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47年ぶりに生きた化石がフルモデルチェンジ! ロシア生まれのラーダ・ニーヴァが生き残っている理由

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47年ぶりに生きた化石がフルモデルチェンジ! ロシア生まれのラーダ・ニーヴァが生き残っている理由

 ベテランのクルマ好きであれば「ラーダ・ニーヴァ」(LADA NIVA)という名を、なんとなく耳にしたことがあるはずだ。ロシアの自動車メーカーであるアフトヴァズ(ロシア語表記はAftoVAZ)が生産する、小型のクロスカントリーヴィークルである。

 この1977年に誕生したニーヴァが、40年以上の月日を経て2024年に「初めて」フルモデルチェンジすることが発表されたのだ。

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 現在はルノー日産アライアンスの傘下にあるため、ラーダではルノーの最新プラットフォームが用いられるようだ。ロシア生まれの“生きた化石”と呼ばれるこのモデルの中身はどのようなものか、周辺話題を含めて探ってみよう。

文/岩尾信哉、写真/LADA、JEEP、Mercedes-Benz、LAND ROVER、SUZUKI

【画像ギャラリー】ラーダ・ニーヴァのようなモデルチェンジの少ないクルマってどれだ!?

■1977年に誕生したラーダ・ニーヴァ

ラーダ・ニーヴァの3ドアモデル。レトロな雰囲気の外観が個性的

 ラーダ・ニーヴァというモデルは、クロカン四駆好きにとっては我々がイメージするほど特殊ではないのかもしれないが、ロシアという国特有の生活様式やビジネス環境(あえて加えれば政治状況)という要素があってこそ、ここまで生き延びられたといえる。

 ラーダはロシア最大の自動車メーカーであるアフトヴァズが展開するブランドだ。

 このなかでニーヴァ(正式車名はVAZ2121)は、ロシアがまだ旧ソビエト連邦だった時代の1977年に製造が開始され、デザインを大きく変えることなく今なお作り続けられている。ちなみに、ニーヴァはロシア語で「耕作地」を意味する。

 2000年代以降にはいわゆるBRICsとしての経済発展とともに、ロシアには欧州の大手メーカーを中心に、EUや韓国、日本といった自動車メーカーが続々と進出。

 たとえばラーダとともにロシアメーカーであるGAZはVWモデルの委託生産を請け負って生産量を増加させて、国として自動車産業を活発化させてきた。他にもUAZは、こちらも超クラシックな外観を与えられたワンボックスバン「2206」や小型CCVの「ハンター」を生産する。

 2000年にはアフトヴァズは米ゼネラルモーターズ(GM)と提携して合弁会社を設立、ラーダ・ニーヴァを生産していた(2019年末に提携を解消)。

 現在搭載するエンジンがGMの設計品なのはその名残だ。その後、2014年にはルノー日産グループが経営権を取得。このため、現在では同社の他モデルのエンジンは同グループ製となっている。

 2020年1月には改良を受けたラーダ4×4をデビューさせたものの、アフトヴァズは間髪を容れずに2021年に入って“ニーヴァ”の名を復活させ、さらに“レジェンド”のサブネームを加えて、正式名称を「ニーヴァ・レジェンド」とした。

グループの中で主に東欧地域をカバーするダチアとアフトヴァズ(ラーダ・ブランドを展開)の2025年までの方針発表の中で、ラーダ・ニーヴァのフルモデルチェンジを発表した

 ラーダの最新情報としては、傘下にあるルノー日産アライアンスが2021年1月に発表した経営戦略の内容によれば、同グループとして主に東ヨーロッパ市場をカバーするダチア/ラーダ用として、FWDベースの同アライアンスのCMF-Bプラットフォームを採用する計画だ。

 CMF-Bプラットフォームといえば、2代目ジューク(日本未発売)、キックス、3代目ノート、5代目ルノークリオ(日本名ルーテシア)、2代目ルノーキャプチャーが採用している。つまり日産&ルノーの最新プラットフォームを採用し、化石から最先端のクルマに生まれ変わるということだ。

 アフトヴァズはラーダ・ブランドとして、2025年までに4種類のニューモデルを導入、前述のように2024年には初のフルモデルチェンジとなる新型のニーヴァを発表予定となっている。

■一気にモダン化したクロスオーバーヴィークル

ラーダ・ニーヴァの5ドアモデル。サイズはかなりコンパクトで、日本では5ナンバーサイズとなる

 それでは、現行ラーダ・ニーヴァがどのようなモデルなのか、スペックから見ていこう。

 コンパクトSUVというよりも個人的には小型クロスカントリーヴィークルと呼びたいニーヴァは、1977年に生産が開始されて以来、基本的な仕様を変えることなく一度もモデルチェンジしていない(車名は微妙に変わっていたりもする)、稀少な“ほったらかし”モデルというべきだろう。

 スペックを追って見ていくと、1690ccの排気量のガソリンSOHC直列4気筒エンジンをフロント縦置きとして搭載、副変速機付きの5段MTとともにフルタイム式四輪駆動機構を構成する。最高出力は61ps/5000rpm、最大トルクが129Nm/4000rpmとなる。

 ニーヴァの特徴といえるモノコック構造を採用する四角くコンパクトなボディは、全長3640(4140)×全幅1680×全高1640mm、ホイールベースが2200(2700mm)とされる(カッコ内は5ドアの数値)。

 3ドアとしてジムニーシエラ(同様に3550×1645×1730mm、ホイールベース:2250mm)から全長が長い程度の違いだから、使いやすさに問題はなさそうだ。

 いっぽう、5ドアは全長が4140mm、ホイールベースも2700mmと、コンパクトSUVのトヨタライズ&ダイハツロッキー(3995×1695×1620mm、ホイールベース:2525mm)に近いスペックとなり、どちらも日本市場ではいわゆる5ナンバー枠に収まる。

搭載されるエンジンは1690ccの直4で、最高出力は83ps、最大トルクは129Nm。トランスミッションは5MTを採用、駆動方式はフルタイム4WDのみの設定

 サスペンションについては、前が独立式のウィッシュボーン/コイルスプリング、後は固定式の5リンク式/コイルスプリングとなり、形式としてはコンベンショナルなオフロード走行に対応可能な仕様となる。

 いわゆるオフローダーとしてニーヴァを捉えると、モノコックボディの採用は異端かもしれない。ボディ強度ではフレーム構造を採るモデルには劣っても、生産性の高さやコスト面を含めて、コンパクトモデルとして妥協点を求めたといえる。

■長寿命車は軒並み生まれ変わっている

現行モデルのジープ ラングラー。丸型のヘッドライトや特徴的なスロットグリルなど、ジープ伝統のスタイルを受け継いでいる

 “ほったらかし”と“長寿命”というのはまったく意味が違うとは思うが、ラーダ・ニーヴァのようにモデルチェンジが極端に少ない長寿命の軍用車両ベースのヘビーデューティモデルを中心に見ていこう。

 なんといっても、アメリカ生まれのジープの存在感は際立っている。第二次大戦中の1942年に生産が開始されたオリジナルといえる軍用車両であるウイリスMBを祖として、1987年から現在までFCAグループのジープ・ブランドとして「ラングラー」の名で生き続けてきた。

 最近では長寿モデルとして2017年に基本構造を変えることなく11年ぶりにフルモデルチェンジを実施した。

現行モデルのメルセデス・ベンツGクラス。外観には大きな変更を施してはいないが、2018年に大幅な改良を行って、メカニズムは一新されている

 いっぽう、1979年に軍用使用を主たる目的として生まれ、多用途性を備えたメルセデス・ベンツのゲレンデヴァーゲン(独語でオフローダーの意)は、Gクラスの呼び名が1989年から使われ、2018年には40年ぶりにフルモデルチェンジ並みの大幅な改良を受けた。

 とはいえ、ボディとフレームを組み合わせた基本構造を踏襲しつつ、メカニズムを時代に即して一新している。

ランドローバー ディフェンダーも長きにわたって生産されたモデル。現在は2019年に実施したフルモデルチェンジによって、写真のような新型に切り替わっている

 こちらも英国の誇りというべきアルミ製モノコックを採用して進化したランドローバー ディフェンダー(オリジナルのネーミングは、1948年当時は単にランドローバーだった)は、2019年に初のフルモデルチェンジを実施、メカニズムを含めた大幅な変更を受けたことは記憶に新しい。

 日本車を見ると、イメージとしてニーヴァに近い存在といえるのが、ご想像の通りスズキのジムニーだ。軽自動車のCCVであるジムニーは1970年に誕生。日常のあらゆる場面で使える万能の足としての役割を担ってきた。

4代目となる現行のジムニー。サイズはラーダ・ニーヴァに近い。コンパクトサイズの本格4WDモデルは海外でもニーズが高く、国外でも人気となっている

 モデルチェンジは1981年、1998年、2018年と少なく、2018年にフルモデルチェンジした現行モデルは4代目となる。

 やや番外的ながら、運転手付きのショーファードリブンが主な使用用途であるトヨタ・センチュリーは1967年に誕生以来、1997年のモデルチェンジを経て、2018年に現行型となった。

 こうして見ていくと、モデルチェンジが少ない車種では、市場から要求される機能と役割が明確に定まっているがゆえに、姿形を大きく変える必要がなかったともいえる。生産システムの変化や、安全性能、燃費規制など技術的な要求に対応するために必要に応じて進化を遂げてきたことがわかる。

■ロシア国内市場でラーダはどれくらい売れているのか?

ロシア国内ではラーダブランドのモデルは人気が高い。最近ではトヨタのRAV4が、販売を伸ばしている(出典/AUTOSTAT)

 ロシア国内のマーケットに目を転じると、国内メーカーとしてはラーダが“一党独裁”のトップの座にある。

 2020年12月のロシア国内での販売台数を見ると、ラーダ・ニーヴァ・レジェンドは12位に位置するとはいえ、1位はラーダのコンパクトカーであるグランタ、2位も同ブランドのミドルクラスモデルのヴェスタが占める。

 これに韓国メーカーの起亜(キア)のコンパクトカーであるリオ、現代(ヒュンダイ)のコンパクトSUVのクレタ、5位に欧州勢としてフォルクスワーゲン ポロと続き、8位にトヨタRAV4などとなり、ラーダを除いていずれもロシアでの現地生産車で占められている。

 最後にニーヴァの価格を確認しておくと、ロシア国内で約50万~60万ルーブル(日本円で約85万~100万円)、ロシア国民の平均年収額の70万ルーブル(約110万円)よりも高めの設定となっている。

 ちなみに、日本の並行輸入業者では装備類を豊富に追加した状態で、諸経費など込みで300万円オーバーといったところだ。

 とはいえ、このようなクルマの価格の意味は個人の趣味と価値観、最終的には所有したいという気持ちの強さに依るところが大きい。

 加えておけば、ラーダ・ニーヴァが生き続けている理由として思い浮かぶのは、機能・デザインについてコンパクトでシンプルという商品コンセプトが、あらゆる工業製品に関して魅力的に映るケースが多いということだろう。

2020年1月に改良を受けたラーダ4×4がデビュー。その後、ニーヴァの名を復活させたうえで“レジェンド”のサブネームを加え「ニーヴァ・レジェンド」とした(写真は5ドアモデル)


■ラーダ・ニーヴァ・レジェンド 3ドア(カッコ内は5ドア仕様)
全長×全幅×全高:3640(4140)×1680×1640mm
ホイールベース:2200(2700)mm
エンジン排気量:1690cc
エンジン形式:ガソリンSOHC直列4気筒
最高出力:61ps/5000rpm
最大トルク:129Nm/4000rpm
駆動方式:フロント縦置き フルタイム4WD
トランスミッション:5速MT(副変速機付き)
サスペンション:前:独立 ウィッシュボーン式/コイルスプリング
後:固定 5リンク式/コイルスプリング
乗車定員:4(5)名
車重:1285(1425)kg
最低地上高:200mm
最高速度:142(137)km/h
0―100km/h:17.0(19.0)秒

【画像ギャラリー】ラーダ・ニーヴァのようなモデルチェンジの少ないクルマってどれだ!?

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みんなのコメント

9件
  • 名前が残っただけ
  • ビートルにミニ、最近だとディフェンダーと、長年続いたカタチを終わらせてモダンなスタイルに
    変化させてしまったが最後、これから先はモデルチェンジ地獄に突入し、やがて廃れる運命。
    今まで何十年も基本設計を変えずにやってきて、今モデルチェンジしてまたそのまま何十年ってのは
    不可能。だって結局今出るモデルは移り変わるトレンドの「今」を切り取って当てはめたに過ぎない。
    数年後には通用しないデザインになり、すぐモデルチェンジする羽目になる。というかそうしていく
    事にしたんだろう。メルセデスのGや、ジープラングラーのように、中身や外観の一部は今風のテイスト
    を入れたとしても、根本を残して立ち位置は替えずにやった方が上手くいったと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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