ロータス・カーズの本当の始まり
この小さなクルマが、ロータス・カーズ社の本当の始まりといえる。噂通りタイトなコクピットへ、身体を滑らせるように落とす。ドライバーの正面には必要なメーター類が、読みやすい位置に並んでいる。
【画像】ロータスMk VIとケータハムが受け継いだセブン エリーゼと新型エヴァイヤも 全81枚
腕はトランスミッション・トンネルと、ボディサイドの切り込まれたラインへ自然に収まる。着座位置は地面に付きそうなくらい低く、背もたれは倒れ気味。狙った通りの低重心であることを、強く匂わせる。
キーを捻り、燃料ポンプとイグニッションのスイッチをオンにし、小さなボタンを押す。クライマックス・エンジンは、フォード社製のツイン・ウェーバー・クロスフローより、威勢のいいサウンドを放って目を覚ました。
ステアリングホイールの手応えはダイレクト。ペダルやシフトレバーのストロークも不要に長くなく、同様に扱いやすい。サーキット走行に不安なところは微塵もない。
走り始めてすぐに、クラシックなロータスと親しくなれる。大きく弧を描くサイクルフェンダーが、ミニマリズムを追求したクルマであることを象徴している。すべての仕上がりが、シャシーへ安心感をもたらしている。
フロントタイヤのグリップ力は想像以上。とても直感的で、正確にフロントノーズが反応する。幅の細い4本のダンロップが踏ん張り、基本的にコーナリングはニュートラルだ。
セブンよりハンドリングは良好かも
今回ご紹介するのは、アルミニウム製ボディのロータスMk VI。驚くほど速いわけではないが、コーナーの出口でテールを外に流すだけのパワーはある。ふざけたテールスライドが似合わないにしても、ドライバーに余裕を感じさせてくれる。
特に意識した修正を加えることなく、ベストラインに戻せる。アクセルペダルを緩めると、先の細いフロント側へ重心を移せる。シャシーは鋭く操作に応え、ブレーキも想像以上に良く効く。ハイスピードでのコーナリングに、自信が湧いてくる。
ブレーキは巨大なドラムで、放熱用フィンが放射状に並んでいる。左右でバランスが崩れることもなく、確実に速度を落とせる。ストレートの終わりで思い切りペダルを蹴飛ばしても、フェードする兆候はない。
より距離の長いサーキットなら、印象は変わってくるだろう。しかし車重は420kg。ドライバーが座っても500kg前後だから、大きな違いは生まれなさそうだ。
すべての操作に余計な力は必要としない。速く走らせても思いのほか疲れない。珍しくはない部品を集めたクルマだが、その成果は遥かに上回る。
筆者はロータス・セブンが好きだ。滑らかなサーキットを走らせれば、その先代に当たるMk VIの方が、ややもするとハンドリングは良いかもしれない。認めたくはない事実だ。
鈍く光るアルミ・ボディが生々しいが、その内側には1950年代前半らしい、スペースフレームが隠れている。コーリン・チャップマン氏の仕事から想像する以上に、多くのパイプが用いられている。
やや複雑なリア・サスペンション
1952年の春から製造されたシャシーには、ピクチャーフレームと呼ばれる構造が用いられ、ラジエターはクロスブレースで支持されている。だが後期型ではロータスらしく、簡素化された。
パイプが多く用いられたといっても、スペースフレーム自体の重さは約25kg。シンプルなボディパネルのうち、サイドパネルとアンダートレイは、ねじり剛性を高めるためフレームへリベットで固定してある。
1つの部品でいくつかの役割を持たせようというチャップマンのコダワリを考えれば、リア・サスペンションの意外な構造に驚く。5本のリンクが、リアアスクルを支えている。彼のコンセプトに忠実なら、2本ほど多いといえる。
初期のMk VIには、前後方向の支持を担うラジアルロッドと、横方向を担うパナールロッド、トルクチューブが採用されていた。この5リンク式も良く機能するが、もっと簡素化できると考えたのだろう。
後期型では、アスクルを支える2本のアッパーリンクへ変更。ディファレンシャル・ギアへ固定されるAフーレムで、横方向の動きとトルクの応力に対応させた。シンプルな構造だがアスクルをしっかり支え、パワーも充分に受け止めることが可能だった。
ロータスMk VIの場合、フロントまわりとエンジン、トランスミッションなどは、状態の良いフォード車のものの流用が前提。オプションで、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)ブランドのコンポーネントを組むこともできた。
ダイレクトで遊びの少ないステアリング
このロータスMk VIには、BMCのオースチン・メトロポリタン用部品が選ばれている。さらにLSDが組まれ、ピット周辺を走らせるとロックが掛かる。だが、パワーやトラクションが限定的なため、なくても困らないだろう。
フロント・サスペンションは簡素なスプリットアスクル式と呼ばれるもので、上下動でキャンバー角が変化しやすい。しかし、軽量で可動範囲の小さいMk VIの場合は大きな問題にはならない。チャップマンの、コストパフォーマンス意識の高さが垣間見れる。
サスペンションのラジアルロッドは、シャシーレールへつながっている。垂直方向の制御は、現代的なコイルオーバー・キットに置き換えられてある。だが、基本的なメカニズムは変わらない。
ステアリングまわりは、フォード・ポピュラーという同時代のサルーン譲り。ダイレクトで遊びの少ない手応えから、その推測が難しいほど。搭載位置が練られ、ボールジョイントを最小限に抑えたことの効果だといえる。
フォード車のコンポーネントを利用した1950年代の少量生産モデルらしく、初期のMk VIのエンジンも1172ccの4気筒サイドバルブが標準。だが1500ccクラスのレースへ参戦するべく、1508ccのフォード・コンサル用エンジンも搭載できた。
このMk VIには、1097ccのコベントリー・クライマックス社製ユニットが搭載され、最高出力は96ps。オリジナルより洗練された燃料システムへ変更されている。
この続きは後編にて。
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