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’80s国産名車・ヤマハSR400/500(Fドラムブレーキモデル)完調メンテ【識者インタビュー:一度ハマると抜け出せません】

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’80s国産名車・ヤマハSR400/500(Fドラムブレーキモデル)完調メンテ【識者インタビュー:一度ハマると抜け出せません】



’80s国産名車「ヤマハ SR400/500」再見【43年の歴史を誇る伝統のビッグシングル】

今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる。本記事では43年の歴史を誇る伝統のビッグシングル・ヤマハSR400/500(フロントドラムブレーキモデル)について、AAA(スリーエー)・田島直行氏のインタビューをお届けする。

●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:AAA

―― 【AAA 田島直行氏】’83年生まれの田島氏は、26歳のときにAAAに入社。それ以前に整備士の経験はなかったものの、10代の頃からバイクいじりは大好きで、過去に所有したBW’S50/ドリーム50/XR250/R1-Z/CB-1などのメンテナンスとカスタムは、基本的に自らの手で行っていた。現在の愛車は’06年型SR400。

カスタムは楽しいが、まずは完調のノーマルありき

AAAのSRと言えば、当記事下欄で紹介するようなカスタム車を思い浮かべる人が多いかもしれない。とはいえ、同店がもっとも大切にしているのは”メンテナンス”。その姿勢は、創始者の故・佐藤剛氏が陣頭指揮を執っていた時代から変わっていない。

「雑誌やWEBに掲載されるウチのSRはハデめの車両が多いですが、AAAのスタンスは、昔からまず”完調のノーマル”ありき。だから、これからSRを買おうという人がいたら、ノーマルか、できるだけノーマルに近い車両をオススメしています。逆にいきなりカスタム車を購入すると、SRの面白さが理解できないかもしれないし、作業者の意図がわからないカスタム車の整備は、ノーマルより手間がかかるんですよ」

現在のAAAは車両販売を行なっていないため、同店に新規で持ち込まれるSRは他のショップや個人売買で購入した車両になる。そういった車両でよくあるトラブルが、キャブレターの不調だ。

「足まわりや電装系に問題を抱えている車両も多いですが、やっぱりトラブルの定番はキャブレターでしょう。オーバーホール済みという個体でも、パイロット系が詰まっていたり、ダイヤフラムが劣化していたりすることが多いです」

エンジンに関しては丈夫という定評があるSRだが、同店の入庫車の中には、ロッカーアームとカム山、ピストンとシリンダースリーブ内壁にキズが付いている車両も少なくないと言う。

「エンジン内にダメージが発生する一番の原因は、オイル管理の悪さだと思いますが、長期放置による油膜切れとサビの発生もキズに結びつく要素です。ちなみに、ウチで長期放置車を久々に動かす時は、タペットカバーを開けて、ロッカーアームとカム山に、プラグホールからピストン外周とスリーブに、オイル差しを使って油分を与えて、そのうえで数十回以上の空キックを行いますが、致命的なサビが発生している場合は、分解整備が必要になります」

前述した言葉と矛盾するようだが、取材時の同店に入庫していたSRは、カスタムが行われている車両がほとんどで、田島さんも愛車の’06年型ではさまざまなカスタムを行なっている。

「やっぱりカスタムは楽しいですからね。構造がシンプルなSRは、カスタムの効果が非常にわかりやすいので、1ヶ所をいじると他の部分もいじりたくなる。だから一度ハマると、なかなか抜け出せません(笑)。もっとも僕のほうから交換を推奨しているのは、ノーマルの性能が最高とは言い難いリヤショックくらいですが。ウチのお客さんの場合は、吸排気系/ライディングポジション関連部品/ブレーキなどから手を入れるケースが多いですね。でもそれ以前の話として、今の時点でフロントドラムブレーキの’85~’00年型を手に入れたら、まずは本来の調子を取り戻す点検整備から始めることになると思いますよ」

メンテナンスコスト[AAAの場合]

エンジン腰上オーバーホール:15~20万円(税抜、以下同)
エンジンフルオーバーホール:20~30万円
タペットクリアランス&カムチェーンテンショナー調整:1万3000円~
ステムベアリング交換/調整:2万8000円~
前後ホイールベアリング交換&ハブクラッチグリスアップ:3万円~


上記の価格(作業工賃+部品代)はあくまでも目安で、実際のコストは車両の状況によって異なる。なおエンジン腰上/フルオーバーホールに関しては、純正部品のみを用いて行うケースは稀で、ワイセコやボスナーのピストン/オフセットクランクを使用することが一般的になっているそうだ。

SRの可能性を示す2台のフルカスタム

―― スパルタンなカフェーレーサーとして、大幅刷新を受けたAAAのデモ車。前後17インチホイールはXJR400、φ41mm正立フォークはRS250がベースで、FRPタンクとチタンマフラーは同店のオリジナル。軽量クランクを投入したエンジンは高回転&高圧縮仕様の400ccで、キャブレターはFCRφ39mmを選択。

―― ’13年型ベースのフルカスタム車。φ95mmピストンとビレットシリンダー、オフセットクランクを導入したエンジンの排気量は595ccで、インジェクションマップはサブコンのラピッドバイクで変更。φ43mmフォークとリヤショックはナイトロンの特注品で、5本スポークの前後18インチホイールはJBマグタン。タイヤはコンチネンタル ロードアタックCR2。

〈参考〉SRより維持が難しいかつてのシングル

かつての日本では、SRとは路線が異なるシングルとして、ヤマハSRX、ホンダGB/CL/CB-SS、スズキ グースなどが販売されていた。AAAではそれらの整備依頼も多いのだが、田島氏がSR以外をお客さんに推奨することはないそうだ。

「一番の理由は、補修部品を揃えるのが難しいからです。’85~’00年型SRも欠品は増えていますが、他のシングルの部品状況はもっと厳しい。もちろん、どうしてもと言うお客さんにはできる範囲で対応していますが、完調を取り戻す整備のコストと時間は、SRより確実にかかります。だから、もし空冷単気筒に興味があっても、SRは避けたいと言うのであれば、現行車のGB350を選ぶのが得策かもしれません」

―― 【’85 YAMAHA SRX600】SR以上の運動性能を追求したロードスポーツ。スチール角パイプ製ダブルクレードルフレームにXT600から転用したOHC4バルブ単気筒を搭載。SRX400は33ps、SRX600は42psを発揮。

―― 【’01 HONDA CB400SS】’98年に発売したスクランブラーのCL400を、クラシックテイストのオンロード仕様として仕立てたモデル。RFVCヘッドを採用したOHC4バルブ単気筒はXR400Rがベースで、最高出力はSR400+2psの29ps。

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