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移籍後初テストを笑顔で終えた佐藤琢磨「エンジニアがどんな仕事をしてくれるのか、不安半分、楽しみ半分だった」

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移籍後初テストを笑顔で終えた佐藤琢磨「エンジニアがどんな仕事をしてくれるのか、不安半分、楽しみ半分だった」

 シーズン開幕を月末に控えたNTTインディカー・シリーズは、2月14、15日の2日間フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイでプライベートテストが行われ、2022年からデイル・コイン・レーシング・ウィズ・リックウェア・レーシングに移籍する佐藤琢磨も参加した。いよいよ琢磨も本格始動だ。

 テストは2日間に分かれ、初日に参加したのはアンドレッティ・オートスポート、ペンスキー、AJ・フォイト、レイホール・レターマン・ラニガン、アロウ・マクラーレンSP、フンコス・ホリンガー、デイル・コイン・レーシング・ウィズ・HMDモータースポーツ、そしてチップ・ガナッシのケビン・マグネッセンで、8チーム17名。

インディカー開幕直前セブリングテストに8チームが参加。琢磨も移籍後初テストに好感触

 2日目はチップ・ガナッシ、エド・カーペンター、メイヤー・シャンク・レーシング、AJ・フォイト、デイル・コイン、フンコス・ホリンガーの6チーム、14台。

 レギュラードライバーのドライブはいずれか1日のみで、ルーキードライバーは両日参加。琢磨は2日目にドライブした。

 琢磨はテスト初日からサーキットに現れてチームと合流。用意された51号車のマシンでシート合わせを行ったり、新しくエンジニアとなるドン・ブリッカーとのミーティング、さらにチームメイトのルーキー、デイビット・マルーカスのテストの様子を見守った。

 4年間在籍していたレイホール・レターマン・ラニガンからの移籍だけに、新しいチームシャツ、キャップ、そしてニューカラーのマシンと見た目に新鮮なものばかり。あいにく琢磨のスーツがテストに間に合わず、今回は昨年のピエトロ・フィッティパルディのスーツを借用することになったが、パープルのカラーは鮮烈な印象を受けた。

「なんかいろいろやらなくちゃいけないから、大変~」と言いながら、琢磨は笑っていた。

 チーム移籍はもちろん初めてではないし、F1時代から幾度もチームは移籍してきたが、チームに溶け込むのは上手なドライバーだ。新しいスタッフの顔を覚え、それぞれのチームの流儀を倣う。

 昨年まではライバルのチームだったわけだが、今年はチームでは一緒に戦う仲間、クルーになる。チームが琢磨を受け入れ、琢磨がチームの一員とならねば、物事はうまく進まない。笑顔で語りかけてくる琢磨にどのクルーも笑顔で返していた。

 コースサイドにライバルの走りを見学しに行くと、そこにはかつてのチームオーナー、マイケル・アンドレッティやインディ500を4度制したレジェンド、リック・メアーズらがおり、琢磨もそこに合流。

「Taku、新チームはどう?」などと聞かれ、雑談し笑顔を見せた。




 テスト初日をドライブせずに見学出来たのは良かったと琢磨は言う。

「チームとはここまでショップでミーティングしたり、ズームで打ち合わせしたりとかいろいろして準備してきましたけど、実際にサーキットでデイルコインのやり方を1日外から見ていて勉強になりました」

「ふぅ~ん、こうやってるのか、と。それにチームメイトのデイビット(マルーカス)は速いですね。良い!(笑)。彼と彼のエンジニアのやり方とか参考になることもあるだろうし、まずはタイムが出るのは大事なことですから」

「エンジニアのドンについては、まだわからないです(笑)。彼はどちらかというとデータのエンジニアを担当してきていて、レースエンジニアに復帰するのは3年ぶりらしいですし、前に担当していたのはインディ・ライツだったらしいので……」

「ですが30年の経験があるので、それは頼りにしたいですね。僕もいろんなエンジニアとやってきたけど、まずは明日走ってみて、彼のやり方を見てみたい」と琢磨。

 チームメイトのマルーカスが初日2番手のタイムで終えたことはチームにとって吉報だったろう。ただこれはプッシュ・トゥ・パスを使用してのタイムなので、ライバルと比べてのどこまで参考となるかわからないが、タイムが出ないよりはマシだ。

 テスト二日目、朝8時からの走行開始に備えて琢磨は早くからサーキットにいた。

 マシンの準備が済むと琢磨は「うわぁ~緊張するなぁ~、お腹痛くなっちゃう」と笑いながらヘルメットを被り始めた。

 テスト初日は上位陣が51秒台後半のタイムで、全17台が1秒以内に収まった。

 琢磨はどこまでタイムを刻んで来れるのだろう。

 最初にインスタレーションラップを済ませると、一度マシンを降りて各部のチェック。再度コースインしてセブリングのコースに出ていった。テスト2日目ということもあって路面が出来上がっているのか、各車ペースも良く琢磨は早くも55秒を切ってペースを上げていた。

 ピットボックスに戻っては、エンジニアと無線で話しながら、フィーリングを伝えていく。


 琢磨がベテランらしい速さを見せていたのは、気温が上がってきた日中だった。ユーズドタイヤでコンスタントに53秒台で周回する琢磨のタイムは、同時に走行しているマシンの中で常にトップ3に入っている。モニター上では5~6番手を維持していたが、午後には52秒88までタイムを短縮していた。

 夕方からセブリングの空には雲も広がり気温も下がった。風も強い。

 テスト終了1時間前頃から、各マシン5セット使えるタイヤのうち、最後のセットを使ってタイムを出して来た。特にメイヤー・シャンクのシモン・パジェノー、エリオ・カストロネベスの2台は52秒1までタイムを縮めワンツーを奪った。

 琢磨も同様に最後のアタックに出たが、寒いコンディションでは思うようにタイムが伸びておらず、直後に赤旗もあったことから自らのタイムを更新することはなかった。




 琢磨はマシンを降りるとメカニックひとりひとりと握手を交わすと、急いで帰り支度を始めた。急ぎ空港に向かい翌日インディアナポリスでのシミュレーターテストに備えるのだという。

「今日は良かった。良いテストでした。お互いに初めてなので手探りみたいなところもあったけど、エンジニアのドンがどんな仕事をしてくれるのか、不安半分、楽しみ半分のところもあったけど、それはかなり解消されました(笑)」

「マシンに乗ってみて、なるほどなって思うところも多かったし、最後寒いコンディションになってから、セッティングをうまく合わせられなかったのは心残りでしたけど、レースのないセブリングでタイムだけを追うのも意味がないし、今日はマシンを理解して、チームのやり方を理解するのが大事でしたからね。ポジティブな1日だったと思います」と振り返る。

 朝には緊張するなぁ~と言っていた琢磨は、マシン降りてからも笑顔を絶やさなかった。多くの不安は吹き飛んで、ステアリングを握って安心出来たことも多いのだろう。何よりも終始絶えなかった笑顔が、良い1日の証拠だろう。そして日本のファンの多くが、その笑顔をまた表彰台で見られることを望んでいる。

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