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欧州で続々登場する電気自動車 「EVシフト」はなぜ起きたのか

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欧州で続々登場する電気自動車 「EVシフト」はなぜ起きたのか

■EVやPHEVが多いのは欧州の燃費規制が原因

 10年ほど前、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンといった欧州メーカーは、ディーゼルエンジンが環境対策の切り札と言っていたのを思い出す。

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 確かに速度無制限のアウトバーンを疾走するには、トヨタを代表するハイブリッド車では力不足というイメージを持つ人が多かっただろう。ディーゼルは環境性能だけでなく、トルクにより生まれた走りの余裕も流行の理由だっただろう。

 しかし、2015年にフォルクスワーゲンによるディーゼル不正が発覚。排出ガスの検査を不正に回避していたことがバレた。

 ここで、一気に潮目が変わる。なんとドイツブランド勢は、一気に電動化に突き進む。日本車のようなハイブリッドを飛び越し、プラグインハイブリッド(PHEV/PHV)やEV(BEV)に積極的になったのだ。

 その背景にあるのが、欧州の燃費規制であるCAFE規制(Corporate Average Fuel Efficiency)だ。

 これは、コーポレートとあるように、個々の車両ではなく企業全体の平均で燃費を規制する。規定をクリアできないと1台ごとに罰金が科せられる。

 具体的に言えば、2021年からの新しい規制では、企業平均でCO2排出量95g/km以下が定められ、1g超過するごとに1台あたり95ユーロ(約1万2000円)の罰金となる。

 95g/kmをkm/Lに換算すると、およそ24.4km/Lになる。ちなみに、20km/Lでは116g/kmとなり、罰金は95ユーロ×21g=1995ユーロ(約26万円)にもなるのだ。

 つまり、2021年以降、欧州で販売するクルマは、相当に燃費が良くないと困ることになった。

 しかし、小さくて燃費の良いクルマならば、そう難しくはない。プリウスであれば、この規制はすでにクリアできている。フィアットやフランス車のような小型車中心のメーカーであれば、欧州車にはおなじみとなった48Vマイルドハイブリッドを利用して規制をクリアするのも不可能ではないだろう。

 だが、ドイツのメルセデス・ベンツやBMWといった大型車中心のプレミアムブランドは、そういうわけにはいかない。

 フォルクスワーゲンのゴルフでさえ、現状で規制をクリアできていないのだ。ちょっとやそっとのエンジンの改良や48Vのマイルドハイブリッド化では、とてもクリアできそうもない困難な目標なのだ。

 しかし、CAFE規制にも特例が用意されていた。それがプラグインハイブリッドに対する特例措置だ。これは簡単に言えば、EV走行がある程度できれば、大きくCO2排出量を減らしたことと同等になるのだ。

 また、ピュアEVは、もともとCO2排出量をゼロとカウントできる。つまり、プラグインハイブリッドとEVを売るほどに、通常エンジン車の燃費規制が楽になる。

 簡単に言えば、1台のEVを売ればもう1台は190g/km(約12.2km/L)の燃費性能で良い、となる。大型車中心の自動車メーカーにとっては、これは非常に助かる計算だ。

 そうした背景があることで、欧州各社はいま、こぞってプラグインハイブリッドとEVをリリースすることになったのだ。

■いま、ヨーロッパではどんなEVが売れているのか

 2020年の欧州市場では、プラグインハイブリッドやEVが数多く販売されている。そして2020年3月の欧州27カ国での乗用車販売は、電動車のシェアが全体の17.4%にも及んだ。これはもちろん過去最大の数字だ。

 そこで、そのベストセラー5を紹介しよう。

●1位 テスラ「モデル3」(1万5443台)

アメリカのEVメーカーであるテスラが、2016年に発表、2018年より本格生産を開始した4ドアセダンだ。

 テスラのラインナップではもっとも小さく、もっとも安価ではあるが、それでもCセグメント相当のサイズで、価格は約4万4000ユーロ(約528万円)から6万6000ユーロ(792万円)、航続距離409kmから560km(WLTCモード)となっている。

 スタンダードが後輪駆動で、ハイパフォーマンスモデルが4WDかつ大容量のバッテリーを搭載する。EVというだけでなく、インターフェイス系が斬新なところが特徴だ。日本でも2019年より発売が開始されている。

●2位 ルノー「ZOE」(4298台)

 ルノーが発売するコンパクトEVがZOEだ。2012年に欧州での発売が開始され、2019年に第二世代へとフルモデルチェンジしている。

 52kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は最大395km(WLTCモード)。価格は2万3900ユーロ(約287万円)から3万1500ユーロ(約380万円)。Bセグメントに相当し、ヤリスやアクアと同じようなサイズ感。街乗りEVというクルマだ。

●3位 VW「eゴルフ」(3434台)

 日本で現行型となる第7世代のゴルフをベースにしたEVがeゴルフだ。

 2017年に登場し、日本での発売もおこなわれていた。航続距離231km(WLTCモード)、欧州での価格は約3万4000ユーロ(約408万円)。ただし近く、新型の「ID.3」に世代交代する予定だ。

●4位 アウディ「eトロン」(3373台)

 2018年に発表されたアウディ初のEVがe-tronだ。

 SUVで2基のモーターを備えたクワトロ(4WD)であるのが特徴だ。航続距離は365kmから436km(WLTC)で、価格は、約7万ユーロ(約840万円)から8万4000ユーロ(約1010万円)。すでにクーペ風のルーフを備えた「e-tronスポーツバック」も追加されている。

 e-tronだけでなく、e-tronスポーツバックの日本導入もアナウンスされている。

●5位 日産「リーフ」(2800台)

 日本では2010年から発売が開始された日産のEVが「リーフ」だ。日本ではEVといえばリーフというほど、すでに多くの人に親しまれている。

 2017年にはフルモデルチェンジして第2世代へと進化している。航続距離は、最大385km(WLTP)。欧州での価格は、3万5400ユーロ(約425万円)から4万5000ユーロ(540万円)となる。

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みんなのコメント

7件
  • EV化は始まったばかりで周辺の環境がまだまだ未整備です。
    特に充電やバッテリーの技術はこれからでしょう。

    かといってEVなりFCVなりの改革を行っていかなければ現状のまま何も変わりません。
  • そもそもクルマも工業製品なんだから、効率を求めて電気を動力源にするのは必然的なこと。内燃機関だと熱効率が30だとかよくて40ってところで、電気エネルギーはほとんど運動エネルギーに変換できる。クルマ単体で見ると効率は格段に上がってるけど、発電所からクルマに届くまでにどれぐらいロスがあるかとか、電気自動車がガソリン車よりほぼ確実に重くなること、リチウムイオンバッテリーがリサイクルできないことなどを考えると、本当にエコなのかと言われても、意外とそうでもなかったりする。リーフですら2t近くあるしiペースも3t近くあるらしいし、そんなクルマが本当にエコなのかね?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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