めっきり寒くなってきましたね。0度以下の真冬日も観測されるところも増えてきて、いよいよ冬将軍が到来するのはまもなくでしょう。本格的な寒さを迎えると、クルマのトラブルが頻繁に起こります。
冬場によく起こるクルマのトラブルはどんなものがあるのでしょうか? トラブルが起きる予兆はあるのでしょうか? トラブルを防ぐための最新の対処法をモータージャーナリストの鈴木伸一さんがきっちり解説します。
【知らない できない 忘れがち!?】 初心者向け 冬の道で事故を防ぐ運転術 11選
文/鈴木伸一
写真/ベストカー編集部、Adobe Stock
■頻繁に起こるバッテリートラブルに注意!
都心でも水が凍るほど気温が下がる冬場には、思いもしないトラブルに見舞われることがままある。
特に注意したいのが「バッテリー」。近年のクルマはまるでEVがごとく、電気がなければドアのカギさえ開けられなくなるからだ。
さて、気温が下がると動植物の動きが鈍くなるように、バッテリーの極板とバッテリー液(希硫酸)の間に起きる化学反応(充・放電作用)にも大きく影響。
活性化が鈍ることで能力が低下し、電気を取り出しにくくなる。しかも、始動時に要求される電力は暖かい季節より高まるため、バッテリーターミナルの接触不良といった些細なトラブルが始動不良の原因となってくる。
このため、バッテリーが元気で問題なかったととしても、ターミナルの点検・清掃だけはキッチリ行っておきたい。念のため増し締めし、もしも腐食していたときは取り外して接触面を金属ブラシなどで磨いてからグリスを塗布しておくのだ。
また、3年以上使用したバッテリーで、セルを回す時に回りが遅かったり、一瞬引っかかるなど苦しそうに回るようなら要注意!
クルマの利用が週に1回、月に1回あるいはちょい乗り主体など、走る距離が短く充電量(エンジンが回っている時、充電も行われる)が不足ぎみの状況下ではバッテリー上がりを起こす可能性が高くなる。
条件に当てはまるようなら本格的な冬のシーズンに突入する前にバッテリー交換を検討したい。
■バッテリーが上がってしまった場合、ATは他車から電気を分けてもらうしかない
ちなみに、万が一にもバッテリーが上がってしまった場合、ATは押しがけできないため他車から電気を分けてもらうしかない。
そこで、必要となるのがバッテリー同士を接続する「ブースターケーブル」。基本的な使い方は簡単なので、入手して扱えるようにしておきたい。
また近年、弁当箱サイズで接続したままエンジンが始動でき、USB電源搭載でスマホの充電も可能等、多機能で役に立つリチウム電池採用の「携帯バッテリー」がリーズナブルな価格で手に入るようになった。
グローブボックスにも収まるコンパクトサイズで扱いも簡単。これであれば自力で切り抜けることができるため、助けを必要とするブースターケーブルより実用的。購入を検討してはどうだろう。
■冷却水とエンジンオイルも注意する必要があるが……
冬のトラブルというと「冷却水」と「エンジンオイル」も必ず話題にのぼる。確かに、平成初期くらいまでの古いクルマで、メンテナンナスを怠っていたなら注意を要する。
しかし、メンテナンスフリー化が進んだ現行車種(国産車)なら冬だからといって特に気にする必要はない。
例えば、冷却水。これには凍結を防止する効果がある「LLC(ロング・ライフ・クーラント)」が使われているが、一定期間経過すると凍結を防止できなくなるため、定期的な交換が必要となる。冷却水が凍ると容積が増えるため、冷蔵庫で凍らせたドリンク缶のようにラジエターが破裂してしまうからだ。
その交換サイクル、平成初期くらいまでは2年ごと。つまり、車検毎の交換が必須だったが、交換を怠りがち。
だからといって直ちにトラブることはないが、劣化したまま使い続けるとサビの発生など、2次的なトラブルも引き起こす。そして、ある日突然、限界を超えて水漏れや凍結といったトラブルを引き起こすことになるのだ。
一方、近年の国産車には初回7年または16万km(初回以降4年または8万km)と長寿命で、防錆効果も大幅にアップさせた「スーパーLLC」と呼ばれる超寿命LLCが新車時から工場充填されている。
このため、既定量入っているかどうかを確認する必要はあるものの、水漏れなどの不具合が生じないかぎり、2回目の車検までほぼ手つかずで走れる。それ以降はメンテが必要となってくるが、それ以前なら冬だからといって特に注意することはない。
ただし、「LLC」の凍結防止温度は水との混合比率(30~60%の範囲で薄めて使用)で変化するため、水のみを補充して薄まっていると凍る可能性がでてくるため、もしも補充する必要が生じたときは注意!
特に「スーパーLLC」を希釈する水は「純水」の使用が原則で、異物が混入すると性能が低下し寿命も縮まるので要注意。補充するときは専用のLLC補充液の利用が大原則だ。
■最近エンジンオイルなら冬場でも特に気にすることはない
さて、エンジンオイルにしても、今と昔では性能に雲泥の差がある。
エンジンオイルは熱が加わると「粘度」が低下するため、どれだけの温度変化に耐えうるかが示されている。
その表示がSAE 規格の「5W−40」といった粘度分類記号で、前半のW付きの数字が小さいものほど低温でも軟らかく、後半の数字が大きいほど高温に耐えられることを示している。
昔のクルマや外車ではヒートぎみになる夏場の熱対策としてその数値が大きい固めのオイルに、冬は回転抵抗が少なくてセルを回しやすい柔らかめと使い分けることもあった。
API規格のSH級から定義されだした近年の省燃費オイルは「0W-20」など超低粘度ながら熱にも強いため、現在、主流のSN級、GF5といった省燃費オイルの指定が一般的となっている最近のクルマで指定オイルを利用している限り、特に季節を気にする必要はない。
もしも冬場にセルの回りが悪くなったとしたら、それは電気を供給するバッテリーに問題があると思って間違いない。
■冬場に多い、イラッとする窓の曇り対策
外気と内気の温度差が大きく、かつ密閉された車内に乗員の吐く息で湿気が高まると、ウィンドウが一気に曇ってしまう。
このような時、カーエアコンの除湿機能を利用すれば瞬時に解消することできる。カーエアコンは温度を下げることなく湿気だけを取除く「除湿暖房」という機能があるからで、デフロスターもしくは暖房状態でエアコンをONにすれば機能するはずだが、メンテを怠っていると正常に働かないことがある。
近年の車両のカーエアコンには空気を濾過する「エアコンフィルター」が装着されているが、ここが汚れて目詰まりすると通気の悪化から風量・効き目の低下を招いてしまう。しかも、窓ガラスがより曇りやすくなり、異臭の原因となることも。
このため、年に1回交換する必要があるが、往々に放っておかれがち。クルマを入手してから1度も交換したことがなければ、ただちにチェックしたい。
また、エアコン動作時、冷気を造り出すエバポレーターは湿った状態となるため、細菌やカビが繁殖しやすい。
これこそがエアコン使用時の悪臭の原因で、暖気に混ざるとより臭く感じる。ホコリの侵入を防ぐ「エアコンフィルター」の普及でかなり抑制されるようになったが、それだけで完全には防ぎれないのが現実。
もしも悪臭が漂うようなら、フィルター交換のついでに市販のエアコンクリーナーを利用して洗浄しておきたい。
■LEDライトは要注意! 雪道での視界の確保!
愛車のヘッドライトに省電力のLEDライトが装備されていたり、ハロゲンバルブから新車検対応に対応し、実用的な明るさをも獲得した市販のLEDバルブに組み替えている人も多いこととと思う。
もしそうなら、降雪地域にドライブする、あるいは首都圏でも雪が降り出した時は注意が必要だ。LEDライトは従来のハロゲンライトに比べてライト内に熱がこもらないため、降雪時にはレンズに付着した雪が溶けずにビッシリ覆われやすく、走行中徐々に光量が低下してくるからだ。
このため、雪道の夜間走行時は定期的に停車してヘッドライトの雪を落とす必要がある。が、しかし、状況によっては凍り付いて簡単に落とせないことも……。
そこで、 万が一の際に備えて「解氷スプレー」を車載しておくことをおすすめする。また、目的外利用なためあくまで自己責任となるが、レンズ面にドアミラーの水滴付着を防止する「ミラーコート剤(蓮効果/ロータス効果で水滴を付着させないようにするケミカル)」を塗布しておくと効果的に防止できる。
なお、都心でも水が凍るほど外気温が下がると、降雪せずともウインドガラスが凍結する。そんな状態でヘタにウォッシャー液を噴射させると、氷の膜は厚くなるだけで事態はさらに悪化するので注意!
「解氷スプレー」の利用がもっとも簡単かつ確実な対処方ゆえ、そんな事態に備える意味でも車載しておくことをおすすめする。
また、「ガラス撥水剤」を塗布しておくと凍結しにくくなるので、まだ利用していなかったなら買っておくのも手だ。
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