる
現在はというと、みなさんもご存じのとおり、ダイレクトに若い女性へのアピールを狙ったようなCMキャラクターの採用は行なわれていない。スズキがいまでもキャラクターCMが目立つが、人気のスペーシアでは芦田愛菜さんをはじめとしたファミリーを想定しているし、その派生モデルスペーシアギアではお父さん役でムロ ツヨシさんが出演している。ユーザー層の幅広いワゴンRでは前述したように草刈正雄さんと、広瀬すずさんのダブルキャストとなっていた。
つまり、キャラクターCMは残っているものの、各モデルのイメージに合わせてかなりフレキシブルなものとなっているのである。さらに男性ユーザーも多いハスラーのCMはアニメーションとなっており、ジェンダーフリーを狙っているようにも見える。登録車のソリオでは標準車とカスタム系となるBANDITで異なる内容とキャラクターのCMとなっている。今回のワゴンR スマイルのCMも、その内容は“ワゴンRの派生車種”というアピールを強く感じるので、ワゴンRのCMに出演していた広瀬すずさんをスマイルでも起用することで、派生車種のイメージを強調したかったように伝わってくる。
昔のような、ダイレクトに女性へのメッセージ性の高いキャラクターの採用を行わないようになったのは、男女平等参画社会の実現といった話もあるのだろうが、軽自動車やコンパクトカーユーザーの多様化というもののほうが大きいようだ。
いまでも軽自動車ユーザーは女性が多いが、現役子育てファミリーのオンリーワンモデルとしての需要のほか、男性ユーザーも増えており、さらには年金受給世代など、リタイヤやセミリタイヤ層のダウンサイズニーズというものも大きくなっている。つまり、性別だけではなくユーザー年齢も多岐に渡っており、ユーザー層の多様化が進んでいるのである。
かつてアメリカGM(ゼネラルモーターズ)のビュイックブランドで“アンコール”というコンパクトクロスオーバーSUVがラインアップされていた。そしてこのアンコールがCMキャラクターはいなかったが、明らかに若い女性に特化した宣伝を行っていたが、多様性を重んじるアメリカではかなり違和感のあるものであった。
ちなみに、アメリカのディーラーで店長などに販売状況を聞くことがあるのだが、その時「どんなひとがよく購入しますか」と聞くと、「そんなことは気にしていない、いろいろなひとが乗っている」とだいたい返答される。ついつい日本と同じように聞いてしまうのだが、真に多様性を重んじる国らしい返答だと、勝手にいつも感心しながら、「またやっちゃった」と後悔している。
日本も、“軽自動車=女性のクルマ”とか、登録車でもお洒落な内装色で、運転席側のサンバイザーにミラー(バニティミラー)をつけたぐらいの、男性目線での“女性仕様車”が平気で設定されていたころに比べると、自動車の世界だけ見ても多様性が重視されてきたなぁとは感じるようになってきた。ただ、これをさらに推し進めるには、まだまだ日本では社会の多様化というものが足りないように感じるので、さらに進めていくことが必要だと考える。
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みんなのコメント
日本車のCMはミュートかチャンネル変えるね(笑)
>「どんなひとがよく購入しますか」と聞くと、
>「そんなことは気にしていない、いろいろなひとが乗っている」とだいたい返答される
そりゃあ、この記者がバカにされてて、まともに応じてもらえてないだけだろうよ。
古今東西、ビジネスや商売で自分の客やターゲットを理解するのは基本中の基本。
百歩譲って、「幅広い客に売れている」はあっても、「誰が買ってるか気にしてない」なんてディーラー・マネジャーいるわけねぇ。