クーペ受難の時期を象徴する六代目シルビア
前編では、ロケットバニーのBOSSキットを装着したS14型シルビアについて、それを再現した1/24スケール・プラモデルの制作を中心にお読みいただいた。ここでは、その実車であるS14シルビアおよびプリマス・クーダについて述べておこう。S14型は、日産のスペシャリティカー、シルビアの六代目にあたるモデルだ。
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【画像53枚】BOSSフルキット装着のシルビア、その制作工程を見る!
美しいボディが好評を呼び、良好なセールスを記録したS13型シルビアがモデルチェンジを行って、1993年10月に発売されたのが、S14型シルビアである。プラットフォームは先代の流用であり、FRレイアウトはもちろん前ストラット/後マルチリンクのサスペンションなども変更はないが、ボディサイズは拡大されて3ナンバーサイズとなっていた。丸みの強く豊かな面のボディラインについては、日産は「流麗なホリゾンタルストリームシェイプ」と説明していたが、スペシャリティカーらしい華やかさには欠けるものだった。 グレード構成も先代を継承し、ベーシックなJ’sとその装備を充実させたQ's、そしてトップモデルのK'sの3種が基本で、J's以外にはType Sが設定され、合計5種。エンジンはJ’s、Q‘sにツインカム16バルブのSR20DE(160ps)、K‘sにはそのインタークーラー付きターボ仕様であるSR20DET(220ps)を搭載、これらもまた先代から引き継いだものであったが、細部の改良によりいずれも最高出力が向上している。
発売から半年も経たぬ1994年2月には、特別仕様車のQ‘sエアロスポーツを発売。フロントにはエアロフォルムバンパーとスポーツグリル、リアにはナヴァーンのリアスポイラーを装備したモデルで、足周りもビスカスLSDや16インチ・アルミホイール、スポーツチューンドサスペンションなどで固められていた。
その1年すこし後、1995年5月には一部改良を実施。フロントグリルのデザインを変更したほか、ボディカラーに新色3種を設定、運転席のSRSエアバッグが全車標準装備化されるなどしている。これに併せ、K‘sとQ’sにはエアロシリーズを追加。これはエアロフォルムバンパーやナヴァーン製リアスポイラーなどを装備したものだ。Q‘sは装備の充実化が行われたとともに、Q’sクラブセレクション(エアロフォルムバンパーや15インチアルミロードホイールなどを装着)が加えられている。 大幅なマイナーチェンジを行い後期型に移行したのは、1996年6月のこと。フロントのデザインを大きく変更、薄型プロジェクターランプと、スポイラー風処理のエアロバンパーを装着し、精悍なイメージへと一気に変身。このほか車内外の細部デザイン変更が行われ、SR20DET搭載車には、マフラーチューニングによるサウンド改良やディスクブレーキ容量拡大などがなされた。半年ほどのちの1997年1月には、安全装備を充実させたSEシリーズを追加している。デュアルエアバッグやABSを装備したモデルで、K‘sエアロSEなど合計4種。 1997年10月には、本気のチューンアップを施したハイパフォーマンスモデル、オーテックバージョンK‘s MF-Tを追加した(発売はオーテックジャパンから)。IHI製の専用ターボチャージャーやフジツボ技研のエキゾーストシステムを装着、さらにインタークーラーの大型化などによって最高出力は250psを発揮。エアインテークを大型化し円形のターンシグナルランプを具えた専用フロントバンパー、リアスポイラーなども特徴で、16インチのアルミやスポーツサス、ABSなども装着している。 翌1998年には、1月早々にQ‘s SEダイヤセレクションIIを追加。SEダイヤセレクションをベースに、UVカット断熱グリーンガラスや特別シート地、ホワイトメーターなどが奢られていた。続いて5月にはQ‘sエアロSEリミテッドも登場。エアロSEをベースに、スポーツグリルやMOMO製ステアリング、リアビスカスLSD、16インチアルミ、スポーツサスなどが装備されていた。そして1999年1月にモデルチェンジ、最後のシルビアであるS15型へと生まれ変わっている。クーペモデルの需要減ということもあり、S14型の販売は低調なまま終わった。 フロントマスクのモチーフとなったプリマス・クーダとは?
BOSSキットのモチーフとなったプリマス・クーダとは、プリマス・バラクーダの特にスポーティなモデルを指す。プリマスはクライスラーの中で最も廉価なモデルを手掛けるブランドであったが、コンパクトなファミリーカーであるプリマス・バリアントをベースに、スポーティなファストバック・クーペとして1964年型でデビューしたのがバラクーダだ。キャビン後半を大きなグラスエリアとしたボディが特徴のバラクーダは、成り立ちの似たフォード・マスタングよりわずかに早く市場へと投入されている。
バラクーダは1967年型でモデルチェンジして二代目へ進化、さらに1970年型で三代目となったのだが、ここでバリアントからは離れ、同年登場の新規車種ダッジ・チャレンジャーの兄弟車に転身。ブランドの性格づけを反映したものか、チャレンジャーよりホイールベースが2インチ(50.8mm)短くされていた。クーダと呼ばれるモデルは383-cid(6.3L)や440-cid(7.2L)のV8エンジンを搭載。なお、バラクーダ/クーダは1974年型を最後に消滅している。
ロケットバニー・ブランドを手掛けるTRA京都がクーダをモチーフに選んだ理由は定かでないが、バラクーダ/クーダのデザインは当時の日本車にも影響を与えていたためか、そのフロントマスクはS14型シルビアによく似合っている。バラクーダ/クーダは1971年型のみ丸目4灯ライトを採用しているが、BOSSのモチーフとなったのは1970年型のようだ。ただし、バラクーダ/クーダのフロントは中央に鼻筋が高く通っており、顔つきをそのまま当てはめたものではない。余談だが、1971年型のフロントは2代目マークII GSSに、1972-1974年型のグリルは同じく2代目マークII後期型のそれによく似ている……と言うよりは、マークIIが影響を受けたものであろう。
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